実技試験の得点の3〜4割は20〜60字の記述問題です。「知っているのに書けない」「書いたのに点がない」の原因はほぼ決まっていて、問われていることに答えていない、理由を書くべきところで現象を言い換えている、キーワードが入っていないの3つ。この記事では、採点のしくみ(キーワード加点)、記述の型「原因→現象→結果」、答案の書き方の手順、減点パターン10、そして頻出テーマ20問のオリジナル添削例(悪い答案→良い答案→キーワード)を、元気象庁職員の気象予報士がまとめました。答案を書く練習のたびに見返せる「記述の辞書」として使ってください。
- 採点は「模範解答の要素(キーワード)がいくつ入っているか」。美しい文章より、要素の数。白紙は0点、要素1つで部分点。
- 型は「原因(図の事実)→現象(しくみ)→結果(問われたこと)」。「〜のため。」で締める。
- 「理由を述べよ」に現象の言い換えを書かない。「雨が降るから雨」「発達するから発達」は0点。
- 字数の8〜10割を使う。「40字程度」なら32〜44字。極端に短い答案は要素が足りない。
- 用語は天気図に書いてある言葉で。トラフ・暖気移流・湿数・相当温位・上昇流など、問題文と資料の用語をそのまま使うのが最も安全。
採点のしくみ|キーワードの数で決まる
気象業務支援センターは正答例を公表していますが、配点と採点基準は非公表です。ただし、過去問の正答例を並べると「〜のため、〜となり、〜する」の形で3〜4つの要素からできていることが分かり、採点者はこの要素の有無で点をつけていると考えるのが自然です。だから、答案に必要なのは「要素をもれなく入れる」ことで、逆に要素が1つしかない答案は、どれだけ長く書いても1点です。合格基準(実技70%・調整で60%台)と実技の配点の目安は合格基準と配点で。
記述の型|原因→現象→結果
| 問い方 | 答え方の型 | 例 |
|---|---|---|
| 〜の理由を述べよ | 原因→しくみ→「〜のため。」 | 「トラフが西側にあり正渦度移流で上昇流が強まるため。」 |
| 〜の根拠を述べよ | 図の事実(数値・位置)→それが意味すること | 「850hPaで湿数3℃以下の領域が低気圧の東側に広がっており、雲域に対応するため。」 |
| 〜の特徴を述べよ | 位置・形・値を具体的に(方角・hPa・℃) | 「低気圧の南東側に幅約200kmの帯状の降水域が南西から北東にのびている。」 |
| 〜がどう変化するか述べよ | 時刻を追って「〜から〜に変わる」 | 「風向は南寄りから北西に変わり、気温は約5℃下がる。」 |
| 〜の違いを述べよ | A は〜、B は〜、と対比で | 「Aは層状の雲で広範囲の弱い雨、Bは積乱雲で局地的な強い雨。」 |
| 〜が予想される現象を述べよ | 現象名+根拠を1つ | 「上空の寒気で不安定となり、雷を伴う強い雨。」 |
答案を書く手順|設問→図→要素→組み立て
- 設問を分解する:「何について」「何を(理由/根拠/特徴/変化)」「何字で」「図はどれを使うか」に印をつける。「2つ述べよ」「〜の観点から」は必ず数と観点を守る。
- 指定された図から事実を拾う:数値(気温・湿数・渦度・風向風速)、位置(低気圧の東西南北)、形(帯状・にんじん状)。事実を2〜3個メモする。
- しくみを1つ当てる:上昇流・暖気移流・不安定・滑昇・摩擦・断熱変化・潜熱など、事実と結果をつなぐ気象学の言葉を1つ選ぶ。
- 「原因→現象→結果」の順に並べ、字数の8〜10割で書く。主語を省かない(「低気圧が」「暖気が」)。「〜のため。」「〜となる。」で締める。
- 見直しは「問われたことに答えたか」だけ。理由を聞かれて現象を書いていないか、指定の図を使ったか、数を守ったか。
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減点パターン10|点がつかない答案の共通点
| 減点パターン | 例 | 直し方 |
|---|---|---|
| 現象の言い換え | 理由を問われて「雨が降るから」 | 「〜のため」の前にしくみを入れる |
| 名称だけ | 「フェーン現象だから」「危険半円だから」 | 名称の中身(減率の違い・風の足し合わせ)を書く |
| 指定の図を使っていない | 500hPaの図を使えと言われて地上の話 | 設問に「〜図から」とあれば必ずその図の言葉を入れる |
| 数の指定を守らない | 「2つ述べよ」で1つ | 2つを「〜と、〜。」で並列に |
| 方角・位置がない | 「トラフがある」 | 「低気圧の西側にトラフがある」 |
| 数値がない | 「気温が低い」 | 「850hPaの気温が−6℃以下」 |
| 字数が半分以下 | 40字指定で15字 | 要素が足りない証拠。事実を1つ足す |
| 字数オーバー | 40字指定で60字 | 解答欄からはみ出した部分は採点されない |
| 因果が逆 | 「上昇流があるからトラフがある」 | トラフ→渦度移流→上昇流の順 |
| あいまいな語 | 「悪天候」「天気が悪化」 | 「雷を伴う強い雨」「暴風」など現象名で |
添削例20|頻出テーマの「悪い答案→良い答案」
以下はすべて当サイトのオリジナル設問です(過去問の転載ではありません)。実際の試験で繰り返し問われるテーマを選び、悪い答案の何が足りないか→良い答案→採点されるキーワードの順に示します。良い答案はそのまま覚えるのではなく、キーワードを自分の言葉でつなぐ練習に使ってください。天気図の読み方は天気図の読み方、エマグラムはエマグラム問題の解き方、高層天気図は高層天気図の見方を参照。
→ 結果を言い換えただけで根拠になっていない。500hPaの図を使うよう指定されているのに上空に触れていない。
→ 「近づく→雨」は現象の言い換え。「暖気が寒気の上を滑昇する」というしくみが抜けている。
→ 風向の変化(南寄り→北西)と気圧の変化(下降から上昇へ)が抜けている。「変化を述べよ」は3要素すべてを書く。
→ 現象は合っているが、根拠(積乱雲が次々に発生している)がなく、突風・雷にも触れていない。
→ 理由になっていない。摩擦力によりコリオリ力とのつり合いが崩れることを書く。
→ 湿数3℃以下=飽和に近い=雲域、が言えていない。雨とは限らない。
→ それは絶対不安定の判定。対流不安定は「相当温位が高度とともに減少」で判定する。
→ 寒気が「どこに」「なぜ」あるかが必要。北東風・地上付近の寒気・850hPa気温・蒸発冷却の要素を入れる。
→ 名称を書いただけで理由になっていない。
→ 風だけでは雪の理由にならない。寒気+海面からの熱と水蒸気の供給+山地での上昇の3点。
→ 上空の寒気の効果は「不安定化」。地上気温の低下ではない。
→ 名称ではなく、湿潤断熱と乾燥断熱の減率の違いを書く。
→ 季節名は理由にならない。南北の気団の勢力が拮抗していることを書く。
→ 「持続的な流入」「収束」「積乱雲が同じ場所を通る」の要素が必要。
→ 低気圧の接近だけでなく、暖湿気の流入と上昇流、上層雲から雲が広がる順序を書く。
→ 逆転層の「上で露点が急に下がる(乾燥)」が沈降性の根拠。前線性と区別する。
→ 放射冷却の条件(晴れ・弱風・湿潤)と、地表付近が露点まで冷えることを書く。
→ 閉塞→暖気が地上から切り離される→傾圧性(温度差)が小さくなる、の順で書く。
→ 暖気移流→上昇流(ω負)→凝結、のつながりを書く。
→ 「2つ」と指定されたら吸い上げと吹き寄せの両方を必ず書く。
気象予報士試験の定番テキスト
独学なら「一般気象学(小倉義光)」で土台を作り、「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト」で学科の穴を埋め、過去問は最低5回分を3周するのが王道です。実技は解説つきの過去問集が必須です。
頻出の言い回し|そのまま使える表現集
| 場面 | 使える表現 |
|---|---|
| 上昇流の原因 | 「トラフ前面の正渦度移流により」「暖気移流に伴い」「前線面に沿って滑昇し」「収束して上昇し」「地形により強制上昇し」 |
| 不安定 | 「上空に寒気が流入し成層が不安定となり」「下層に暖湿気が流入し」「相当温位が高度とともに減少し対流不安定となり」 |
| 雲・降水 | 「層状の雲が広がり」「積乱雲が発達し」「短時間に強い雨」「雷を伴う」「降ひょう・突風のおそれ」 |
| 気温 | 「寒気移流により気温が低下し」「放射冷却で冷え込み」「乾燥断熱減率で昇温し」「蒸発による冷却で」 |
| 風 | 「風向が南寄りから北西に変わり」「気圧傾度が大きくなり風が強まり」「摩擦により等圧線を横切って」 |
| 前線・低気圧 | 「寒冷前線が温暖前線に追いつき閉塞し」「暖気が地上から切り離され」「傾圧性が大きく」「南北の温度差を運動エネルギーに変え」 |
| 締め方 | 「〜のため。」「〜と考えられる。」「〜が予想される。」「〜に対応している。」 |
練習法|「要素を数える」自己採点
- 過去問の記述を時間を計って書く(1問2〜3分)。空欄にしない。
- 正答例を「/」で要素に区切り(例:「暖気が寒気の上を/滑昇し/層状の雲が/広範囲に」)、自分の答案に何個入っているか数える。
- 足りなかった要素を、この記事の「キーワード」の形でノートに書き足す。20テーマで200個ほどになる。
- 同じ設問を1週間後にもう一度。要素がそろうまで繰り返す。書く量より「要素を思い出せるか」。
- 本番では記述に1問3分以上かけない。迷ったら要素を2つ書いて次へ進み、最後に戻る。時間配分は実技の解き方・時間配分。
記述問題についてよくある質問
Q. 記述問題は何字くらい書けばいいですか?
A. 指定字数の8〜10割です。「40字程度」なら32〜44字が目安。解答欄からはみ出した部分は採点されないので、指定字数を超えないように要素を絞ります。
Q. 模範解答と違う書き方でも点はもらえますか?
A. もらえます。採点は模範解答の要素(キーワード)が入っているかで決まると考えられ、言い回しが違っても要素があれば得点します。逆に模範解答と似た文でも要素が抜けていれば点になりません。
Q. 理由を問われたときに何を書けばいいですか?
A. 「図から読み取れる事実→気象学的なしくみ→問われたこと」の順です。「雨が降るから」のように現象を言い換えただけの答案は0点で、上昇流・暖気移流・不安定などのしくみを必ず入れます。
Q. 専門用語は使ったほうがいいですか?
A. 天気図や問題文に出てくる用語(トラフ・湿数・相当温位・渦度移流など)はそのまま使うのが最も安全です。用語の意味を間違えて使うと減点されるので、意味があいまいな用語は避けます。
Q. 時間が足りなくて記述が白紙になります。
A. 記述は1問3分以内と決め、迷ったら要素を2つ書いて次へ進みます。白紙は0点ですが、要素1つで部分点がつきます。時間配分は穴埋め・計算を先に終わらせてから記述にまとめて取り組む方法もあります。
Q. 記述の練習はどのくらい必要ですか?
A. 過去問10回分(20題)の記述をすべて書き、要素を数える自己採点を2周すると、頻出テーマの要素はほぼ覚えられます。この記事の添削例20で要素を先に覚えておくと、過去問演習の効率が上がります。
- 採点は要素(キーワード)の数。白紙0点、要素1つで部分点、そろえば満点。
- 型は原因(図の事実)→現象(しくみ)→結果(問われたこと)、「〜のため。」で締める。
- 現象の言い換え・名称だけ・指定の図を使わない・数を守らないが4大減点。
- 字数の8〜10割、方角・数値を入れる、用語は天気図の言葉で。
- 添削例20のキーワードを覚え、過去問は「要素を数える」自己採点で2周。
出典:気象業務支援センター「気象予報士試験 過去の試験問題・正答例」、気象庁「予報用語」「天気図の見方」。添削例の設問・答案は当サイトのオリジナルで、採点基準は正答例の構造からの推定です。
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