学科専門(予報業務に関する専門知識)は、「気象庁がいま何を、どう観測し、どう予報し、どう発表しているか」を問う科目です。物理よりも実務の知識が中心で、暗記の量は学科一般より多いのですが、教科書が無料で、しかも毎日の天気予報そのものが教材という科目でもあります。この記事では、15問の出題配分、分野別に覚えるべき数字、間違えやすいポイントを整理し、後半にオリジナルの一問一答20問を置きました。当サイトの実況ツール(雨雲・衛星・アメダス・エマグラム)を毎日眺めることが、そのまま学科専門の勉強になります。

気象庁にいた側から言うと、学科専門は「気象庁のホームページの知識・解説と予報用語を読み込めば満点が取れる」科目です。市販テキストは要約なので、定義や基準の原文は必ず一次資料で確認してください。
出題分野と配分|15問の内訳
| 分野 | 出題数の目安 | 主な内容 | サイト内で見られる実物 |
|---|---|---|---|
| 観測(地上・高層) | 2問 | アメダスの観測項目と高さ、通風筒、雲量・視程の目視観測、ラジオゾンデ | アメダスとは、エマグラム |
| 観測(レーダー・衛星) | 2問 | レーダーの反射強度とドップラー速度、ひまわりの可視・赤外・水蒸気画像 | 衛星画像の見方、実況モニター |
| 数値予報 | 2〜3問 | モデルの種類と格子・予報期間、データ同化、パラメタリゼーション、アンサンブル、ガイダンス | Windyで各国モデルを比べる |
| 予報の種類と技術 | 3問 | 府県予報・週間予報・降水確率・信頼度・ナウキャスト・降水短時間予報・季節予報 | 週間予報の的中率、予報の更新時刻 |
| 防災気象情報 | 3問 | 注意報・警報・特別警報の基準と指数、キキクル、記録的短時間大雨情報、顕著な大雨、竜巻注意情報 | キキクルの見方 |
| 気象災害・現象 | 2〜3問 | 台風の階級、高潮の仕組み、大雪・雪崩、雷・竜巻、熱中症(暑さ指数) | 台風データベース、WBGT計算 |
分野別に覚える数字と定義
観測|「何を・どこで・どの高さで」
| 観測 | 覚える数字・定義 |
|---|---|
| アメダス | 全国約1,300地点(約17km間隔)。降水量は全地点、気温・風・湿度は約840地点。気温は地上1.5mの通風筒、風は地上10m(10分平均)、風向は16方位 |
| 地上気象観測(気象台) | 気圧・気温・湿度・風・降水・日照・積雪に加え、雲量・雲形・視程・天気は目視または自動。快晴は雲量1以下、晴れ2〜8、くもり9以上 |
| 高層気象観測 | ラジオゾンデを国内16地点で9時・21時(00・12UTC)。気圧・気温・湿度・風の鉛直分布。ウィンドプロファイラは全国33地点で上空の風を連続観測 |
| 気象レーダー | 全国20か所。反射強度→降水強度、ドップラー速度→風。二重偏波で雨・雪・雹を区別。ビームは地球の曲率で遠方ほど高い所を見る |
| 気象衛星ひまわり | 静止軌道(赤道上空約35,800km)。可視(0.64μm・500m)、赤外(10.4μm・2km)、水蒸気(6〜7μm帯)。全球10分ごと、日本域2.5分ごと |
数値予報|モデルの使い分け
| モデル | 領域・格子 | 予報期間 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 全球モデル GSM | 全球・約13km | 5.5日〜11日 | 週間予報、台風進路、府県予報の骨格 |
| メソモデル MSM | 日本周辺・約5km | 39〜78時間 | 府県予報、大雨・大雪の量的予測 |
| 局地モデル LFM | 日本周辺・約2km | 10〜18時間 | 航空、局地的な大雨・竜巻 |
| 全球アンサンブル GEPS | 全球・約27〜40km | 18日〜 | 週間予報の信頼度、2週間気温予報、台風の不確実性 |
| 季節アンサンブル | 全球(大気海洋結合) | 数か月 | 1か月・3か月・暖候期寒候期予報 |
数値予報は「初期値を作る(データ同化)→モデルで時間積分(力学過程+物理過程のパラメタリゼーション)→出力を統計補正(ガイダンス)→予報士が判断」という流れです。解像度が細かいほど予報期間が短い、アンサンブルのスプレッドが大きいほど信頼度が低い、この2つの関係は毎回のように問われます。
予報の種類と発表時刻
| 予報 | 発表 | 内容 |
|---|---|---|
| 府県天気予報 | 5時・11時・17時 | 今日・明日・明後日の天気、降水確率(6時間ごと・1mm以上・10%刻み)、最高最低気温 |
| 週間天気予報 | 11時・17時 | 7日先まで。降水確率と信頼度A・B・C、気温の予測範囲 |
| 2週間気温予報 | 毎日14時30分 | 8〜12日先の気温を5段階で |
| 早期天候情報 | 月・木曜 | 6日先から14日先に顕著な高温・低温・大雪の可能性 |
| 1か月・3か月予報 | 毎週木曜・毎月25日ごろ | 確率予報(低い・並・高い) |
| 降水ナウキャスト | 5分ごと | 1時間先まで5分刻み。降水短時間予報は15時間先まで |
| 台風情報 | 3時間ごと(接近時1時間) | 5日先までの進路予報円、暴風警戒域 |
防災気象情報|警報級の体系
注意報→警報→特別警報の3段階に、キキクル(危険度分布)の5段階と、警戒レベル(1〜5)が対応します。大雨警報は土壌雨量指数(土砂災害)と表面雨量指数(浸水害)、洪水警報は流域雨量指数で、基準値は市町村ごとに設定されます。記録的短時間大雨情報(1時間に80〜120mm程度、数年に一度の雨)、顕著な大雨に関する気象情報(線状降水帯・2021年〜)、竜巻注意情報(有効約1時間)、特別警報(2013年8月〜、6種類)を、「いつ・何をきっかけに出るか」で整理してください。詳しくはキキクルの見方で。
気象予報士試験の定番テキスト
独学なら「一般気象学(小倉義光)」で土台を作り、「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト」で学科の穴を埋め、過去問は最低5回分を3周するのが王道です。実技は解説つきの過去問集が必須です。
図解|数値予報・防災情報・観測の「しくみ」を4枚で
暗記の多い科目ですが、しくみを図で持っておくと選択肢の正誤が判断しやすくなります。分野ごとの深掘り記事(順次公開)では、それぞれに演習問題を用意しています。
例題で確認|予報精度の指標と定義
解答・解説を見る
適中率=(予報あり実況あり+予報なし実況なし)/全体=(30+55)/100=85%。見逃し率=予報なし実況あり/全体=5/100=5%。空振り率=予報あり実況なし/全体=10/100=10%。スレットスコア=30/(30+10+5)=0.67、捕捉率=30/(30+5)=0.86。「率」の分母が全体(100)か、実況あり(35)かを問題文の定義で確認するのが最大の注意点です。
- ① 予報期間のうち30%の時間に雨が降る
- ② 対象地域の30%の面積で雨が降る
- ③ 1mm以上の降水がある確率が30%
- ④ 降水量が平年の30%になる
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降水確率は「予報期間内に1mm以上の降水がある確率」を10%刻みで表したものです。時間の割合でも面積の割合でも、雨の強さでもありません。0%でも「1mm未満の弱い雨」は降ることがあります。
- ① +20 m/s
- ② −20 m/s
- ③ 0 m/s
- ④ +10 m/s
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ドップラーレーダーが測れるのはビーム方向(レーダーと観測点を結ぶ向き)の風の成分だけです。真北の地点での西風はビームに直交するので、ドップラー速度は0になります。風がレーダーに近づく・遠ざかる成分だけが値になる、という原理をそのまま問う典型問題です。
- ① 数値予報の出力を統計的に補正して、地点ごとの気温や降水確率などを作る
- ② カルマンフィルターやニューラルネットワークが使われる
- ③ モデルの系統的な誤差(バイアス)を小さくできる
- ④ 初期値の誤差に起因するランダムな誤差も取り除ける
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ガイダンスは過去の予報と観測の関係から系統誤差(一定の傾向を持つ誤差)を補正する仕組みで、初期値の誤差やカオス的な誤差のようなランダムな誤差は取り除けません。「系統誤差は直せる、ランダム誤差は直せない」が正誤の分かれ目です。
- ① 確度が高く、予報が変わる可能性がほとんどない
- ② 確度がやや低く、予報が変わる可能性がある
- ③ 降水確率が50%以上
- ④ 警報級の現象が予想される
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信頼度は降水の有無の予報について、A(確度が高い)・B(確度がやや高い)・C(確度がやや低く、予報が変わる可能性がある)の3段階です。降水確率や警報級かどうかとは別の指標で、アンサンブル予報のばらつきと過去の適中率から決められます。
- 気象観測(地上・高層・レーダー・衛星)(10/09公開)
- 数値予報のしくみ(10/10公開)
- ガイダンス・予報精度・アンサンブル(10/11公開)
- 短期・週間予報と天気予報の表現(10/12公開)
- 短時間予報・ナウキャスト・局地現象(10/14公開)
- 警報・注意報・気象災害と防災情報(10/15公開)
一問一答クイズ|学科専門 20問(オリジナル)
当サイトのオリジナル問題です。観測5・衛星2・数値予報3・予報技術4・防災情報4・災害2の配分で、実際の出題と同じ「数字と定義の言い換え」を入れています。目標は20問中15問。
学科専門 一問一答(20問)
観測・衛星・数値予報・予報技術・防災気象情報・気象災害から出題。当サイトのオリジナル問題です。
間違えやすいポイント10選
| テーマ | ひっかけ | 正しい理解 |
|---|---|---|
| 降水確率 | 雨が降る時間や面積の割合と思う | 1mm以上の降水がある確率。「40%」は同じ予報100回のうち約40回 |
| 赤外と可視 | 赤外の白さ=雲の厚さと思う | 赤外は雲頂温度(高い雲ほど白い)、可視は反射率(厚い雲ほど白い) |
| 水蒸気画像 | 白=雲と思う | 白は上中層が湿った領域、暗域は乾燥・沈降域。雲がなくても白く見える |
| ラジオゾンデ | 毎時観測していると思う | 9時と21時の1日2回。連続観測はウィンドプロファイラ |
| アンサンブル | スプレッド大=予報精度が高いと思う | スプレッド大=初期値に敏感=信頼度が低い |
| GSMとMSM | 全球のほうが細かいと思う | 全球約13km、メソ約5km、局地約2km。細かいほど期間は短い |
| 警報の主体 | 許可事業者や自治体も出せると思う | 気象庁のみ。市町村は避難情報を出す |
| 台風の大きさ | 暴風域で決まると思う | 風速15m/s以上(強風域)の半径。大型500km、超大型800km |
| 竜巻注意情報 | 半日有効と思う | 約1時間 |
| 特別警報 | 警報より前に出ると思う | 警報の上。数十年に一度の重大な災害の危険が著しく高いとき |
学科専門は「毎日の実況」が最強の教材
- 全国実況モニター:雨雲レーダー・衛星・キキクルを同時表示。「今日の警報はどの指数で出たか」を確認する
- 今日のアメダスランキング:観測項目と地点数、極値の出方を体で覚える
- エマグラム表示ツール:ラジオゾンデの実物。9時と21時にしか実測がないことも体感できる
- METAR・TAF:航空気象の観測・予報。視程や雲底の実況を読む練習に
- 台風データベース:階級(強さ・大きさ)と進路予報円の実例
- 気象庁「予報用語」「知識・解説」「防災気象情報の体系」:定義の原文はここで
全体の計画は独学の勉強法、学科一般は学科一般の頻出分野と対策、学科が固まったら実技試験の解き方へ進んでください。
学科専門 よくある質問
学科専門の合格ラインは何問ですか?
原則15問中11問以上です。難易度により調整され、直近11回では9〜11問でした。
学科専門と学科一般はどちらが難しいですか?
暗記量は学科専門のほうが多いですが、物理の理解が必要な学科一般のほうが「分からない」と感じる人が多いです。理系は学科専門、文系は学科一般でつまずく傾向があります。
学科専門の教材は何を使えばいいですか?
市販の学科専門テキスト1冊に加えて、気象庁ホームページの「知識・解説」「予報用語」「防災気象情報の体系」「数値予報モデルの概要」を一次資料として読むのが確実です。
数値予報のモデルの数字は覚える必要がありますか?
GSM約13km・MSM約5km・LFM約2kmと、細かいほど予報期間が短いという関係は覚えてください。運用変更で数字が変わるので、最新の気象庁資料で確認します。
警報の基準は都道府県ごとですか?
市町村ごとです。大雨警報は土壌雨量指数(土砂災害)・表面雨量指数(浸水害)、洪水警報は流域雨量指数を基準にします。
学科専門の勉強にサイト内のツールは使えますか?
使えます。実況モニターで警報とキキクル、アメダスランキングで観測、エマグラムでラジオゾンデ、METAR・TAFで航空気象の実物を毎日見ると、定義が体に入ります。
- 出題は観測4・数値予報2〜3・予報技術3・防災情報3・災害2〜3
- 数字の暗記:アメダス1,300、ゾンデ16地点9時21時、GSM13km・MSM5km・LFM2km、強い台風33m/s
- 一次資料は気象庁の知識・解説と予報用語。無料で正確
- ひっかけは降水確率・赤外と可視・スプレッド・警報の主体
- 毎日の実況をサイト内ツールで「専門の目」で見る
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出典:気象業務支援センター「試験案内」「過去の試験問題」、気象庁「知識・解説」「予報用語」「数値予報モデルの概要」「防災気象情報の体系」。数値予報モデルの格子間隔・予報期間は運用変更で変わります。クイズは当サイトのオリジナルです。


