「今日は気圧が下がるから頭が痛い」——天気の変わり目に頭痛やめまい、だるさが出る人は少なくありません。気象庁で働いていた頃、台風接近の当直では「気圧計を見なくても頭で分かる」という同僚が実際にいました。この記事では、なぜ気圧が下がると体調が悪くなるのか、何hPa下がるとつらいのか、どの天気パターンで大きく下がるのかを、気象予報士の立場からデータと図で整理します。冒頭のツールで、今日の気圧の変化をすぐ確認できます。
- 原因として有力なのは「内耳が気圧の変化を感知→自律神経が乱れる」という説。気圧の低さそのものより「下がる速さ」が効く
- 目安は1日に5〜10hPa以上の低下、または数時間で3hPa以上の急な低下。晴れた日の日変化(1〜3hPa)はほぼ無関係
- 大きく下がるのは①台風(20〜50hPa/日)②低気圧・前線の通過(5〜15hPa)。春と秋は3〜4日周期で繰り返す
- 実況は気象庁アメダスの海面気圧で10分ごとに確認できる。今後の見通しは気象庁の天気図で
- 症状が強い・続くときは頭痛外来や耳鼻科へ。この記事は医療情報ではありません
まず今日の気圧をチェック
気象庁アメダスの海面気圧(10分値)を、地点別の24時間グラフと全国地図で表示します。地点を選ぶとブラウザに記憶されます。全国版の固定ページは今日の気圧の変化にあります。
今日の気圧の変化気象庁アメダスの海面気圧・10分ごと更新・予報ではありません
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なぜ気圧が下がると頭が痛くなるのか
気圧の変化で起こる不調は「気象病」「天気痛」と呼ばれます。日本での研究で有力なのは、耳の奥の内耳(前庭)が気圧の変化を感知するセンサーの役目をしており、その情報が脳に伝わって自律神経のバランスが崩れるという説です。飛行機の離着陸や高層ビルのエレベーターで耳が「詰まる」のも、内耳が気圧の変化に反応している例です。
自律神経が乱れると、血管が広がったり縮んだりして片頭痛が誘発されたり、痛みを感じる神経が敏感になって古傷や首肩のこりが強く出たりします。内耳の敏感さには個人差が大きく、同じ天気でも症状が出る人と出ない人がいるのはこのためです。乗り物酔いしやすい人に気象病が多いという報告もあり、両者は同じ「内耳の敏感さ」でつながっていると考えられています。
この記事は気象データの読み方を説明するもので、診断や治療の代わりにはなりません。頭痛が頻繁に起こる、いつもと違う強い頭痛、手足のしびれや言葉のもつれを伴う場合は、天気のせいにせず早めに医療機関を受診してください。
何hPa下がるとつらい?目安の数字
よく引き合いに出されるのは「1日に5hPa以上下がると不調を訴える人が増える」「10hPa以上でかなりの人に症状が出る」という目安です。一方で、数分〜数十分の小さな気圧の揺れ(微気圧変動)に反応する人もいて、hPaの絶対値だけでは説明しきれません。当ブログのツールでは、次の基準で判定しています。
| 判定 | 基準 | 意味 |
|---|---|---|
| 警戒 | 3時間で−3hPa以上、または24時間で−10hPa以上 | 台風の接近、発達した低気圧の通過。症状が出やすい人は予定の調整を |
| 注意 | 3時間で−1.5hPa以上、または24時間で−5hPa以上 | 低気圧・前線の接近。気圧の変化に弱い人は早めの対処を |
| 上昇中 | 3時間で+1.5hPa以上、または24時間で+5hPa以上 | 高気圧に覆われて回復傾向。ただし急上昇でも不調が出る人がいる |
| 平常 | 上記以外 | 大きな変化なし。晴れた日の日変化(1〜3hPa)はこの範囲 |
大事なのは「気圧が低い」ことより「下がる速さ」です。標高1,000mの高原は平地より約110hPaも気圧が低いのに、そこに住む人が毎日頭痛に悩んでいるわけではありません。体は一定の気圧には慣れますが、急な変化には追いつけないのです。
気圧が大きく下がる4つの天気パターン
① 台風の接近(最も急で最も深い)
台風の中心気圧は950hPa前後、強いものでは920hPa以下で、周囲より50〜90hPaも低い「気圧の穴」です。中心が通過する地点では半日〜1日で20〜50hPa下がり、通過後は同じ速さで戻ります。日本の陸上で観測された最も低い海面気圧は、1977年9月9日に沖永良部島で記録した907.3hPa、本土では1934年の室戸台風で室戸岬が記録した911.6hPaです。台風の右側で風が強くなる理由はこちらの記事で解説しています。
② 低気圧・前線の通過(春と秋に3〜4日周期)
春と秋は、高気圧と低気圧が西から東へ交互に通り過ぎます。低気圧が近づくと数時間〜1日で5〜15hPa下がり、通過すると上がる、というサイクルが3〜4日ごとに繰り返されます。「春は気象病がつらい」と言われるのはこのためです。冬に本州の南岸を通る南岸低気圧も、雪や冷たい雨と一緒に急な気圧低下をもたらします。
③ 梅雨前線・秋雨前線(小さな上下が続く)
前線が停滞している間は、気圧の変化そのものは1〜3hPaと小さいのに、湿度の高さと日照不足が重なって不調が長引きやすい時期です。前線上を小さな低気圧が通るときに一時的に下がります。最近雨が多いのはなぜ?で、2026年の秋雨の状況をまとめています。
④ 晴れた日の日変化(気にしなくてよい)
よく晴れた日でも、気圧は朝9〜10時と夜21〜22時に高く、15〜16時と明け方3〜4時に低い、というリズムで1〜3hPa上下します(大気潮汐)。これは毎日起きている変化なので体は慣れており、体調との関係はほぼありません。ツールで「平常」と出るのはこの範囲です。
季節で見る「気圧が変わりやすい時期」
| 時期 | 気圧の動き | 気象病の出やすさ | 関連記事 |
|---|---|---|---|
| 3〜4月 | 移動性高気圧と低気圧が3〜4日周期で交代。1日で10hPa前後の上下も | 高い(春バテ・花粉と重なる) | 花粉の飛散と気温 |
| 6〜7月 | 梅雨前線で小刻みな変化。湿度が高い | 中(だるさ・むくみ) | 日本一蒸し暑い県 |
| 8〜10月 | 台風の接近で最も急な低下。秋雨前線 | 高い(9月がピーク) | 台風の進路と備え |
| 11〜2月 | 冬型が続く間は安定。南岸低気圧や寒冷前線の通過で急変 | 低〜中(寒暖差と乾燥が主因) | 寒暖差チェッカー |
気圧の予報はどこで見る?
気圧の変化を「予報」として提供するには気象庁の許可が必要なため、当サイトでは実況の表示にとどめています。これから下がるかどうかを知りたいときは、次の順番で確認するのがおすすめです。
- 気象庁の天気図で、低気圧や前線が自分の地域に近づいているかを見る(等圧線が混んでいるほど変化が速い)
- 今日の気圧の変化で、いま下がり始めているかを確認する
- Windyの「気圧」レイヤーで、数時間後の予想を見る(複数モデルの比較ができる)
- 週間予報の「信頼度」を見て、予定の調整に使う(週間予報の当たる確率)

気象庁の当直で気圧計を見ていると、台風が近づく夜は1時間に2〜3hPaずつ、じわじわ落ちていくのが分かります。「頭で分かる」と言っていた同僚は、実際に気圧計の針とほぼ同じタイミングで頭痛薬を飲んでいました。体は意外と精密な気圧計なんです。
気圧の変化に強くなるには(一般的な対策)
- 自分の「効く数字」を知る:不調が出た日の気圧の変化量をメモしておくと、注意すべき目安が分かる(ツールの「24時間の変化」を記録)
- 変化の前に整える:低気圧が近づく前日は睡眠を削らない、朝食を抜かない、水分をとる。自律神経の乱れを小さくする基本
- 耳のまわりを温める・動かす:内耳の血流を良くするマッサージが勧められることが多い(効果には個人差あり)
- 薬は医師・薬剤師に相談:市販の頭痛薬の飲み過ぎは薬物乱用頭痛の原因になる。天気痛向けの漢方や酔い止めが処方されることもある
- 予定の組み方を変える:「警戒」の日は重要な会議や長距離運転を避ける、というだけで負担はかなり減る
気象予報士の視点:天気図の「等圧線」で変化の速さが分かる
天気図の等圧線は4hPaごとに引かれています。自分の地域の上を、次の12時間で等圧線が何本通り過ぎるかを数えると、気圧の変化量が見積もれます。3本なら約12hPa。等圧線が混んでいる(間隔が狭い)ほど風が強く、気圧の変化も速くなります。低気圧の中心が自分の地域の北側を通るときは南風で気温が上がり、南側を通るときは冷たい雨や雪になりやすい、という違いも覚えておくと便利です。高気圧・低気圧の風の回り方はこちらで解説しています。
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- 台風の進路と備え
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- 今年の冬は暖冬?2026-27年
よくある質問
低気圧が来ると必ず頭痛になりますか?
なりません。内耳の敏感さには個人差があり、同じ気圧低下でも症状が出ない人が多数です。また、同じ人でも睡眠不足や疲労が重なると出やすくなります。
気圧が上がるときも体調が悪くなりますか?
下がるときより少ないものの、急に上がるときに不調が出る人もいます。台風通過後や寒冷前線通過後の急上昇がそれにあたります。
雨が降っている=気圧が低い、ですか?
必ずしもそうではありません。梅雨のように気圧の変化が小さいまま雨が続くこともあります。逆に、雨が降る前の「下がり始め」に症状が出て、降り出すころには楽になる人もいます。
飛行機に乗ると頭が痛くなるのも同じ理由ですか?
機内は与圧されていますが、地上より150〜200hPaほど気圧が低く、離着陸で急に変わります。内耳が反応するという点で同じ仕組みです。
頭痛ーるのようなアプリと何が違いますか?
アプリは予測を含みますが、当サイトのツールは気象庁の実況値(過去24時間)だけを表示します。予報は気象庁の天気図をご覧ください。
気圧の平年値はありますか?
海面気圧の月平均は、冬(1月)が1,020hPa前後で高く、夏(7〜8月)が1,008hPa前後で低くなります。台風シーズンの9月は日々の変動が最も大きい月です。
- 気圧の低下で体調が悪くなるのは、内耳が変化を感知して自律神経が乱れるため(有力な説)
- 目安は1日に5〜10hPa以上、または数時間で3hPa以上の低下。低さより「速さ」
- 台風は20〜50hPa/日、低気圧・前線は5〜15hPa。春と秋は3〜4日周期
- 実況は「今日の気圧の変化」ツール、見通しは気象庁の天気図で
- 症状が強いときは医療機関へ
出典:気象庁アメダス(海面気圧・10分値)、気象庁「気象観測統計」(陸上の最低海面気圧の記録)、気象病・天気痛に関する公開研究の要約。本記事は医療情報ではありません。


