気象予報士試験は独学で合格できます。合格率5%の試験ですが、出題範囲は公開されていて、過去問は無料で手に入り、必要な数学は高校レベルです。独学で失敗する人の多くは「教材が悪い」のではなく、順番と時間配分を間違えています。この記事では、元気象庁職員で気象予報士の私が、学科一般→学科専門→実技の順番、科目ごとの勉強時間の目安、定番の参考書と使い方、そして最初の1か月にやることを具体的にまとめました。下のシミュレーターに試験日と週の勉強時間を入れると、あなたの計画が出ます。

気象庁で事務職から技術職へ移った経歴なので、「理系が当たり前の世界に、あとから入った側」の目線で書いています。文系出身で数式が苦手な人ほど読んでほしい内容です。
勉強計画シミュレーター(試験日・週の勉強時間・現在地から、科目別の配分と週ごとの目安を出します)
- 1. 学科一般を先に。熱力学・力学・法規の3本柱で、全体の物理の土台になる(目安200〜250時間)
- 2. 学科専門は暗記と実務。観測・数値予報・警報基準は「気象庁のサイトが教科書」(目安150〜200時間)
- 3. 実技は過去問を時間を計って解く訓練。知識ではなく処理速度(目安300〜400時間)
- 合計で800〜1,000時間が現実的な目安。週10時間なら約2年、週20時間なら1年
- 一発合格にこだわらず、「1回目で学科、2回目で実技」の2段構えが最も確率が高い
勉強時間の目安|科目別に何時間かかるか
| 科目 | 内容 | 目安時間 | 時間がかかる人 |
|---|---|---|---|
| 学科一般 | 大気の構造・熱力学・降水過程・放射・力学・気象現象・気候変動・法規 | 180〜250時間 | 物理が初めての文系。式の意味を理解するのに時間がかかる |
| 学科専門 | 観測(地上・高層・レーダー・衛星)・数値予報・短期/週間予報・警報注意報・気象災害 | 150〜200時間 | 暗記が苦手な人。気象庁の発表基準を覚える量が多い |
| 実技 | 天気図の穴埋め・前線解析・作図・計算・記述(2題×75分) | 300〜400時間 | ほぼ全員。最初は1題に3時間かかる |
| 合計 | 約800〜1,000時間 | 理系で物理が得意なら600時間台も可能 |
よく「1,000時間」と言われますが、内訳を見ると実技だけで4割を占めます。学科を完璧にしてから実技に入ると時間が足りなくなるので、学科の過去問が6〜7割解けるようになった時点で、実技の過去問を「時間無制限」で解き始めるのがコツです。
ステップ1:学科一般|物理の土台を作る(最初の2〜3か月)
学科一般は15問で、例年おおむね「大気の構造1〜2問、熱力学2〜3問、降水過程1問、放射1〜2問、力学2〜3問、気象現象(前線・低気圧・台風)2問、気候変動1問、法規4問」という構成です。法規4問は暗記だけで取れるので、ここを落とさなければ残り11問中7問で合格ラインに届きます。
- 最初に読む本:「一般気象学」(小倉義光)。大学の教科書ですが、試験の物理はほぼこの本の範囲。1周目は式を追わず、図と本文だけ読む
- 試験向けテキスト:「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト(学科一般)」など。一般気象学で分からなかった所を、試験の言葉で読み直す
- 式は「単位」で覚える:静力学平衡・状態方程式・温位・コリオリ力は、式の形より「何と何が釣り合っているか」を日本語で言えるようにする
- 法規は条文の数字:予報業務許可、警報の伝達、気象予報士の設置基準、罰則。過去問の選択肢を条文で確認するだけで4問取れる
学科一般の頻出分野と、当サイトの一問一答クイズは学科一般の頻出分野と対策にまとめています。
ステップ2:学科専門|気象庁のサイトが教科書(次の2か月)
学科専門は「気象庁がいま何をどう観測・予報・発表しているか」を問う科目です。テキストより気象庁の「知識・解説」ページと予報用語集が正確で、しかも無料です。観測機器(アメダス・ラジオゾンデ・レーダー・ひまわり)、数値予報の仕組みと限界、降水確率と信頼度、注意報・警報・特別警報の基準、台風の階級、週間予報の信頼度A〜Cなどが定番です。
- アメダスの観測項目と地点数、雨量計・風向風速計・日照計の仕組み → アメダスとは?観測所と見方
- 気象衛星ひまわりの可視・赤外・水蒸気画像の違い → 気象衛星画像の見方
- レーダーとナウキャスト、キキクル → 全国実況モニターで毎日眺めると覚える
- 警報の基準と防災気象情報の体系 → 気象庁「防災気象情報の体系」と、当サイトのキキクルの見方
学科専門の頻出分野と対策は学科専門の頻出分野と対策で。
ステップ3:実技|過去問を時間を計って解く(最後の3〜4か月)
実技は「知っているか」より「75分で処理できるか」の試験です。最初の過去問は3時間かかって当然。10回分を解くころに75分で終わるようになります。やることは3つだけです。
- 時間無制限で解いて、解説を読む(最初の5回分):問題文の「〜を35字以内で述べよ」の型と、模範解答の書き方をノートに写す
- 75分で解く(次の10回分):取れる問題から取る。作図(前線・トラフ・等値線)は毎回描いて手を慣らす
- 同じ日の実況を見直す:出題された日の地上天気図・高層天気図・エマグラムを実データで確認する。当サイトのエマグラム表示ツールは1905年までさかのぼれるので、どの過去問の日でも実況が出せます
記述の型・時間配分・作図のコツは実技試験の解き方、エマグラム問題の手順はエマグラム問題の解き方、天気図の基本は天気図の読み方で詳しく解説しています。
気象予報士試験の定番テキスト
独学なら「一般気象学(小倉義光)」で土台を作り、「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト」で学科の穴を埋め、過去問は最低5回分を3周するのが王道です。実技は解説つきの過去問集が必須です。
図解|時間の配分と、あなたに合う計画のパターン
「1,000時間」を丸ごと見ると遠いので、科目別の配分と、週の勉強時間ごとの現実的なパターンに分けました。上のシミュレーターの結果と合わせて見てください。
ケースで確認|計画の立て方
解答・解説を見る
学科が6割なら、あとは過去問で間違えた分野だけテキストに戻す「穴埋め」で足ります。残り時間の大半を実技に振り、1周目は解説を読みながら(1題3時間)、2周目以降は時間を計ります。目標は試験2週間前に「75分で65%」です。
解答・解説を見る
140時間で3科目は現実的ではありません。一般気象学→試験向けテキスト→過去問5回分の順で学科一般に絞り、合格すれば免除で次の2回は専門と実技に集中できます。「まず1科目」は遠回りに見えて最も確率が高い進め方です。
解答・解説を見る
解く時間だけなら1題あたり1周目3時間・2周目1.5時間・3周目1.25時間で、20題(10回分×2題)なら約115時間。解説の読み込み・模範解答との比較・実況の確認に同じくらいかかるので3周で約180時間、残り約80時間を弱点のパターン別復習に回します。3周目は本番と同じ13時台に解いて体を慣らします。
- 学科一般の頻出分野と対策・一問一答
- 学科専門の頻出分野と対策・一問一答
- 実技の解き方・時間配分
- 合格基準と配点・採点の全解説(09/27公開)
- 試験当日の持ち物・時間の使い方(09/30公開)
定番の参考書と使い方
| 段階 | 書名(種類) | 使い方 |
|---|---|---|
| 土台 | 一般気象学(小倉義光・東京大学出版会) | 学科一般の物理はこの1冊。1周目は図だけ、2周目で式。試験まで手元に置く |
| 学科 | らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト(学科一般・学科専門) | 試験の言葉で整理された定番。過去問で間違えた分野を読み直す使い方 |
| 学科 | 気象予報士試験 精選問題集(学科一般・専門) | 分野別に過去問が並ぶ。1周目は解説を読むだけでよい |
| 実技 | 気象予報士試験 実技 過去問題集(解説つき) | 最低10回分。解説の「模範解答の書き方」を写経する |
| 実技 | ひとりで学べる 気象予報士 実技試験 完全攻略テキスト 等 | 前線解析・作図の手順が図で説明されている本を1冊 |
| 補助 | 気象庁「予報用語」「知識・解説」(無料) | 学科専門の一次資料。定義はここで確認 |
教材を増やしすぎないことも大事です。テキスト1冊・問題集1冊・実技過去問1冊を繰り返すほうが、5冊を1周するより点になります。過去問は気象業務支援センターのサイトで直近5回分が無料公開されています。
独学が不安なら通信講座という手も
実技の記述は「自分の答案のどこが減点されるか」が独学では見えにくい部分です。添削つきの講座は費用がかかりますが、実技に絞って使う人が多いです。まずは無料の資料請求や体験で相性を見るのがおすすめです。
最初の1か月にやること|迷ったらこの順番
| 週 | やること | 到達目標 |
|---|---|---|
| 1週目 | 一般気象学の1〜3章(大気の構造・放射・熱力学)を図中心に読む。試験案内と過去問1回分を眺める | 試験の全体像と「どのくらい分からないか」を知る |
| 2週目 | 熱力学(温位・断熱減率・状態曲線)をテキストで。エマグラム表示ツールで今日の実況を見る | 乾燥断熱・湿潤断熱・露点の意味を説明できる |
| 3週目 | 力学(コリオリ・地衡風・温度風)と降水過程。高気圧は時計回りの風向ツールで感覚をつかむ | 風がなぜ等圧線に沿って吹くかを説明できる |
| 4週目 | 法規4問を過去問5回分で潰す。学科一般の過去問1回分を時間を計って解く | 15問中7〜8問。ここから伸ばす |
独学でつまずくポイントと対処
| つまずき | よくある原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 式が覚えられない | 式を丸暗記しようとしている | 単位と釣り合い(何と何が等しいか)で覚える。静力学平衡は「上下の圧力差=空気の重さ」 |
| 学科専門の暗記量が多い | テキストだけで覚えようとする | 気象庁のサイトで実物(警報文・数値予報の図)を見ながら覚える。毎日の天気予報を「専門」の目で聞く |
| 実技が時間内に終わらない | 前半の穴埋めに時間を使いすぎる | 大問ごとに時間を決め、記述は先に骨子を決めてから書く。詳しくは実技の記事へ |
| モチベーションが続かない | 合格までが遠く見える | 「次の回で学科2科目」に目標を刻む。学科合格で免除が出ると、実技だけの勉強に切り替えられる |
| 自分の答案の減点が分からない | 独学の限界 | 実技だけ添削つきの講座や答案採点サービスを使う。全部を講座にする必要はない |
勉強に使えるサイト内ツール
- エマグラムの見方と表示ツール:世界1,400地点の実測と、任意地点のモデル。過去問の日付を入れて実況を確認できる
- 全国実況モニター:雨雲・衛星・気温・風・キキクルを同時表示。学科専門の「今の気象庁」が分かる
- METAR・TAF リアルタイム表示:航空気象の観測・予報。雲底や視程の実況を読む練習に
- 過去の天気検索:過去問の日の各地の天気・気温を確認できる
- 風速の目安・降水量の目安:数値と体感をつなぐ
独学の勉強法 よくある質問
気象予報士試験は独学で合格できますか?
できます。出題範囲が公開され、過去問が無料で手に入り、必要な数学は高校レベルです。合格者の多くは市販教材中心の独学で、実技だけ添削を使う人もいます。
勉強時間はどのくらい必要ですか?
目安は800〜1,000時間で、学科一般180〜250時間、学科専門150〜200時間、実技300〜400時間です。理系で物理が得意なら600時間台、文系で物理が初めてなら1,200時間を見ておくと安全です。
どの科目から始めればいいですか?
学科一般からです。熱力学と力学は学科専門・実技の土台になります。学科の過去問が6〜7割解けるようになったら、実技の過去問を時間無制限で解き始めてください。
参考書は何を買えばいいですか?
土台に「一般気象学」、試験向けに学科のテキスト1冊と問題集1冊、実技は解説つきの過去問集1冊が定番です。教材は増やさず繰り返すほうが点になります。
文系で数学が苦手でも大丈夫ですか?
大丈夫です。必要なのはベクトル・対数・比例計算と微分の考え方までです。式は丸暗記せず「何と何が釣り合っているか」を日本語で説明できるようにすると定着します。
一発合格を狙うべきですか?
時間が十分(試験まで1年以上・週15時間以上)なら狙えます。そうでなければ「1回目で学科2科目、2回目で実技」の2段構えが最も確率が高い戦略です。学科免除は次の2回まで有効です。
- 順番は学科一般→学科専門→実技。合計800〜1,000時間
- 学科一般は法規4問を確実に。式は単位と釣り合いで覚える
- 学科専門は気象庁のサイトが教科書。毎日の予報を「専門」の目で見る
- 実技は過去問を75分で解く訓練。同じ日の実況で復習する
- 一発合格より「1回目で学科、2回目で実技」の2段構え
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出典:気象業務支援センター「気象予報士試験」「過去の試験問題」、気象庁「知識・解説」「予報用語」。勉強時間の目安は当サイトの見立てで、個人差があります。


