こんにちは!のぶやんです。
冬の日本海で雪をがんがん降らせるJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)について解説していきます。
僕の簡単なプロフィールです。
- 気象予報士
- 福岡あたりの気象のこと中心になりがち
JPCZの成因は?気象庁の解説は?
冬になると、大陸から寒気が流れ込んできて日本海では北西風がびゅーびゅー吹きます。
それに伴って筋状の雲がみられます。
その中で、朝鮮半島の付け根のあたりから筋状の雲とは別のまとまった雲域が見られることがあります。
これがJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)です。
JPCZはJapan-Sea Polar-Airmass Convergence Zoneの略になります。
低緯度帯でみられる熱帯収束帯(ITCZ)という収束帯がありますが、参考にしてそう呼ぶことにしたみたいです。
ちなみに、JPCZという言葉の生みの親は気象学者の浅井さんです。
このJPCZができるのは、大陸からの寒気が日本海に流れ込んでくるときに朝鮮半島にある白頭山付近で迂回するように二手に分かれて、日本海で合流し収束するためです。
JPCZの収束した雲域がかかると短時間でどかどか雪を降らせます。
気象研究者の荒木さんのtwitterでの画像がJPCZをイメージしやすかったのでもってきました。
ちなみに白頭山は標高が2744mあり朝鮮半島で最高峰の山で、北朝鮮と中国の国境付近にあります。
気象庁HPだとJPCZのついてはこんな感じに解説されています。
冬に日本海で、寒気の吹き出しに伴って形成される。水平スケールが1000km程度の収束帯。この収束帯に伴う帯状の雲域を、「帯状雲」と呼ぶ。強い冬型の気圧配置や上空の寒気が流れ込む時に、この収束帯付近で対流雲が組織的に発達し、本州日本海側の地域では局地的に大雪となることがある。
気象庁HPより
冬に寒気が日本にどうやってやってくるのかは別記事にまとめています。
JPCZと白頭山の関係は?
先ほど説明したとおり、JPCZができるのは、大陸からの寒気が日本海に流れ込んでくるときに朝鮮半島になる白頭山付近で迂回するように二手に分かれて、日本海で合流し収束するためです。
ということは、白頭山があることによってJPCZが発生に大きく影響しているのでしょうか?
過去の論文で面白いものがあります。
お茶の水大学気象学研究室ツイッターのつぶやきで紹介されていたのでもってきました。
このNagata et al.(1986)の論文では、架空の世界で朝鮮半島から白頭山を消して陸で埋めた実験また陸上摩擦を弱めた実験いずれでもJPCZは発生したようです。
が、しかし朝鮮半島を海に変えた実験だとJPCZは消えてしまったとのこと。
なので、もし白頭山がなくなってもJPCZの発生は抑えられなさそうだけど、朝鮮半島までなくしたらJPCZは発生しなくなったので朝鮮半島がJPCZの成因に影響を及ぼしている可能性がありそうです。
完全に架空の世界での実験での結果なので現実にはわかりませんが、興味深い結果ですよね。
JPCZの雲域とTモード・Lモードの雲域
JPCZが発生した時には、Tモード・Lモードという雲域も発生します。
JPCZの付近は一番発達した積乱雲になっていて、ここが日本海側の地域にあたれば雪をがんがん降らせるわけです。
JPCZが発生した周辺付近にTモードの雲域さらに離れた両側でLモードの雲域ができます。
2021年1月8日の日本海側を中心に大雪となったときのの衛星画像を加工して、JPCZとその周辺に発生しているTモード・Lモードの雲域を枠で囲んでみました。
TモードのTは「transverse」の略で日本語で「直交する」って意味になります。
LモードのLは「longitudinal」の略で日本語で「縦方向の」って意味になります。
大陸から吹いてくる北西季節風に直交するような雲域をTモード、北西季節風に沿った筋状の雲域をLモードと言っています。
これらの雲域の概念図をもってきました。
JPCZで雲頂高度が高い積乱雲が発生して、雲頂付近は上空の風に流されて、Tモードの雲域が形成されます。
JPCZが出現する時の天気図
JPCZが出現しているの天気図をもってきました。
先ほど紹介した事例と同じく2021年1月8日 のものです。
西高東低の冬型の天気図で縦じまが混んでいるのではなくて、若干縦じまが緩んでいます。
JPCZが発生しているとき、日本海側に気圧の谷ができます。
衛星画像と見比べてみたらわかると思いますが、天気図の気圧の谷とJPCZが大体同じ場所にあるのがわかるかと思います。
山雪・里雪とJPCZの関係
昔の人は雪が降るときには、山を中心に雪を降らせるのを山雪、里(街中)に降らせる雪を里雪といいました。
気象庁の資料から里雪とされている天気図をもってきました。
2011年1月15日の天気図です。
JPCZの天気図と同じく日本海に気圧の谷ができています。
昔よく言われていた里雪は、JPCZのことを言うことがあるんですね。
気象研究者の荒木さんも里雪になる原因としてJPCZを挙げています。
冬季日本海側の大雪メカニズム⑤:北陸地方をはじめ日本海側では山地中心の大雪となる山雪のほか,平野部でも大雪になる里雪があります.停滞性降雪バンドが形成されたり,JPCZがかかり続けたり,JPCZ上で発生した小低気圧の通過に伴って里雪になります.短時間で一気に積もるので要注意です. pic.twitter.com/Eeh1TXQRZs
— 荒木健太郎 (@arakencloud) January 12, 2017
里雪になる原因としてJPCZの他にも、降雪バンドによるものもあるみたいですね。
ちなみに山雪の天気図はこんな感じで、縦じまの等圧線が混んでいます(2011年1月17日の天気図)。
風強そうですね~。
JPCZと顕著な大雪に関する情報の関係
JPCZは短時間でどかどか雪を降らせます。このため、2019年から気象庁では顕著な大雪に関する情報を発表しています。
日本海側の地域を対象に発表されます。
短時間でめっちゃ雪が降って、このあとも続きそうよってときにこの情報が発表され、交通障害の発生が迫っていることを伝えるものです。
また、この情報が発表されたときには雪がめっちゃ降っているってことになります。
まとめ
今回の内容についてまとめました。
以上が、「JPCZとは?白頭山との関係や天気図は?気象庁の解説も」でした。
読んでいただきありがとうございました。