エマグラムは、上空の気温と湿り具合・風を1枚で読み取れる、天気を立体で考えるための図です。ただ「どこで最新のデータを見ればいいのか」でつまずく人がとても多い図でもあります。
以前このブログではワイオミング大学のサイトで見る方法を紹介しました。ただ最近は外部サイトからの読み込みに制限がかかり、ブログに埋め込んだり自由に使ったりするのが難しくなっています。
そこでこのページに、アメリカ海洋大気庁(NOAA)などが公開しているデータを直接読みに行くエマグラム表示ツールを用意しました。世界約1,400地点の実際の観測に加えて、観測点のない任意の1地点も数値モデルで表示できます。後半では、豪雨・豪雪・逆転層など教科書に出てくる代表的な状態曲線の事例も、実際の観測データで並べています。
- 地図をクリックするだけで、世界中どこでもエマグラムが出せる
- 最新の観測から、1905年ごろまでの過去にもさかのぼれる
- エマグラム/スキューT・logP/温位図/ホドグラフの4種類で表示できる
- CAPE・SSI・K指数・可降水量などの安定指数を自動で計算する
- 登録もインストールも不要、スマートフォンでもそのまま使える
エマグラム・ビューア(世界の高層観測データを地図から表示)
まずは実際に触ってみてください。初回は世界の観測地点リストを読み込むので、数秒お待ちください。
エマグラム・ビューア
全世界の高層観測(ラジオゾンデ)と数値モデルの鉛直プロファイルを、地図から選んで表示します。
数値データ表を表示
実測データは品質管理を経てから配信されるため、2〜3日程度の遅れがあります。直近はモデル、過去は実測、という使い分けを推奨します。
エマグラムとは?まずは軸と線の意味から
エマグラムは、ラジオゾンデ(気球にぶら下げた観測機器)が上空へ昇りながら測った気圧・気温・湿度・風を、1枚の図にまとめたものです。「大気の断面図」と考えるとイメージしやすいと思います。
縦軸は気圧、横軸は気温
縦軸は気圧で、上にいくほど気圧が低い=高いところです。目盛りは対数になっていて、1000hPaがだいたい地上付近、850hPaで約1.5km、700hPaで約3km、500hPaで約5.5km、300hPaで約9kmが目安です。ツールでは右端に高度の目盛りも出しているので、感覚をつかむのに使ってみてください。
横軸は気温です。エマグラムでは横軸が地面と平行(直交座標)ですが、国際的によく使われるスキューT・logP図では等温線を斜めに寝かせています。見た目は違っても中身は同じで、スキューTのほうが上下の温度差が読み取りやすいという違いです。
状態曲線は「気温」と「露点温度」の2本
エマグラムの主役は2本の線です。
- 赤い線:気温 その高さの実際の気温です。
- 青い線:露点温度 その空気を冷やしたときに水蒸気が凝結し始める温度です。
この2本が近づいているところは湿っている、離れているところは乾いていると読みます。2本がぴったり重なっていれば湿度100%で、そこには雲があると考えられます。「湿っている層がどこからどこまであるか」を見るだけでも、雲の高さや厚みがかなり見えてきます。
ツールではもう1本、緑色で湿球温度も引いています。雨や雪が降り始めたときに空気がどこまで冷えるかの目安になり、雨か雪かの判断で役に立ちます。
背景の補助線は3種類
薄い色で引かれている斜めの線には、それぞれ役割があります。
- 乾燥断熱線(茶色) 雲ができていない空気の塊が上下したときにたどる温度変化。約1℃/100mで下がります。
- 湿潤断熱線(緑) 雲ができている(飽和した)空気の塊がたどる温度変化。凝結の熱で暖まるぶん、下がり方がゆるやかです。
- 等飽和混合比線(紫の点線) 水蒸気の量が同じところを結んだ線。露点温度がこの線に沿っていれば、水蒸気の量が変わっていないという意味になります。
ツールでは、これらの補助線をチェックボックスで個別に消せます。慣れないうちは線が多くて見づらいので、まずは全部消して状態曲線だけを眺めるのがおすすめです。
エマグラムの見方は3ステップでいい
細かい理屈は後回しでかまいません。実況を見るときは、この順番でたどると読みやすくなります。
ステップ1 どの高さが湿っているか
赤と青が近い層=湿っている層を探します。地面から上空まで全部くっついていれば雨のポテンシャルが高く、下だけ湿っていれば下層雲、上だけ湿っていれば上層雲、というふうに雲の種類まで想像できます。
ステップ2 どのくらい不安定か
紫の破線が「地上の空気を持ち上げたときにたどる道すじ(気塊経路)」です。この線が赤い線より右(暖かい側)にある区間は、持ち上げられた空気が周りより軽くて勝手に上昇できる=不安定な層です。この面積がCAPE(対流有効位置エネルギー)で、ツールが自動で計算します。
図中のLCL・LFC・ELも自動で表示しています。LCLは雲ができ始める高さ、LFCはそこから先は自力で上昇できるようになる高さ、ELは上昇が止まる高さ=積乱雲の頭の高さの目安です。
ステップ3 風がどう変わっているか
図の右側に並んでいるのが風の矢羽根です。下から上に向かって時計回りに風向が変わっていれば暖気移流、反時計回りなら寒気移流という読み方ができます。上下で風向・風速が大きく変わっている(シアーが大きい)ときは、積乱雲が組織化しやすい状況です。風だけをじっくり見たいときは、ホドグラフのタブに切り替えてみてください。
エマグラム・ビューアの使い方
3つのデータの使い分け
| データ種別 | 地点 | 期間 | こんなときに |
|---|---|---|---|
| 実測:全球ラジオゾンデ (NOAA NCEI/IGRA v2) | 世界約1,400地点(稼働中は約880地点) | 1905年ごろ〜2〜3日前 | 過去の実況を検証したいとき。試験勉強の教材にも最適です。 |
| 実測:北米リアルタイム (NWS/アイオワ州立大学 IEM) | 北米の約350地点 | 1946年ごろ〜ほぼリアルタイム | アメリカの荒天事例をすぐ見たいとき。 |
| モデル:全球・任意地点 (Open-Meteo 経由) | 地図をクリックした任意の1地点(全世界) | 2016年〜16日先の予想まで | 今この瞬間や、これからの予想を見たいとき。観測点のない海上や山沿いにも使えます。 |
実測データは品質管理を経てから配信されるので、2〜3日ほど遅れます(2026年8月時点で確認)。直近と予想はモデル、過去の検証は実測、と割り切って使い分けるのがコツです。
地点の選び方
- 地図上の青い丸をクリックする
- 検索窓に地点名やWMO地点番号を入れる(例:TATENO、47646、FUKUOKA)
- モデルを選んでいるときは、地図上のどこをクリックしてもOK
地図は世界中どこでも動かせます。「現在稼働中の観測点のみ」のチェックを外すと、すでに廃止された観測点も表示され、古い時代の観測をさかのぼれるようになります。
日時の指定と、過去へのさかのぼり方
日付と時刻(UTC)を選んで「表示」を押します。とりあえず直近を見たいときは「最新」で大丈夫です。
高層観測は世界共通で00UTCと12UTCに行われます。日本時間だと9時と21時です。国内16地点はこの2回だけですが、世界には1日4回(00・06・12・18UTC)観測している地点や、荒天時に臨時の特別観測を行う地点もあります。
そのためこのツールでは、地点のデータを読み込んだあとにその地点に実際に存在する観測時刻だけを時刻プルダウンに並べ直します。館野を選べば00と12だけ、4回観測の地点なら00・06・12・18が出る、という具合です。指定した時刻に観測がなかった場合は、もっとも近い観測に自動で切り替えたうえで、その旨を表示します。
実測を読み込むと、地図の下に時刻スライダーが出ます。左右に動かすと、その地点の観測を1回ずつたどれるので、「低気圧が近づくにつれて状態曲線がどう変わったか」といったアニメーション的な見方ができます。
初期状態ではその年のデータだけを読み込みます。それ以前を見たいときは「過去全期間の観測を読み込む」を押してください。1地点あたり20〜50MBのダウンロードが発生して数分かかりますが、一度読み込めば同じ地点なら日時を変えても瞬時に切り替わります。
4つの図を切り替える
- エマグラム 横軸が気温、縦軸が対数気圧の直交座標。日本の教科書でおなじみの形です。
- スキューT・logP 等温線を斜めに寝かせた国際標準の形式。CAPEの面積が読み取りやすくなります。
- 温位図 横軸を温位にした図。温位・相当温位・飽和相当温位の3本を並べ、不安定の種類を見分けます。
- ホドグラフ 風の鉛直分布を極座標で表示。0〜1km(赤)、1〜3km(紫)、3〜6km(青)、6〜12km(緑)で色分けし、推定ストーム移動も×印で示します。
図の上にマウスを乗せる(スマホなら指を置く)と、その高さの気温・露点・混合比・相当温位・相対湿度・風が吹き出しで出ます。「PNG保存」を押せば画像として保存できるので、勉強ノートやSNSにも使えます。
温位図で「不安定の種類」を見分ける
エマグラムは気温そのものを見る図なので、「安定なのか不安定なのか」は気塊経路と見比べる必要があります。横軸を温位に置きかえると、その判断が線の傾きだけでできるようになります。
| 線 | 意味 | 読み方 |
|---|---|---|
| 温位 θ (紫) | 空気を1000hPaまで乾燥断熱で下ろしたときの温度 | 高度とともに急に増える層=逆転層・安定層。ほぼ一定なら、かき混ぜられた混合層。 |
| 相当温位 θe (青) | 水蒸気が持つ潜熱まで含めた温位 | 高度とともに減る層=対流不安定。下が湿って上が乾いている状態で、層全体が持ち上がると激しく崩れます。 |
| 飽和相当温位 θe* (赤) | その気温で飽和したと仮定した相当温位 | 高度とともに減る層=条件付き不安定。飽和しさえすれば不安定になる層です。 |
青(θe)と赤(θe*)が重なっている層は飽和している=雲がある、と読めます。この2本の距離は、湿り具合をそのまま表しています。
ツールでは、相当温位が高度とともに減っている層=対流不安定な層に薄い赤の網かけを入れています。梅雨末期の大雨や、夏の雷雨の事例で見ると、下層に厚い網かけが出ているのが分かると思います。網かけはチェックボックスで消せます。
温位図の初期表示は400hPaまでにしています。上空ほど温位は大きくなるので、100hPaまで入れると下層の細かい違いが潰れてしまうためです。「上端気圧」で変更でき、エマグラム側の設定とは独立して覚えます。
自動計算される安定指数
図の下に並ぶタイルが、その状態曲線から計算した指数です。
| 指数 | 意味 |
|---|---|
| SB/MU/ML CAPE | 地上・最不安定・下層100hPa平均の気塊を持ち上げたときの対流有効位置エネルギー。大きいほど積乱雲が発達しやすい。 |
| CIN | 対流抑制。負の値が大きいほど「ふた」が強く、簡単には対流が始まらない。 |
| LCL/LFC/EL | 持ち上げ凝結高度/自由対流高度/平衡高度。雲底・対流開始・雲頂の目安。 |
| SSI(ショワルター安定指数) | 850hPaの空気を500hPaまで持ち上げたときの温度差。負なら不安定。 |
| LI(リフテッド指数) | 地上の空気を500hPaまで持ち上げたときの温度差。負なら不安定。 |
| K指数 | 中下層の湿りと気温減率から雷雨のポテンシャルをみる。40以上でほぼ確実に雷雨。 |
| トータルトータルズ | 同じく雷雨の目安。50前後から要注意。 |
| 可降水量 | 大気の柱に含まれる水蒸気を雨に換算した量。夏の大雨時は60mmを超えることも。 |
| 気温減率(850–500hPa) | 上空ほど気温が下がる割合。大きいほど不安定。 |
| 0℃高度/−20℃高度 | 雨雪判別や、雷・雹のポテンシャルをみるときの目安。 |
| 0–1km/0–6km シアー、SRH | 風の鉛直変化とストーム相対ヘリシティ。竜巻や組織化した積乱雲の目安。 |
計算はBolton(1980)の式にもとづき、気塊は持ち上げ凝結高度まで乾燥断熱、その上は相当温位一定の擬似断熱過程として、仮温度で補正したうえで求めています。ワイオミング大学が公表している同じ日時の値(可降水量73.61mm、SSI −0.28、LI 0.53)と、本ツールの計算値(73.4mm、−0.2、0.3)が一致することを確認しています。
日本の高層気象観測地点と地点番号
検索窓に番号を入れるとすぐ呼び出せます。ローマ字の地点名でも検索できます。
| 地点番号 | 地点名 | 地域 |
|---|---|---|
| 47401 | 稚内(WAKKANAI) | 北海道 |
| 47412 | 札幌(SAPPORO) | 北海道 |
| 47418 | 釧路(KUSHIRO) | 北海道 |
| 47582 | 秋田(AKITA) | 東北 |
| 47600 | 輪島(WAJIMA) | 北陸 |
| 47646 | 館野/つくば(TATENO) | 関東 |
| 47678 | 八丈島(HACHIJOJIMA) | 伊豆諸島 |
| 47741 | 松江(MATSUE) | 山陰 |
| 47778 | 潮岬(SHIONOMISAKI) | 近畿 |
| 47807 | 福岡(FUKUOKA) | 九州 |
| 47827 | 鹿児島(KAGOSHIMA) | 九州 |
| 47909 | 名瀬(NAZE) | 南西諸島 |
| 47918 | 石垣島(ISHIGAKIJIMA) | 南西諸島 |
| 47945 | 南大東島(MINAMIDAITOJIMA) | 南西諸島 |
| 47971 | 父島(CHICHIJIMA) | 小笠原 |
| 47991 | 南鳥島(MINAMITORISHIMA) | 小笠原 |
| 89532 | 昭和基地(SYOWA) | 南極 |
現在、国内で高層観測を続けているのはこの16地点と昭和基地です。ツールの地図では、廃止された地点もチェックを外せば表示できます。
エマグラムの状態曲線の代表的な事例
ここからは、教科書に出てくるような典型的な状態曲線を、実際の観測データで見ていきます。すべてこのページのツールで描いたものなので、同じ日時を入力すれば手元でも再現できます。数字を追うより、まず形を覚えてしまうのが近道です。
① 豪雨のとき:全層で湿る
令和3年8月14日、福岡県に大雨特別警報が発表されたときのエマグラムです。

いちばんの特徴は、地上から300hPa付近まで赤と青がぴったり重なっていることです。対流圏のほぼ全層が湿り切っていて、可降水量は73.4mmもありました。この状態で下層に何か持ち上げるきっかけがあれば、雨が延々と降り続くことになります。
一方でCAPEは小さく、雷を伴って激しく発達するタイプというより、湿った空気が次々と流れ込んで降り続ける「線状降水帯型」の大雨だったことが読み取れます。エマグラムは、大雨の降り方の違いまで教えてくれます。
② 対流不安定:上空に寒気、下層に暖湿気
令和3年7月15日、福岡県に竜巻注意情報が発表されたときのエマグラムです。上空に寒気が入り、下層に暖かく湿った空気が流れ込んでいました。

下層は湿っているのに、700〜500hPaで青い線が大きく左に離れています。下が湿って上が乾いている——これが対流不安定の典型的な形です。気温減率は6.1℃/km、CAPEは2,600J/kg近くまで達し、SSIも−3.7℃と明確に不安定でした。
この日の事例はこちらの記事でも扱っています。
③ 西高東低の冬型:下層だけ湿って上は乾く
令和3年2月18日、西高東低の気圧配置で福岡県に大雪注意報が発表されたときです。

湿っているのは850hPaより下だけで、その上は青い線が大きく左へ離れています。海の上で下層だけが暖められて湿り、その上に乾いた寒気が乗っている——冬型の典型的な姿です。可降水量はわずか5.7mm。夏の豪雨事例の十数分の一しかありません。
雪の雲は基本的にこの「湿った層の厚さ」ぶんしか発達しません。冬型のときは、湿った層が何hPaまで届いているかを見るのが、雪の強さを見積もるポイントになります。
④ JPCZによる豪雪:湿った層がぐっと厚くなる
令和3年1月8日、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の影響で北陸に「顕著な大雪に関する情報」が発表されたときの輪島です。

同じ冬型でも、③の福岡と比べて湿った層が550hPa付近まで伸びているのがわかります。気温減率は7.7℃/kmと大きく、冬としては対流活動がかなり活発でした。0–6kmのシアーは34.5m/sと非常に大きく、雪雲が組織化して同じ場所に居座りやすい環境だったことも読み取れます。
この日の事例はこちらの記事でも扱っています。
⑤ 沈降性逆転層:高気圧に覆われたとき
令和2年10月20日、高気圧に覆われて沈降性の逆転層が明瞭に出ていたときです。

ある高さから上にいくほど気温が上がる(赤い線が右に折れる)のが逆転層です。沈降性の場合は、逆転層のすぐ上で露点温度が急激に下がるのが特徴で、上から乾いた空気が下りてきていることを示します。
この層は「ふた」として働くので、下からの対流はここで頭打ちになります。秋晴れが続くときによく見る形です。
⑥ 前線性逆転層:温暖前線の前面で
平成29年9月27日、福岡県が温暖前線の前面にあったときのエマグラムです。

850〜800hPa付近に小さな逆転があります。前線面をはさんで、下に冷たい空気、上に暖かい空気が乗っている状態です。沈降性と違って逆転層の上でも湿ったままなのが見分けるポイントで、可降水量も64.5mmと多く、前線に伴う雲がしっかり広がっていたことがわかります。
⑦ 寒冷前線通過に伴う逆転層
令和3年10月2日、寒冷前線が通過したあとのエマグラムです。

注目したいのは右側の風です。下層から上空に向かって風向が反時計回りに変化していて、寒気移流の場になっていることがわかります。気温減率は7.2℃/kmと大きく、前線通過後らしく上空に寒気が入っていました。
状態曲線の形だけでなく、風の変わり方まで合わせて見ると、「今どんな空気の入れ替わりが起きているか」が立体的に見えてきます。
⑧ 接地逆転層:放射冷却で霧が出たとき
令和3年12月22日、前夜から晴れて放射冷却が効き、福岡県の筑豊・筑後地方に濃霧注意報が出ていたときです。

地表からごく薄い層だけ、気温が上に向かって上がっています。これが接地逆転層です。地面が放射冷却で冷え、その熱を奪われた空気だけが冷やされてできます。この層の中で気温が露点まで下がると、霧になります。
この日は850hPa付近にも沈降性の逆転層があり、接地逆転層と沈降性逆転層が二段構えになっていました。冬の朝の霧を予想するときは、この地表付近の細かい構造を見にいくことになります。
⑨ 上層雲だけが出ていたパターン
平成31年6月14日の松江です。九州にある停滞前線の北側で、薄曇りになっていました。

下層〜中層は乾いているのに、400hPaより上だけが湿っています。前線の雲が上層だけ北へ広がってきた状態で、地上からは薄曇りに見えます。可降水量は23.4mmと少なく、雨が降る状況ではありませんでした。
「湿っている層がどこにあるか」で雲の高さが決まる——という基本が、いちばん素直に出ている例だと思います。
エマグラムの活用方法
気象予報士試験の勉強に
試験ではエマグラムを読ませる問題が定番です。過去問を解いたあとに、同じ日時の実物をこのツールで出してみると理解が一気に進みます。1905年ごろまでさかのぼれるので、古い過去問でも実データを確認できます。
持ち上げ凝結高度や自由対流高度は、手で求めると時間がかかります。まず自分で作図してから、ツールが計算したLCL・LFC・ELと突き合わせると、自分の作図のクセや読み違いに気づけます。
毎日の実況解析に
大雨や大雪、雷が起きた日に、その日のエマグラムを見て振り返るのがいちばん力がつきます。「この形のときはこうなる」というパターンが、事例を重ねるほど手に入ります。
時刻スライダーで前後の観測をパラパラとたどると、前線や寒気の通過が状態曲線をどう変えたかがそのまま見えます。
任意地点のモデルで先を読む
高層観測は日本に16地点しかなく、しかも1日2回だけです。「自分の住んでいる街の上空は?」「明日の朝は?」に答えるには、モデルのプロファイルが便利です。地図上の好きな場所をクリックして、気象庁GSMやNOAA GFSの鉛直分布を見てみてください。
ただしモデルは19の気圧面の値をつないだものなので、接地逆転層のような薄い構造は表現できません。細かい構造を見たいときは実測に切り替えてください。
よくある質問
気象庁のホームページにエマグラムはありますか?
気象庁のサイトでは、高層観測の数値データ(高層気象観測資料)は公開されていますが、エマグラムとして作図されたものは基本的に提供されていません。そのため、作図された図を見たいときは本ページのようなツールを使うことになります。
ワイオミング大学のページはもう使えないのですか?
サイト自体はありますが、外部からの自動取得に制限がかかっており、ブログに埋め込んだり、まとめて取得したりすることが難しくなっています。本ツールはNOAAなどの公開データを直接読みに行くので、その影響を受けません。
なぜ観測は9時と21時なのですか?
世界中の高層観測を同じ時刻に行って、地球全体の大気の断面を一度に把握するためです。世界標準時の00UTCと12UTCに合わせており、日本時間ではそれが9時と21時にあたります。
06UTC・18UTCの選択肢があるのはなぜ?
世界には1日4回(00・06・12・18UTC)の高層観測を行っている地点があるためです。たとえばドイツのリンデンベルクは00・06・12・18UTCの4回とも定常観測しています。アメリカでは18UTCの追加観測を行う地点があるほか、荒天時には臨時の特別観測も入ります。
日本の16地点は00と12だけなので、館野などを選ぶとプルダウンにも00と12しか出ません。選んだ地点にその時刻の観測がなければ、もっとも近い観測に切り替えたうえでお知らせします。
データが数日前までしかないのはなぜ?
実測データは品質管理を経てからアーカイブに収録されるためです。直近を見たいときは「モデル」に切り替えてください。こちらは現在時刻から16日先の予想まで表示できます。
線が途切れているのはなぜ?
ラジオゾンデの観測では、湿度センサーが低温で使えなくなるなどの理由で、上空の露点温度が観測されないことがあります。その区間は線が引けないため途切れます。気温だけ、風だけが観測されている層もあります。
スマートフォンでも使えますか?
使えます。画面幅に合わせて地図とグラフが縦に並びます。図に指で触れると、その高さの数値が表示されます。
まとめ
- エマグラムは赤(気温)と青(露点)の距離を見るだけでも十分読める
- 湿った層の位置と厚さで、雲の種類や雨・雪の降り方が見えてくる
- 紫の破線(気塊経路)が赤より右にある区間が不安定な層=CAPE
- 本ページのツールなら、世界約1,400地点の実測と任意地点のモデルを地図から表示できる
- 過去にさかのぼれるので、試験勉強にも実況の振り返りにも使える
エマグラムは最初こそ線が多くてとっつきにくい図ですが、見るポイントを絞れば、天気図だけではわからない「空の縦の構造」が読めるようになります。気になる日の実況と見比べながら、少しずつ形に慣れていってもらえたらうれしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
