霜害のメカニズムを解説します

気象

こんにちは!のぶやんです。

今回は、霜害について解説していきます。

どうして霜が降りると農作物に被害がおよぶのか?

霜注意報はなぜ3~4℃で発表されることが多いのか?みていきたいと思います。

のぶやん
のぶやん

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  • 気象予報士(福岡)
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霜害のメカニズムってどんなの?

霜害とは植物体内にある水が凍結することで植物が被害を受ける現象のことをいいます。

同じメカニズムで発生する凍害と併せて、凍霜害と表現することもあります。

霜害といっても、霜が直接被害を与えるものではないんです。

霜が降りるほどの低温によって植物体内の水が凍ることが霜害の原因になります。

植物体内の水は、大きく細胞外(細胞膜の外側)の水と細胞内(細胞膜の内側)の水に分けられます。

植物細胞は一番外側に丈夫な細胞壁があり、その内側に細胞膜に包まれた柔らかい細胞組織が存在します。

気温がある程度下がると、まず、細胞膜と細胞壁に挟まれた部分の水が凍結します。

細胞膜の外側に氷ができると、細胞内の水が細胞膜を透過して吸い出されますので細胞組織は脱水されて収縮します。

脱水が大きいと細胞組織が損傷します。

一方、温度が上昇して細胞外の氷が解ける際には、水が細胞膜を通って細胞内に戻っていきますが、このとき細胞内に急速に水が入ると細胞組織や細胞膜が損傷します。

氷によって、凍る時も解けるときも細胞が損傷させてしまうおそれがあるんです。

細胞が損傷したままの状態となる、あるいはそのまま死滅することで植物に被害が発生して、作物の価値が低下することにもなるのが霜害と呼ばれるものです。

さらに気温が下がると、細胞膜内の水も凍結し細胞組織や細胞膜が物理的にも破壊され凍害と呼ばれます。

先に述べたように、霜害と凍害とはメカニズムが同じですので、区別しないことが多いみたいです。

なぜ、細胞外で凍結すると細胞内の水が吸い出されるかというと、氷の表面の飽和水蒸気圧は同じ温度の水(過冷却)の表面の飽和水蒸気圧より小さいためです。

細胞外で凍結が起きると、細胞膜の外側では内側に比べて蒸気圧が小さくなりますので、細胞膜の内外の圧力差により細胞内の水が細胞の外に移動させられることになります。

霜注意報と放射冷却と霜

「明日の朝は放射冷却により冷え込み、霜の降りるところもあるでしょう。」晩秋や春先に良く聞くことばです。

早霜・遅霜が降りる時には、気象台が霜注意報を発表して霜害について注意を呼びかけています。

霜注意報の発表基準は最低気温が3℃か4℃となっている都道府県が多いです。

どうして、気温3℃程度で霜が降りるのでしょう?

夜になって太陽の熱を受けなくなると地面が先に冷えて地面に接する空気を冷やし、冷やされた空気がその上部に接する空気を冷やします。

その結果、地面付近で最も気温が低く上空に行くほど高くなる「接地逆転層」が形成されます。

気温の観測を行っているのは高さ1.5メートルですので、気温が3℃でも地面付近の気温は0℃以下となり霜が降りることがあるためだからです。

霜害が発生する温度

0℃程度から霜害が発生する作物もあるようですが、霜害が起きやすいお茶の場合、一番弱い新芽でも氷点下2℃以下で霜害が発生するとされています。

その理由については、以下のようになります。

水は0℃で氷になるとされていますが、実際には、凍結開始のきっかけとなる氷核が無いと氷点下でも過冷却の水の状態を保ちます。

植物内でも0℃以下でも過冷却によって水の状態を保つことが多く、氷点下2℃程度まで温度が下がると、氷の結晶生成の核となる氷核の役割を果たすタンパク質を持つ細菌(氷核活性細菌)の効果が現れ、植物内の過冷却の水が氷結します。

霜害を防ぐためにはどうしたらいい?

霜害を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?

霜害を防ぐには、植物体の表面の温度を大きく下げないことが重要となります。

そのためには、放射熱を少なくするか加熱をするかの2つが基本となります。

放射熱を減らすには、覆いをするのが効果的でビニールなどで覆うのが一般的です。

濡れ藁(わら)、古タイヤなどを燃やして煙幕を張るという方法がとられた時代もあったようです。

加熱するには、ハウス内で暖房を行うことがすぐにイメージされると思います。

また、防霜ファンも上空の暖かい空気を送り込むという加熱の工夫です。

また、葉面散水という方法もあります。

これは、霜害が出そうな場合に水撒きを続ける方法です。

水が凍る際に出る凝固熱(融解熱)によって葉面の温度が下がりすぎないようにすることが目的です。

それから、冷たい空気は重いため低い方向に流れます。

周囲から冷たい空気が流れ込んでこないように防霜林や防霜堤を作ったり、逆に冷たい空気が流れ出す道筋を作るといった工夫も行われているようです。

霜は降りる?が正しい?

葉っぱなどの表面の温度が下がると接する空気が冷やされます。

空気が冷やされて飽和すると空気中の水蒸気が水(凝結)、氷(昇華)となって現れ、自らの重さで落下します。

水となって出てきた場合が「露」、氷となって出てきた場合が「霜」ということになります。

空気中に現れて葉っぱなどの物の表面に落下しますので、霜が「降りる」という表現は適切な表現ということになります。

霜が降りるまでのプロセスを確認してみると納得ですよね。

まとめ

今回の内容についてまとめました。

まとめ
  • 霜害は、霜が降りるほどの低温によって植物内の水が凍り細胞が損傷・死滅して作物に被害がでることをいう
  • 早霜遅霜の時には霜注意報が発表される。基準が3~4℃くらいなのは、気温の観測を行っているのが1.5メートルで、気温が3℃でも地面付近の気温は0℃以下となることがあるため
  • 植物内では0℃以下でも過冷却のため水の状態を保つことが多いけど、氷点下2℃程度までさがってくると植物内の過冷却の水が凍りだす

以上が、「霜害のメカニズムを解説します」でした。

読んでいただきありがとうございました。

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