天気のことわざの解説記事は世の中にたくさんありますが、そのほとんどは「こういう仕組みだから当たると言われています」で終わっています。では、実際に当たるのでしょうか。
このページでは、気象庁が公開している観測データを使って、10のことわざを実際に数えてみました。当たったものもあれば、はっきり外れたものもあります。集計の定義とスクリプトはすべて公開しているので、同じ手順で誰でも再現できます。
使ったデータと定義
| 観測地点 | 福岡管区気象台(観測所番号47807)/東京(47662) |
|---|---|
| 期間 | 1961年1月1日〜2025年12月31日 各23,741日 |
| 出典 | 気象庁「過去の気象データ検索」の日別値 |
| 「雨の日」の定義 | 日降水量1.0mm以上(気象庁の降水日数と同じ定義) |
| 「晴れの日」の扱い | 本ページでは「雨が降らなかった日」を指します。雲量による晴・曇の区別はしていません |
| 日平均気温 | 日最高気温と日最低気温の平均で代用しています |
検証1 天気は本当に西から変わるのか
「夕焼けは晴れ」「朝虹は雨」「秋の夕焼け鎌を研げ」――多くのことわざが前提にしているのは、日本付近の天気は西から東へ動くという一点です。この前提そのものを確かめました。
方法はこうです。東京の「明日、雨が降らない確率」を、①何も知らない場合、②東京の今日の天気を知っている場合、③福岡(東京の西、約880km)の今日の天気だけを知っている場合、の3通りで比べます。
| 知っている情報 | 東京で明日 雨が降らない確率 | 日数 |
|---|---|---|
| 何も知らない(基準) | 72.4% | 23,740 |
| 東京が今日 雨なし | 78.7% | 17,194 |
| 福岡が今日 雨なし | 80.6% | 16,355 |
| 福岡が今日 雨 | 54.4% | 7,385 |
| 東京も福岡も今日 雨なし | 84.6% | 12,976 |
| 東京は雨なしだが、福岡は雨 | 60.6% | 4,218 |
結果:880km西にある福岡の今日の天気は、東京自身の今日の天気よりも、東京の明日をよく当てました(80.6% 対 78.7%)。さらに決定的なのは最後の行です。東京がいくら晴れていても、福岡が雨なら、東京の明日が雨にならない確率は60.6%まで落ちます。基準の72.4%を12ポイントも下回りました。
つまり、足もとの空より、西の空を見るほうが情報量が多い。「夕焼けは晴れ」ということわざが本当に見ているのは夕焼けそのものではなく、「西の空に雲がない」という事実でした。データはことわざの前提を支持しています。
検証2 一雨一度――雨のたびに本当に1℃下がるのか
秋の雨が降るたびに気温が下がっていく。この「一雨一度」を数字にするには、ひとつ気をつけることがあります。秋はもともと日ごとに気温が下がっていく季節なので、雨のあとに気温が下がったからといって、それが雨のせいとは限りません。
そこで、10mm以上の雨が降った日の「前3日間の平均最高気温」と「後3日間の平均最高気温」の差を出したうえで、同じ計算を全部の日について行った値(=季節の進み方そのもの)を差し引きました。残ったものが、雨そのものの効果です。
| 月 | 雨のあとの変化 | 季節の進み方 | 差引=雨の効果 | 雨が降らなかった日 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | -1.35℃ | -0.14℃ | -1.20℃ | +0.40℃ |
| 2月 | -0.76℃ | +0.43℃ | -1.19℃ | +0.48℃ |
| 3月 | -0.82℃ | +0.60℃ | -1.42℃ | +0.55℃ |
| 4月 | -1.11℃ | +0.65℃ | -1.76℃ | +0.61℃ |
| 5月 | -0.92℃ | +0.45℃ | -1.37℃ | +0.49℃ |
| 6月 | -0.20℃ | +0.44℃ | -0.64℃ | +0.30℃ |
| 7月 | +0.16℃ | +0.52℃ | -0.37℃ | +0.15℃ |
| 8月 | -0.64℃ | -0.24℃ | -0.40℃ | +0.17℃ |
| 9月 | -1.37℃ | -0.67℃ | -0.70℃ | +0.26℃ |
| 10月 | -1.72℃ | -0.67℃ | -1.05℃ | +0.27℃ |
| 11月 | -2.11℃ | -0.83℃ | -1.29℃ | +0.46℃ |
| 12月 | -2.24℃ | -0.51℃ | -1.74℃ | +0.43℃ |
結果:季節の進み方を差し引いた「雨そのものの効果」は、年間を通じておおむね1℃前後でした。ことわざの数字とみごとに一致します。
もうひとつ面白いのは、体感との関係です。10月から12月にかけては、雨の効果に季節の進み方が上乗せされるため、実際に体で感じる下がり方は2℃前後(11月-2.11℃、12月-2.24℃)になります。「一雨一度」と言われながら、秋の終わりに体感として「もっと下がった気がする」のは錯覚ではありません。
逆に、雨が降らなかった日の翌日は0.2〜0.6℃上がっています。夏(7月-0.37℃、8月-0.40℃)に効果が小さいのは、太平洋高気圧に覆われていて、雨が降っても気団そのものが入れ替わらないためです。
検証3 雷三日――雷は本当に三日続くのか
雷が鳴った日から3日は雷に注意せよ、ということわざです。雷をもたらすのは上空の寒気(気圧の谷)で、これがゆっくり通過するため数日にわたって不安定が続く、というのが説明です。福岡の6〜9月、2001〜2025年の3,050日について、天気概況に「雷」の記載がある日を数えました。
| 条件 | 雷が観測される確率 | 基準との比 |
|---|---|---|
| 基準(6〜9月の平均) | 15.7% | 1.0倍 |
| 雷の日の翌日 | 40.1% | 2.6倍 |
| 雷の日の2日後 | 28.2% | 1.8倍 |
| 雷の日の3日後 | 23.5% | 1.5倍 |
| 雷でない日の翌日 | 11.2% | 0.7倍 |
結果:はっきり当たっていました。雷の日の翌日にまた雷が鳴る確率は40.1%。雷が鳴らなかった日の翌日(11.2%)と比べると3.6倍です。そして注目すべきは減り方で、翌日2.6倍 → 2日後1.8倍 → 3日後1.5倍と、ちょうど3日かけて基準に戻っていきます。「三日」という数字まで合っていました。
これは気圧の谷が日本付近を通過するのに要する時間とよく対応しています。ことわざの作者は、上空の寒気を見たことはなかったはずですが、その滞在時間を正確に数えていたことになります。
関連:雷三日の意味は?
検証4 暑さ寒さも彼岸まで
春分・秋分を境に、寒さも暑さも和らぐ。1991〜2020年の30年について、彼岸の前後で「寒い朝」と「暑い日」がどれだけ減るかを10日刻みで数えました。
春の彼岸(3月21日ごろ)――最低気温5℃未満の朝
| 期間 | 福岡 | 東京 |
|---|---|---|
| 2月20日〜 | 46.8% | 71.8% |
| 3月1日〜 | 34.1% | 60.4% |
| 3月11日〜 | 28.7% | 46.3% |
| 3月21日〜(彼岸) | 11.3% | 27.7% |
| 3月31日〜 | 5.0% | 9.7% |
| 4月10日〜 | 0.7% | 2.3% |
秋の彼岸(9月23日ごろ)――最高気温30℃以上の日
| 期間 | 福岡 | 東京 |
|---|---|---|
| 9月3日〜 | 48.3% | 46.0% |
| 9月13日〜 | 24.0% | 22.3% |
| 9月23日〜(彼岸) | 7.7% | 6.0% |
| 10月3日〜 | 2.0% | 2.0% |
| 10月13日〜 | 0.0% | 0.0% |
結果:春も秋も、彼岸の10日間を境にはっきり折れていました。春は28.7%→11.3%へ、秋は24.0%→7.7%へ、いずれも3分の1以下に減っています。福岡でも東京でも同じ形になりました。
ただし、ひとつ面白い事実があります。福岡の平年の日平均気温は春分(3月20日)が12.0℃、秋分(9月23日)が23.6℃で、同じ「彼岸」でありながら11.6℃も違います。太陽高度は同じなのに、なぜこれほど違うのか――地面と海が暖まったり冷えたりするのに時間がかかるためです。「暑さ寒さも彼岸まで」は気温そのものではなく、季節が折り返す転換点を言い当てたことわざでした。
検証5 春に三日の晴れなし
春は晴れが3日と続かない。福岡と東京について、「雨が降らなかった日」を起点に、そこから3日続けて雨が降らない確率を月別に数えました。
| 月 | 福岡 | 東京 | 月 | 福岡 | 東京 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 56.0% | 79.1% | 7月 | 62.4% | 62.0% |
| 2月 | 51.9% | 69.2% | 8月 | 60.6% | 65.1% |
| 3月 | 51.7% | 54.3% | 9月 | 57.6% | 53.5% |
| 4月 | 49.8% | 49.5% | 10月 | 67.2% | 55.8% |
| 5月 | 57.8% | 52.5% | 11月 | 57.6% | 67.7% |
| 6月 | 52.0% | 45.3% | 12月 | 54.5% | 79.2% |
結果:福岡・東京とも、4月が年間で最低でした。福岡49.8%、東京49.5%。つまり4月は、晴れの日を起点にしても、3日続く確率がコインの表裏と同じくらいしかありません。3月・5月も低く、春全体が「続かない」季節です。
東京で6月(45.3%)のほうが低いのは梅雨のためです。梅雨を別扱いにすれば、「春に三日の晴れなし」は年間で最も的確な季節の描写だといえます。前日との気温差でも4月が年間最大の2.62℃(福岡)で、春は天気も気温も落ち着かない季節でした。
検証6 女心と秋の空――秋は本当に変わりやすいのか
ここからは、ことわざが外れた例です。「秋の空は変わりやすい」という前提を確かめるため、前日と天気(雨か、雨でないか)が入れ替わった割合を月別に数えました。この値が高いほど、天気がころころ変わる月ということになります。
| 月 | 福岡 切替率 | 東京 切替率 | 福岡 前日との気温差 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 35.5% | 18.7% | 2.06℃ |
| 2月 | 37.5% | 26.4% | 2.29℃ |
| 3月 | 37.5% | 36.3% | 2.59℃ |
| 4月 | 37.7% | 38.7% | 2.62℃ |
| 5月 | 32.6% | 36.6% | 2.44℃ |
| 6月 | 32.8% | 38.9% | 2.05℃ |
| 7月 | 30.6% | 31.0% | 1.69℃ |
| 8月 | 31.8% | 29.3% | 1.47℃ |
| 9月 | 33.0% | 33.0% | 1.65℃ |
| 10月 | 27.0% | 34.8% | 1.70℃ |
| 11月 | 33.6% | 27.4% | 2.03℃ |
| 12月 | 37.8% | 19.2% | 2.10℃ |
結果:秋は、変わりやすいどころか年間で最も安定した季節でした。福岡で天気の切替率が最低なのは10月の27.0%。前日との気温差も、4月の2.62℃に対して10月は1.70℃しかありません。いちばん変わりやすいのは、福岡では12月(37.8%)と4月(37.7%)、東京では6月(38.9%)と4月(38.7%)。冬型の気圧配置が続く福岡の12月と、梅雨の東京の6月という特殊事情を除けば、春がいちばん落ち着かない季節ということになります。
なぜ秋が「変わりやすい」と感じられるのでしょうか。ひとつは秋が二相からできていることです。秋雨前線が停滞する9月(切替率33.0%)と、移動性高気圧に覆われる10〜11月では性格がまるで違います。もうひとつは、秋晴れの気持ちよさとの落差でしょう。抜けるような青空が続いたあとの雨は、記憶に強く残ります。
この言葉のもとは江戸時代の「男心と秋の空」で、恋の変わりやすさを詠んだものでした。気象の観察から生まれたのではなく、文学的な比喩が先にあったと考えると、データと合わないのも納得がいきます。
検証7 三寒四温――7日の周期は実在するのか
3日寒い日が続き、次の4日は暖かい。この7日周期が実在するなら、日々の気温の平年差に7日のリズムが現れるはずです。福岡の1961〜2025年について、日平均気温の平年差の自己相関(何日か前の値とどれだけ似ているか)を計算しました。7日周期があるなら、ラグ7日のところに山ができます。
| ラグ | 1日 | 2日 | 3日 | 4日 | 5日 | 6日 | 7日 | 8日 | 10日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 冬(12〜2月) | 0.73 | 0.45 | 0.30 | 0.22 | 0.19 | 0.17 | 0.16 | 0.14 | 0.13 |
| 春(3〜5月) | 0.66 | 0.35 | 0.19 | 0.13 | 0.12 | 0.12 | 0.12 | 0.12 | 0.14 |
結果:7日のところに山はありませんでした。値はなめらかに減っていくだけです。つまり「きっかり7日ごとに寒暖が入れ替わる」という規則的な周期は、統計的には存在しません。
ただし、これで終わりではありません。別の見方として、気温の平年差の「山から次の山まで」の間隔を数えてみると――
| 季節 | 平均間隔 | 中央値 | 回数 |
|---|---|---|---|
| 冬(12〜2月) | 6.46日 | 6日 | 806 |
| 春(3〜5月) | 6.02日 | 6日 | 883 |
| 夏(6〜8月) | 6.09日 | 6日 | 885 |
| 秋(9〜11月) | 6.26日 | 6日 | 835 |
寒暖の波の平均間隔は冬が6.46日で、四季のなかで最も長いという結果になりました。三寒四温の「7日」に最も近いのは、たしかに冬です。ただし内訳を見ると2日から12日以上までばらついており(冬の分布は5日131回、6日119回、7日109回、8日78回…)、規則的とは言えません。
結論は「○ 条件つき」としました。寒暖の波がおよそ1週間の間隔で来ること、それが冬にやや長くなることは事実です。しかし「三日寒くて四日暖かい」という規則性を期待すると外れます。もともとこの言葉は中国東北部や朝鮮半島の冬の気候を指したもので、日本では冬本番よりも、低気圧と高気圧が交互に通る2月下旬から3月にかけて使うほうが実態に合います。
検証8 秋の日は釣瓶落とし
これは観測データではなく計算で確かめられます。福岡(北緯33.58度、東経130.40度)の日の入り時刻を、太陽位置の計算式から1年分求め、10日あたりどれだけ変化するかを見ました。
| 月 | 月初の日の入り | 10日あたりの変化 | 1か月あたり | 昼の長さの変化 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 17:21 | +9.3分 | +28分 | +1.17分/日 |
| 2月 | 17:49 | +8.9分 | +27分 | +1.90分/日 |
| 3月 | 18:15 | +7.6分 | +23分 | +2.09分/日 |
| 4月 | 18:38 | +7.5分 | +23分 | +1.95分/日 |
| 5月 | 19:01 | +6.8分 | +21分 | +1.38分/日 |
| 6月 | 19:23 | +2.2分 | +7分 | +0.23分/日 |
| 7月 | 19:33 | -5.5分 | -17分 | -1.05分/日 |
| 8月 | 19:19 | -11.7分 | -35分 | -1.80分/日 |
| 9月 | 18:45 | -13.7分 | -41分 | -2.05分/日 |
| 10月 | 18:04 | -11.2分 | -34分 | -1.98分/日 |
| 11月 | 17:27 | -4.2分 | -13分 | -1.46分/日 |
| 12月 | 17:10 | +3.3分 | +10分 | -0.27分/日 |
結果:9月が年間で最も速く、10日で13.7分、1か月で41分も日の入りが早まります。夏至のころの6月(1か月で7分)と比べると、実に6倍近い速さです。最も急なのは9月14日を起点とする10日間で、-13.9分でした。
これは体感が正しかったという話です。夏至や冬至の前後では、太陽の南中高度がほとんど変わらないため、日の入り時刻も動きません。ところが春分・秋分の前後では、太陽が赤道を横切る速度が最大になり、昼の長さが1日あたり2分ずつ変化します。「急に暗くなるのが早くなった」という秋の感覚は、気のせいではなく天文学的な事実でした。
ちなみに福岡の日の入りは、夏至(6月21日)が19時32分、冬至(12月22日)が17時14分。その差は2時間18分あります。
検証9 梅雨明け十日
梅雨が明けてからの10日間は、安定した晴天が続く。九州北部の平年の梅雨明けは7月19日ごろです。福岡の1991〜2025年について、暦日ごとの「雨が降らなかった日の割合」を7日移動平均で見ました。
| 日付 | 7/10 | 7/15 | 7/19 | 7/22 | 7/25 | 7/28 | 7/31 | 8/3 | 8/5 | 8/10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 無降水日率 | 55% | 61% | 71% | 75% | 76% | 78% | 82% | 79% | 75% | 69% |
結果:梅雨明けの平年日(7月19日)を境に、雨の降らない日の割合が一気に上がっていました。7月10日の55%から、7月31日には82%へ。この82%は、1年365日のうちトップ5に入る値です(1位は10月12〜13日の84%)。
さらに対照的なのが梅雨の末期で、福岡で1年のうち最も雨が降りやすいのは6月22日〜28日ごろの47%。同じ1か月のあいだに、無降水日率が47%から82%まで、35ポイントも跳ね上がることになります。
梅雨明け直後に晴天が続くのは、太平洋高気圧が上空まで厚く日本を覆うためです。この時期の高気圧は背が高く、下降気流が強いので雲ができません。同時に、この10日間は1年で最も熱中症の危険が高い期間でもあります。
検証10 二百十日は本当に「特異日」なのか
立春から数えて210日目、9月1日ごろ。稲の開花期と台風シーズンが重なるため、農家の厄日として暦に組み込まれてきました。では、実際にこの日の前後に荒天が集中しているのでしょうか。福岡の1961〜2025年について、日降水量50mm以上(大雨)の出現率を暦日ごとに集計し、11日移動平均で滑らかにしました。
| 日付 | 6/28 | 7/1 | 8/20 | 8/31 | 9/1 | 9/5 | 9/13 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 大雨の出現率 | 9.7% | 9.8% | 4.2% | 3.2% | 3.4% | 2.4% | 2.9% |
結果:9月1日前後に、大雨のピークはありませんでした。年間で最も大雨が出やすいのは7月1日〜3日ごろの9.8%で、これは梅雨末期にあたります。二百十日の3.4%は、その3分の1しかありません。
もっとも、これで二百十日が無意味だと結論するのは早すぎます。ことわざが警戒しているのは大雨よりも強風による稲の倒伏で、これは今回の集計では測れていません。また特定の1日ではなく「このころから台風の季節に入る」という季節の区切りとして機能してきた面もあります。実際、統計上は台風の日本接近・上陸は8月と9月に集中しています。
判定は「△ 言い伝え」としました。暦としての意味は大きいものの、9月1日という特定の日を警戒する統計的な根拠は見つかりません。台風の警戒は暦ではなく、実際の進路情報で行うべきです。
おまけ 今日の日照は、明日をどれだけ予言するか
「夕焼けは晴れ」の核心は「今日晴れているなら明日も晴れやすい」という天気の持続性です。福岡の2001〜2025年、6〜9月について、日照時間で分けて翌日を見ました。
| 今日の日照時間 | 翌日に雨が降らない確率 | 日数 |
|---|---|---|
| 基準(6〜9月平均) | 66%前後 | 3,050 |
| 8時間以上(快晴に近い) | 82.8% | 1,132 |
| 1時間以下(ほぼ曇天) | 40.3% | 578 |
月別に見ると、9月の「日照8時間以上→翌日 雨なし」は83.2%(基準66.8%)。「秋の夕焼け鎌を研げ」――明日は晴れるから稲刈りの支度をせよ、という判断は、16ポイントぶんの根拠があったことになります。
一方で、日照が1時間以下の日の翌日は40.3%まで落ちます。ことわざが「晴れ」と「雨」の両方について言い伝えられてきたのは、どちらの方向にも情報があったからでしょう。
同じ検証を自分でやる
ここまでの集計は、すべて公開データと数十行のコードで再現できます。気象庁の過去の気象データ・ダウンロードから、地点・期間・項目(日最高気温/日最低気温/降水量/日照時間/天気概況)を選んでCSVを取得し、下のスクリプトを実行してください。
地点を自分の住んでいる街に変えれば、その土地のことわざの的中率が出ます。同じことわざでも、日本海側と太平洋側ではまるで違う結果になるはずです。
#!/usr/bin/env python3
# -*- coding: utf-8 -*-
'''天気のことわざ検証スクリプト
気象庁「過去の気象データ・ダウンロード」から取得した日別CSVを読み、
このページの各検証を再現します。
必要な列: 年月日 / 最高気温(℃) / 最低気温(℃) / 降水量の合計(mm) / 日照時間(h) / 天気概況(昼)
取得元: https://www.data.jma.go.jp/risk/obsdl/
'''
import pandas as pd, numpy as np
RAIN = 1.0 # 「雨の日」の定義(mm)気象庁の降水日数と同じ
def load(path):
df = pd.read_csv(path, encoding='cp932', skiprows=5)
df.columns = ['date','prec','tmax','tmin','sun','wx'][:len(df.columns)]
df['date'] = pd.to_datetime(df['date'])
df['prec'] = pd.to_numeric(df['prec'], errors='coerce').fillna(0.0)
df['rain'] = df['prec'] >= RAIN
df['month'] = df['date'].dt.month
return df.sort_values('date').reset_index(drop=True)
# ---- 検証1: 天気は西から変わるか(2地点の日別データが必要)----
def west_to_east(west, east):
m = west[['date','rain']].rename(columns={'rain':'w'}).merge(
east[['date','rain']].rename(columns={'rain':'e'}), on='date')
m['e_next'] = m['e'].shift(-1)
m = m.dropna()
base = (~m['e_next'].astype(bool)).mean()
self_ = (~m.loc[~m['e'], 'e_next'].astype(bool)).mean()
west_ = (~m.loc[~m['w'], 'e_next'].astype(bool)).mean()
westR = (~m.loc[ m['w'], 'e_next'].astype(bool)).mean()
print(f'基準 {base:.3f} / 東の今日 {self_:.3f} / 西の今日 {west_:.3f} / 西が雨 {westR:.3f}')
# ---- 検証2: 一雨一度(季節トレンドを差し引く)----
def one_rain(df, mm=10.0, win=3):
t = df['tmax'].to_numpy(dtype=float)
diff = np.full(len(df), np.nan)
for i in range(win, len(df)-win):
diff[i] = t[i+1:i+1+win].mean() - t[i-win:i].mean()
df = df.assign(diff=diff)
rain = df[df['prec'] >= mm].groupby('month')['diff'].mean()
allday = df.groupby('month')['diff'].mean() # 季節進行そのもの
out = pd.DataFrame({'雨後': rain, '全日': allday, '雨の効果': rain - allday})
print(out.round(2))
# ---- 検証3: 雷三日 ----
def thunder(df):
th = df['wx'].fillna('').str.contains('雷')
base = th.mean()
nxt = th.shift(-1); d2 = th.shift(-2); d3 = th.shift(-3)
print(f'雷日の割合 {base:.3f}')
for k, s in [('翌日', nxt), ('2日後', d2), ('3日後', d3)]:
print(f' 雷の日の{k}も雷: {s[th].mean():.3f}')
print(f' 雷でない日の翌日が雷: {nxt[~th].mean():.3f}')
# ---- 検証4: 春に三日の晴れなし / 天気の切り替わり ----
def spring(df):
dry = ~df['rain']
three = dry & dry.shift(-1) & dry.shift(-2)
print('3日連続で雨が降らない確率(月別)')
print((three[dry].groupby(df['month'][dry]).mean()*100).round(1))
switch = (df['rain'] != df['rain'].shift(-1))
print('前日と天気が入れ替わる割合(月別)')
print((switch.groupby(df['month']).mean()*100).round(1))
# ---- 検証5: 三寒四温(自己相関)----
def sankan(df, months=(12,1,2)):
df = df.copy()
df['tm'] = (df['tmax'] + df['tmin']) / 2
clim = df.groupby([df['date'].dt.month, df['date'].dt.day])['tm'].transform('mean')
df['anom'] = df['tm'] - clim
s = df[df['month'].isin(months)]['anom'].dropna().to_numpy()
s = s - s.mean()
for k in range(1, 13):
r = (s[:-k] * s[k:]).mean() / s.var()
print(f' ラグ{k:2d}日: {r:+.2f}')
if __name__ == '__main__':
fukuoka = load('fukuoka_daily.csv')
tokyo = load('tokyo_daily.csv')
west_to_east(fukuoka, tokyo)
one_rain(fukuoka); thunder(fukuoka); spring(fukuoka); sankan(fukuoka)
※ CSVの列構成は取得時の選択項目によって変わります。df.columns の指定はお使いのファイルに合わせて調整してください。
検証してみて分かったこと
10のことわざを数えてみて、はっきりした傾向がありました。
当たったのは、目に見えるものがそのまま気象要素になっているものです。雷三日、一雨一度、暑さ寒さも彼岸まで、春に三日の晴れなし、梅雨明け十日、秋の日は釣瓶落とし。これらはいずれも、観測できる量をそのまま数えていました。
外れたのは、比喩が先にあったものです。女心と秋の空は、気象の観察ではなく恋の比喩でした。二百十日は、暦という制度が先にありました。
そして最も印象的だったのは、「三日」「一度」といった数字の精度です。雷の影響はちょうど3日で消え、雨の効果はほぼ1℃でした。温度計もレーダーもなかった時代に、これだけの精度で数えていたという事実のほうが、ことわざが当たるかどうかよりも驚きだったというのが、集計をやってみた正直な感想です。
データと出典について
このページの統計値は、気象庁が公開する過去の気象データ(福岡管区気象台・東京 1961〜2025年)をもとに、当サイトが独自に集計したものです。日の入り時刻はNOAA(米国海洋大気庁)の太陽位置計算式にもとづく計算値です。集計の手順と定義は検証ページに全文を掲載しています。
出典:気象庁「過去の気象データ検索」/気象庁「生物季節観測」/国立天文台「暦要項」
当サイトは気象庁が発表する情報の解説を行うもので、独自の予報を発表するものではありません。気象警報・注意報や最新の予報は、かならず気象庁の発表をご確認ください。
