気象予報士試験の合格率は、直近10回の平均で5.3%、第65回(2026年1月)は5.3%でした。第1回(1994年)の18.0%から下がり続け、2000年代以降はほぼ4〜6%の帯に収まっています。ただし「合格率5%=20人に1人しか受からない超難関」と受け取るのは少し違います。この試験は学科2科目と実技を同じ日にまとめて通す必要があり、受験者の約4割は学科免除を使いながら複数回かけて合格していきます。この記事では、合格率がなぜ5%で止まるのか、どの科目で落ちるのか、合格基準がどう調整されるのかを、第1回から第65回までの全データで分解します。

数字だけ見ると医師や司法試験並みに見えますが、中身は「独学で2〜3回かけて受かる人が多い、積み上げ型の試験」です。私自身、気象庁で働いた経験と予報士の勉強の両方から、この試験の難しさの正体は「範囲の広さ」より「実技の時間不足」だと思っています。
- 合格率は第65回 5.3%、直近10回平均5.3%、第1回からの通算5.5%(受験者のべ243,940人、合格者13,433人)
- 合格率が低い最大の理由は学科2科目+実技を同時に満たす必要があること。学科だけなら3〜4割の人が通る
- 受験者の約4割(第65回38.6%)が学科免除あり。合格者の多くは2回目以降
- 合格基準は「学科15問中11問、実技70%」が原則だが、毎回調整され、学科は9〜11問、実技は60〜69%で推移
- 受験者数は2010年ごろの5,000人台から2010年代後半に2,800人まで減り、2022年以降は4,000人台に回復
合格率の推移|第1回(1994年)から第65回(2026年)まで
グラフを見ると、合格率は第6回(1997年)以降ほぼ4〜7%の帯に収まっています。最低は第10回・第12回・第39回・第41回・第44回の4.0〜4.2%、直近で高かったのは第61回(2024年1月)の6.2%と第63回(2025年1月)の6.0%です。受験者数のほうは変動が大きく、2000年代後半に5,000人前後まで増えたあと2018〜2021年に2,800〜2,900人台まで減り、2022年の第58回で4,173人へ急回復して以来4,000人台が続いています。テレビの気象キャスター人気と、天気アプリ・防災意識の高まりが受験者の波を作っていると見ています。
| 回 | 実施 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | 学科一般の基準 | 学科専門の基準 | 実技の基準 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第55回 | 2021年1月 | 2,616 | 146 | 5.6% | 10問以上 | 9問以上 | 63%以上 |
| 第56回 | 2021年8月 | 2,920 | 124 | 4.2% | 11問以上 | 11問以上 | 65%以上 |
| 第57回 | 2022年1月 | 3,629 | 177 | 4.9% | 10問以上 | 11問以上 | 62%以上 |
| 第58回 | 2022年8月 | 4,173 | 251 | 6.0% | 11問以上 | 11問以上 | 68%以上 |
| 第59回 | 2023年1月 | 4,166 | 198 | 4.8% | 11問以上 | 10問以上 | 65%以上 |
| 第60回 | 2023年8月 | 4,290 | 206 | 4.8% | 11問以上 | 10問以上 | 66%以上 |
| 第61回 | 2024年1月 | 3,928 | 242 | 6.2% | 11問以上 | 11問以上 | 69%以上 |
| 第62回 | 2024年8月 | 4,268 | 248 | 5.8% | 10問以上 | 10問以上 | 66%以上 |
| 第63回 | 2025年1月 | 4,034 | 244 | 6.0% | 10問以上 | 10問以上 | 60%以上 |
| 第64回 | 2025年8月 | 4,048 | 210 | 5.2% | 11問以上 | 10問以上 | 63%以上 |
| 第65回 | 2026年1月 | 3,932 | 208 | 5.3% | 10問以上 | 9問以上 | 65%以上 |
なぜ5%で止まるのか|合格率が低い3つの理由
理由1:学科2科目と実技を「同時に」満たす必要がある
合格には、学科一般・学科専門・実技のすべてで基準を満たす必要があります。仮に学科一般に35%、学科専門に35%、実技に25%の人が通るとすると、1回で3つとも通る確率は単純計算で約3%です。実際は学科免除の人がいるので5%前後になりますが、「1科目ずつなら難しくないが、全部そろえるのが難しい」のがこの試験の構造です。科目別の合格率は非公表ですが、受験者の約4割が学科免除つきで受けていることから、学科は通る人がかなり多いと推定できます。
理由2:実技が「時間との戦い」になっている
実技は75分の問題が2題。前線解析の作図、穴埋め、計算、記述(30〜60字)を10〜20問こなします。知識があっても時間内に解き切れない受験生が多く、実技で落ちる人の多くは「後半の大問が白紙」です。学科は暗記と理解で対処できますが、実技は過去問を時間を計って解く訓練量がそのまま点になります。
理由3:範囲が物理・法規・観測・予報技術にまたがる
学科一般は大気の熱力学・力学・放射・気象法規、学科専門は観測機器・数値予報・警報の基準・週間予報の信頼度など、大学の地球科学と実務の両方が出ます。文系の受験者は物理と数式、理系の受験者は法規と実務の基準でそれぞれ苦労します。ただし数学はベクトルと対数、簡単な微分の考え方までで、高校レベルで足ります。
合格基準はどう調整されるか|「11問・70%」は目安
公式の合格基準は学科各科目15問中11問以上、実技は総得点の70%以上です。ただし試験案内に「難易度により調整する場合がある」と明記されていて、実際には毎回調整されています。直近11回では学科一般が10〜11問、学科専門が9〜11問、実技は60〜69%の範囲で動きました。第63回(2025年1月)の実技は60%まで下がり、第61回は69%とほぼ原則どおりでした。
この調整があるので、自己採点で「実技が65%くらい」なら合格の可能性は十分あります。逆に学科は原則11問を目標に、「12問取って安全圏」を狙うのが現実的です。下のツールに自己採点を入れると、直近11回の基準に照らした目安が出ます。
自己採点 → 合否の目安(第55〜65回の合格基準で判定)
どんな人が受けているか|第65回の受験者像
| 項目 | 第65回(2026年1月) |
|---|---|
| 申請者 | 4,557人 |
| 受験者 | 3,932人(申請者の86%) |
| 合格者 | 208人(5.3%) |
| 男女比 | 男性76.9%・女性23.1% |
| 平均年齢 | 42.6歳 |
| 最年少・最高齢 | 9歳・87歳 |
| 学科免除あり | 38.6% |
申請者のうち約14%は当日受験していません。仕事や学業と両立しながら「申し込んだが仕上がらなかった」人が一定数いるということで、逆に言えば会場に来た人の中での合格率は見かけより少し高いことになります。年齢層は20代が最多ですが50代以上も4割近くいて、定年後の挑戦や、防災担当・教員・自治体職員のスキルアップとしての受験が目立ちます。最年少の合格記録は11歳(2017年)です。
他の資格と比べた難易度
| 資格 | 合格率の目安 | 性質 |
|---|---|---|
| 気象予報士 | 約5% | 学科(択一)+実技(記述・作図)。同日に全科目 |
| 社会保険労務士 | 約6〜7% | 択一・選択式。科目ごとの足切りあり |
| 行政書士 | 約10〜14% | 択一+記述。法令中心 |
| 宅地建物取引士 | 約15〜17% | 択一50問 |
| 技術士(二次) | 約10%前後 | 記述+口頭。実務経験が必要 |
| 第一級陸上無線技術士 | 約20〜30% | 択一。理工系 |
合格率だけなら社労士や行政書士より低く見えますが、気象予報士は受験資格がなく、勉強を始めたばかりの人も母数に入るため、実力層の合格率はもう少し高いはずです。逆に、記述と作図を含む実技があるぶん「択一だけの資格」とは勉強の質が違います。偏差値で言えば60台前半、勉強時間は目安で800〜1,500時間と言われますが、理系出身か文系出身か、そして実技の演習量でかなり幅があります。
気象予報士試験の定番テキスト
独学なら「一般気象学(小倉義光)」で土台を作り、「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト」で学科の穴を埋め、過去問は最低5回分を3周するのが王道です。実技は解説つきの過去問集が必須です。
図解|「5%」の中身と、合格までのルート
合格率の低さは「難問が多い」より「3科目を同じ回でそろえる構造」から来ています。じょうごの図と、実際に多い合格ルート、そして毎回動く合格基準を図にしました。
例題で確認|自己採点からの見立て
解答・解説を見る
学科一般11問は11回すべてで基準以上。学科専門10問は「9〜10問」の回(第55・59・60・62・63・64・65回)で基準以上。実技64%は基準が63%以下の回(第55・57・63・64回)で基準以上。3つすべてを満たす回は第55・63・64回の3回です。実技をあと3〜4%上げれば安全圏に近づく、という読み方をします。
解答・解説を見る
実技の基準は60〜69%で推移し、68%を超えたのは第61回の1回だけです。ただし記述の採点は減点方式で自己採点より下がりやすいので、「指定の言葉が入っているか」を厳しめに採点しておくと見立てがぶれません。
解答・解説を見る
学科の基準は原則11問で、直近11回では11問を超えたことがありません。12問なら調整で不利になる回はなく、「12問で安全圏」という本文の目安の根拠です。
- 合格基準と配点・採点の全解説(合格ライン計算)(09/27公開)
- 独学の勉強法・勉強時間・参考書
- 実技の解き方・時間配分
- 記述問題の書き方と添削例20(09/29公開)
合格率5%の試験を「確率の高い試験」に変える3つの考え方
- 学科を先に取って免除にする:学科2科目に合格すれば、次の2回は実技だけに集中できる。「1回目は学科合格が目標」と割り切る人が多い
- 実技は時間を計って解く:過去問を75分で解き、答案を模範解答と比べて「減点される表現」を潰す。知識より処理速度
- 実況で復習する:試験で出た日の天気図やエマグラムを実データで見直すと、暗記が理解に変わる。当サイトのエマグラム表示ツールは1905年までさかのぼれるので、古い過去問の実況も確認できます
具体的な勉強の順番と教材は独学の勉強法と参考書、科目ごとの頻出分野は学科一般・学科専門、実技の攻略は実技試験の解き方にまとめています。次の試験日程は2027年の試験日程で確認してください。
合格率と難易度 よくある質問
気象予報士試験の合格率は何%ですか?
第65回(2026年1月)は5.3%、直近10回の平均は5.3%、第1回からの通算は5.5%です。第6回以降は一度も10%を超えていません。
気象予報士試験はなぜ合格率が低いのですか?
学科一般・学科専門・実技のすべてで同時に基準を満たす必要があるためです。科目ごとの合格率は非公表ですが、受験者の約4割が学科免除つきで受験しており、学科だけなら通る人はかなり多いと推定されます。実技が時間との戦いになることも大きな要因です。
合格基準は何点ですか?
原則は学科各科目15問中11問以上、実技は総得点の70%以上です。難易度により毎回調整され、直近11回では学科が9〜11問、実技が60〜69%で推移しています。
気象予報士試験は独学で合格できますか?
合格者の多くは独学か市販教材中心です。学科は市販テキストと過去問で対応でき、実技は過去問を時間を計って解く訓練が中心になります。添削が欲しい人は実技だけ講座を使うのが一般的です。
文系でも合格できますか?
できます。必要な数学はベクトル・対数・比例計算と微分の考え方程度で、高校レベルです。文系の受験者は物理の理解に、理系の受験者は法規と実務の基準の暗記に、それぞれ時間をかける傾向があります。
何回くらいで合格する人が多いですか?
公式統計はありませんが、学科免除の利用者が約4割いることから、2〜3回かけて合格する人が多いと考えられます。1回目で学科を取り、2回目以降で実技に集中するのが典型的なパターンです。
- 合格率は約5%で30年近く安定。第65回は5.3%
- 低い理由は「学科2科目+実技を同時に」「実技の時間不足」「範囲の広さ」
- 合格基準は原則11問・70%だが毎回調整(学科9〜11問、実技60〜69%)
- 受験者の約4割が学科免除つき。複数回で受かる積み上げ型
- 学科を先に取り、実技は時間を計って解く。実況で復習する
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出典:一般財団法人 気象業務支援センター「気象予報士試験の実施状況」「試験案内」、各回の合格基準の公表値。他資格の合格率は各実施団体の公表値の目安です。


