学科一般(予報業務に関する一般知識)は、15問のうち「法規4問+熱力学・力学6問」で10問取れる科目です。大気の物理と気象業務法が範囲で、一見すると広く見えますが、出題される分野の配分は毎回ほぼ同じです。この記事では、第55〜65回の出題を分野ごとに整理して、どこに時間をかければ合格ライン(原則11問)に届くかを示します。記事の後半に、当サイトのオリジナル一問一答20問(解説つき)を置きました。まずは腕試しにどうぞ。

学科一般は「物理が苦手だから無理」と思われがちですが、必要なのは式の暗記ではなく「何と何が釣り合っているか」を日本語で言える力です。私も気象庁で事務職から技術職へ移ったときに、この科目の勉強で物理を学び直しました。
- 出題は法規4問が固定。残り11問が物理・現象(熱力学2〜3、力学2〜3、放射1〜2、構造1〜2、降水1、現象2、気候変動1)
- 合格ラインは原則11問(調整で9〜10問の回も)。法規4問+熱力学・力学で6問+残りで1〜2問が現実的な設計
- 式は5本だけ確実に:状態方程式、静力学平衡、温位、地衡風、コリオリ力
- 間違えやすいのは「乾燥断熱と気温減率」「地衡風の向き」「警報を出せるのは誰か」「温室効果の寄与」
出題分野と配分|15問の内訳
| 分野 | 出題数の目安 | 主な内容 | 対策の優先度 |
|---|---|---|---|
| 大気の構造 | 1〜2問 | 対流圏・成層圏の気温分布、大気の組成、オゾン層 | 中:数字を覚える |
| 熱力学 | 2〜3問 | 状態方程式、断熱変化、温位・相当温位、湿度の表し方、安定度 | 最高 |
| 降水過程 | 1問 | 雲粒の成長、暖かい雨・冷たい雨、雪の結晶、霧の種類 | 中 |
| 放射 | 1〜2問 | 太陽放射と地球放射、散乱・吸収、放射平衡温度、温室効果 | 高 |
| 大気の力学 | 2〜3問 | 気圧傾度力・コリオリ力、地衡風・傾度風・温度風、摩擦、渦度 | 最高 |
| 気象現象 | 2問 | 温帯低気圧・前線、台風、梅雨、フェーン、局地風、積乱雲 | 高 |
| 気候変動 | 1問 | 温暖化の観測事実、エルニーニョ、放射強制力 | 中 |
| 気象法規 | 4問 | 気象業務法(予報業務許可・警報・気象予報士)、災害対策基本法、水防法 | 最高(暗記で満点) |
分野別の対策|どこで点を取るか
法規(4問)|落とすと合格が遠のく
気象業務法は「誰が・何を・どの手続きで」の3点で整理します。予報業務は気象庁長官の許可、警報は気象庁だけ(許可事業者は原則不可)、気象予報士は気象庁長官の登録、許可事業者は事業所ごとに予報士を置く、罰則は「許可なく予報業務=50万円以下の罰金」といった数字と主体を、過去問の選択肢で確認するだけで4問取れます。災害対策基本法(市町村長の避難指示)と水防法(洪水予報は気象庁と国土交通大臣が共同)も1問出ることがあります。
熱力学(2〜3問)|温位と安定度が主役
状態方程式 p=ρRT、静力学平衡 dp/dz=−ρg、温位 θ=T(1000/p)^0.286、この3つの「意味」が分かれば大半が解けます。温位は「乾燥断熱で1000hPaに持っていったときの温度」で、乾燥断熱過程で保存される量。相当温位は水蒸気の潜熱まで含めた温位で、飽和しても保存される。安定・不安定の判定は、実際の気温減率と乾燥断熱減率(約1℃/100m)・湿潤断熱減率(約0.5℃/100m)の大小関係で決まります。この感覚はエマグラム表示ツールで実データを見ると一気に定着します。
力学(2〜3問)|風の向きと大きさ
コリオリ力は f=2Ωsinφ で風速に比例、赤道で0、極で最大。地衡風は気圧傾度力とコリオリ力のつり合いで、北半球では高圧部を右に見て吹く。傾度風は遠心力が加わるので、低気圧性の曲率では地衡風より弱く、高気圧性では強い。温度風は2層の地衡風の差で、暖気を右に見て吹く。高気圧は時計回りに吹く理由の記事に、3つの力の矢印を動かせる風向シミュレーターがあります。
放射(1〜2問)|波長と温度の関係
太陽放射は0.5μm付近(可視光)、地球放射は10μm付近(赤外)にピーク。ウィーンの変位則(ピーク波長は温度に反比例)とステファン・ボルツマンの法則(放射量は温度の4乗に比例)を、数字を変えて計算させる問題が定番です。レイリー散乱(波長の4乗に反比例=空が青い)、ミー散乱(雲が白い)、温室効果の寄与(水蒸気>二酸化炭素)も頻出。
気象現象(2問)|低気圧・台風・前線
温帯低気圧は南北の温度差(傾圧不安定)で発達し、上空のトラフの東側で発達する。台風は最大風速17.2m/s以上の熱帯低気圧で、潜熱がエネルギー源、進行方向右側が危険半円。前線は暖気側に傾き、温暖前線の傾きは緩やか(1/100〜1/300)、寒冷前線は急(1/50〜1/100)。梅雨前線は水蒸気の収束、フェーンは風上で潜熱を得て風下で乾燥断熱昇温。当サイトの台風の右側が強い理由と天気図の読み方を合わせて読むと理解が早いです。
確実に覚える式5本
| 式 | 意味 | 試験での使われ方 |
|---|---|---|
| p=ρRT(状態方程式) | 気圧=密度×気体定数×絶対温度 | 同じ気圧なら暖かい空気ほど密度が小さい(軽い) |
| dp/dz=−ρg(静力学平衡) | 上下の気圧差=空気の重さ | 層厚は気温に比例。暖かい層ほど厚い(温度風の根拠) |
| θ=T(1000/p)^0.286(温位) | 1000hPaに乾燥断熱で移したときの温度 | 乾燥断熱で保存。高度とともに増えれば安定 |
| V=(1/ρf)·∂p/∂n(地衡風) | 気圧傾度力とコリオリ力のつり合い | 等圧線の間隔が狭いほど強い。高緯度ほど同じ傾度で弱い |
| f=2Ωsinφ(コリオリパラメータ) | 緯度で決まる自転の効果 | 赤道で0、極で最大。Ω=7.29×10^-5 rad/s |
気象予報士試験の定番テキスト
独学なら「一般気象学(小倉義光)」で土台を作り、「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト」で学科の穴を埋め、過去問は最低5回分を3周するのが王道です。実技は解説つきの過去問集が必須です。
図解|式の「意味」を4枚の図で
式5本のうち、毎回のように問われる地衡風・温位・放射・安定度を図にしました。分野別の詳しい解説とオリジナル問題は、下の深掘り記事(順次公開)にあります。
計算例題で確認|式5本の使い方
- ① 0.96 kg/m³
- ② 1.16 kg/m³
- ③ 1.29 kg/m³
- ④ 1.42 kg/m³
解答・解説を見る
p=ρRT より ρ=p/(RT)=100000/(287×300.15)≒1.16 kg/m³。気温は絶対温度(27℃=300.15K)に直すこと、気圧はPa(1hPa=100Pa)に直すことが2つの落とし穴です。同じ気圧なら気温が高いほど密度は小さい(軽い)ことも確認しておきましょう。
- ① 283K
- ② 290K
- ③ 297K
- ④ 304K
解答・解説を見る
θ=T(1000/p)^0.286=268.15×(1000/700)^0.286。(1000/700)^0.286≒1.107 なので θ≒296.9K≒297K。温位は「1000hPaに乾燥断熱で移したときの温度」なので、上空の空気ほど気温より温位がかなり高くなります。
- ① 約2倍
- ② 約5倍
- ③ 約10倍
- ④ 約20倍
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ウィーンの変位則 λmax=2897/T[μm]より、太陽 2897/6000≒0.48μm、地球 2897/288≒10.1μm。比は約21倍。ピーク波長は温度に反比例するので、温度比 6000/288≒20.8 がそのまま答えになります。
- ① 約1/1.2
- ② 約1/1.4
- ③ 約1/2.1
- ④ 約1/4
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ステファン・ボルツマンの法則(放射量は絶対温度の4乗に比例)より、(250/300)^4=(5/6)^4≒0.48。よって約1/2.1です。温度が2割下がると放射は半分近くに減る、という感覚を持っておくと選択肢を絞れます。
- ① 約8 m/s
- ② 約16 m/s
- ③ 約32 m/s
- ④ 約64 m/s
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f=2Ωsin45°=2×7.29×10⁻⁵×0.707≒1.03×10⁻⁴ s⁻¹。気圧傾度は 400Pa/200000m=2×10⁻³ Pa/m。V=(1/ρf)·(Δp/Δn)=2×10⁻³/(1.2×1.03×10⁻⁴)≒16 m/s。単位をすべてSI(Pa・m・kg)にそろえるのが唯一のコツです。
- ① 絶対不安定
- ② 条件付き不安定
- ③ 絶対安定
- ④ 中立
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気温減率は 12℃/1500m=0.8℃/100m。乾燥断熱減率(1.0℃/100m)より小さく、湿潤断熱減率(約0.5℃/100m)より大きいので条件付き不安定です。未飽和の空気塊なら安定、飽和した空気塊なら不安定になる、という「条件付き」の意味まで言えるようにしておきましょう。
- 気象業務法(法規)完全攻略・一問一答(09/28公開)
- 大気の熱力学(温位・断熱・安定度)(10/02公開)
- 放射と熱収支(10/04公開)
- 大気の力学(地衡風・温度風・渦度)(10/05公開)
- 大規模運動と温帯低気圧(10/06公開)
- 中小規模の現象と台風(10/07公開)
一問一答クイズ|学科一般 20問(オリジナル)
当サイトが作成したオリジナル問題です。過去問の再掲ではありませんが、出題される分野と「引っかけ方」を同じ配分にしています。4択を押すと正誤と解説が出ます。目標は20問中15問(75%)。
学科一般 一問一答(20問)
出題分野:大気の構造2・熱力学4・降水1・放射2・力学4・現象3・気候1・法規3。当サイトのオリジナル問題です。
間違えやすいポイント10選
| テーマ | ひっかけ | 正しい理解 |
|---|---|---|
| 気温減率 | 乾燥断熱減率=対流圏の気温減率と思う | 乾燥断熱は約1℃/100m、対流圏の平均は約0.65℃/100m、湿潤断熱は約0.5℃/100m |
| 温位 | 飽和しても温位が保存されると思う | 飽和すると潜熱で温位は増える。保存されるのは相当温位 |
| 地衡風の向き | 低圧部を右に見ると答える | 北半球は高圧部を右(低圧部を左)に見て吹く |
| 傾度風 | 低気圧まわりの風は地衡風より強いと思う | 低気圧性の曲率では遠心力が外向きに働き、地衡風より弱い |
| 温室効果 | 二酸化炭素が最大寄与と答える | 寄与最大は水蒸気。人為起源の増加の主因が二酸化炭素 |
| 台風の定義 | 中心気圧で決まると思う | 最大風速17.2m/s以上。気圧の基準はない |
| 温帯低気圧 | 潜熱がエネルギー源と思う | 主エネルギー源は南北の温度差(有効位置エネルギー)。潜熱は補助 |
| 警報 | 許可事業者も警報を出せると思う | 警報は気象庁のみ。許可事業者は原則禁止 |
| 予報業務 | 気象予報士がいれば誰でも予報を発表できると思う | 予報業務には気象庁長官の許可が必要。予報士は許可事業者の中で現象の予想を担当 |
| 気象予報士 | 合格=気象予報士と思う | 気象庁長官の登録を受けて初めて気象予報士 |
学科一般の勉強の進め方
- 「一般気象学」の図と本文だけを1周(2週間)
- 試験向けテキストで熱力学→力学→放射→現象の順に、式の意味を日本語でノートに書く(4週間)
- 法規は過去問5回分の選択肢を条文で確認(1週間)
- 過去問を回ごとに解いて、間違えた分野だけテキストに戻る(4週間〜)
- エマグラムと実況モニターで、今日の大気の安定度や低気圧の構造を「学科の言葉」で眺める習慣をつける
全体の勉強計画は独学の勉強法、学科専門は学科専門の頻出分野と対策、次の試験日は2027年の試験日程で確認してください。
学科一般 よくある質問
学科一般の合格ラインは何問ですか?
原則15問中11問以上です。難易度により調整され、直近11回では10問または11問でした。
学科一般で最も配点が大きい分野は?
気象法規の4問が固定で最大です。次いで熱力学と大気の力学が各2〜3問。この3分野で10問前後になります。
数式はどのくらい覚える必要がありますか?
確実に必要なのは状態方程式・静力学平衡・温位・地衡風・コリオリパラメータの5本です。式の変形より「片方が増えるともう片方がどうなるか」を問われます。
文系ですが学科一般は突破できますか?
できます。法規4問は暗記、熱力学・力学は高校物理の範囲で、必要なのは比例・反比例と対数の考え方です。実データ(エマグラム・天気図)を見ながら学ぶと定着します。
過去問は何回分やればいいですか?
最低5回分を3周が目安です。気象業務支援センターのサイトで直近の問題が無料で公開されています。
学科一般と学科専門はどちらを先に勉強すべきですか?
学科一般が先です。熱力学と力学は学科専門の数値予報・観測の理解と、実技の土台になります。
- 法規4問は暗記で満点。ここが合格の土台
- 熱力学と力学で6問。式5本の「意味」を日本語で
- 放射・現象・気候変動で残り1〜2問を拾う
- ひっかけは「減率の違い」「地衡風の向き」「警報を出せるのは気象庁だけ」
- クイズで75%取れたら過去問へ
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出典:気象業務支援センター「試験案内」「過去の試験問題」、気象業務法、小倉義光「一般気象学」。出題配分は当サイトの整理で、回により前後します。クイズは当サイトのオリジナルです。


