高層天気図は「上空の原因」を見るための図で、地上天気図が「結果」だとすれば、なぜ低気圧が発達するのか、なぜ雪になるのか、なぜ猛暑になるのかは上空を見ないと分かりません。気象庁が毎日2回発表する850・700・500・300hPaの4枚には、それぞれ見る場所が決まっています。この記事では、4枚の役割、記号と線の意味、「850hPaが−6℃なら雪」「500hPaが−36℃なら大雪」「850hPaが21℃なら猛暑日」といった実用的な目安、そして実技試験での読み取り方をまとめました。上空の気温を入れると地上の目安が出るツールも置いています。縦の構造を1地点で見るならエマグラム表示ツール、今日の高層天気図は気象庁のサイトで。

気象庁の予報官は、地上天気図より先に500hPaと850hPaを見ます。上空の流れが決まれば、地上の低気圧がどこで発達し、どこに雨が降るかはほぼ決まるからです。
- 850hPa(約1,500m):気温・湿り・前線。−6℃で雪、15℃で真夏日、21℃で猛暑日の目安
- 700hPa(約3,000m):上昇流と湿域。雨が降る場所
- 500hPa(約5,500m):トラフ・リッジと寒気。−30℃で雪、−36℃で大雪(冬)、−6℃以下で雷雨(夏)
- 300hPa(約9,000m):ジェット気流。低気圧の発達と寒気の南下の道すじ
- 読む順番は上から下へ。500hPaで流れ、850hPaで気温と湿り、地上で結果
図解|4枚の高さと見るポイント
| 気圧面 | 高さの目安 | 図の名前(気象庁) | 描かれている線 | 見るポイント |
|---|---|---|---|---|
| 850hPa | 約1,500m | AUPQ78(850・700の2枚組) | 等高度線(60mごと)・等温線(3℃ごと)・風・湿数3℃以下の湿域(ドット) | 気温(0℃・−6℃・15℃・21℃)、暖湿気の流入、前線の位置(等温線の集中帯) |
| 700hPa | 約3,000m | AUPQ78 | 等高度線・等温線・風・湿域、鉛直流(上昇流は負) | 上昇流域=雨が降る場所、湿域の広がり |
| 500hPa | 約5,500m | AUPQ35(500・300の2枚組) | 等高度線(60mごと)・等温線(3℃ごと)・風。渦度図(AXFE)では正渦度域 | トラフ(気圧の谷)とリッジ、寒気の中心(−30℃・−36℃)、正渦度移流 |
| 300hPa | 約9,000m | AUPQ35 | 等高度線(120mごと)・等温線・風・等風速線 | ジェット気流の軸(強風軸)と入口・出口、圏界面 |
850hPa|気温と湿りで「何が降るか」
850hPaは地上から約1,500m、山なら日本アルプスの中腹の高さです。地上の影響(日射・地形)を受けにくいので、その日の「空気の暖かさ」を代表する面として使われます。等温線は3℃ごとで、冬は0℃・−6℃、夏は15℃・18℃・21℃の線を追います。
| 850hPa気温 | 季節 | 地上の目安 |
|---|---|---|
| −6℃以下 | 冬 | 平地でも雪。−9℃以下なら大雪に注意 |
| −3〜−6℃ | 冬 | 雨か雪の境目。関東の南岸低気圧は−3℃でも雪になることがある(地上の寒気次第) |
| 0℃以上 | 冬 | 平地は雨 |
| 15℃以上 | 夏 | 真夏日(30℃以上)の目安 |
| 18℃以上 | 夏 | 猛暑日に近い暑さ。18〜21℃で35℃前後 |
| 21℃以上 | 夏 | 猛暑日(35℃以上)の目安。2026年7月の40℃ラッシュは850hPaで24℃前後 |
湿りは湿数(気温−露点)3℃以下の領域をドットで示し、これが雨雲の元です。相当温位(AXFE図など)で336K以上の暖湿気が南から流れ込んでいれば大雨、等温線・等相当温位線の集中帯が前線です。夏の猛暑がなぜ起きるかは2026年夏の猛暑まとめと日本一暑い街で、この850hPaの気温と合わせて解説しています。
500hPa|流れと寒気で「発達するか・大雪か」
500hPaは対流圏のほぼ中間で、大気の「流れ」を代表します。等高度線(5,700m前後、60mごと)が南に垂れ下がった所がトラフ(気圧の谷)、北に盛り上がった所がリッジ(尾根)。トラフの東側(前面)は上昇流域で地上の低気圧が発達し、西側(後面)は下降流域で晴れます。等温線は3℃ごとで、冬は−30℃・−36℃、夏は−6℃の線が目安です。
| 500hPa気温 | 季節 | 目安 |
|---|---|---|
| −30℃以下 | 冬 | 日本海側で雪。寒気の南下の目安 |
| −36℃以下 | 冬 | 日本海側で大雪。JPCZができると集中豪雪 |
| −42℃以下 | 冬 | 数年に一度の強い寒気。太平洋側の平地でも雪の可能性 |
| −6℃以下 | 夏 | 上空に寒気=大気が不安定。雷雨・ひょう・突風 |
| −9℃以下 | 夏 | 非常に不安定。竜巻注意情報が出るレベル |
トラフの見つけ方は「等高度線の曲がりが最も大きい所を結ぶ」。実技試験では500hPaのトラフと地上の低気圧の位置関係(トラフの東側で発達、トラフが低気圧の真上に来ると閉塞)が毎回のように出ます。渦度図では正渦度(北半球で反時計回り)の移流がトラフ前面の上昇流に対応します。
上空の気温から地上の目安を出す(850hPa・500hPaの気温 → 雨雪・暑さ・大雪の目安)
700hPa・300hPa|雨の場所とジェット
| 気圧面 | 見るもの | 読み方 |
|---|---|---|
| 700hPa | 鉛直流(ω) | 負の値(上昇流)が大きい場所で雨。−50hPa/h前後で強い雨。低気圧の東側・前線の北側に出る |
| 700hPa | 湿域 | 湿数3℃以下。850hPaの湿域と重なれば厚い雲=本降り |
| 300hPa | ジェット気流 | 等風速線が密な強風軸(100ノット超)。ジェットの入口の右側・出口の左側で上昇流=低気圧が発達 |
| 300hPa | 圏界面の高さ | 等高度線が低い(9,000m未満)所は寒気の上。トラフの位置と対応 |
気象予報士試験の定番テキスト
独学なら「一般気象学(小倉義光)」で土台を作り、「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト」で学科の穴を埋め、過去問は最低5回分を3周するのが王道です。実技は解説つきの過去問集が必須です。
読む順番|上から下へ、原因から結果へ
- 300・500hPaで流れを見る:ジェットとトラフの位置。トラフの前面がこれから天気が崩れる場所
- 500hPaで寒気を見る:−30℃・−36℃(冬)、−6℃(夏)の線がどこまで南下しているか
- 850hPaで気温と湿りを見る:0℃・−6℃・15℃・21℃の線、湿域、暖湿気の流入、等温線の集中帯(前線)
- 700hPaで上昇流を見る:雨が降る場所を絞る
- 地上天気図で結果を確認:低気圧・前線・等圧線。天気図の読み方
- エマグラムで1地点の縦の構造を確認:エマグラム表示ツール、エマグラム問題の解き方
- 衛星画像で雲の実況と照らす:衛星画像の見方
高層天気図はどこで見られるか
- 気象庁「高層天気図」:AUPQ78(850・700)、AUPQ35(500・300)の実況と、FXFE(予想図)。9時・21時の観測
- 気象庁「数値予報天気図」:FXFE502・504・507など、12〜72時間先の予想
- エマグラム表示ツール:地図をクリックして任意地点の鉛直プロファイル(モデル)と、16地点のラジオゾンデ実測
- Windy:850hPa・500hPaの気温・風・湿度を面で動かして見られる。使い方はWindyで各国モデルを比べる
- 試験対策:実技試験の解き方に資料ごとの見る場所をまとめています
高層天気図 よくある質問
高層天気図の850hPaとは何ですか?
上空約1,500mの気圧面の天気図です。地上の影響を受けにくいので、その日の空気の暖かさや湿りを代表する面として使われます。冬は−6℃で雪、夏は21℃で猛暑日の目安になります。
500hPaの天気図では何が分かりますか?
上空約5,500mの流れと寒気です。等高度線が南に垂れたトラフの東側で地上の低気圧が発達し、冬は−30℃・−36℃の寒気で日本海側の雪・大雪、夏は−6℃以下の寒気で雷雨の目安になります。
850hPaの気温から地上の気温はどう推定しますか?
乾燥断熱減率で1,500mを降ろすと約+9℃なので、850hPaが21℃なら地上は30℃以上、日射があれば35℃前後になります。地形やフェーン、海風で変わるので目安です。
トラフとは何ですか?
上空の等高度線が低圧側(南)に張り出した「気圧の谷」です。トラフの東側は上昇流域で天気が崩れ、西側は下降流域で晴れます。
高層天気図はいつ発表されますか?
実況は9時と21時(00・12UTC)のラジオゾンデ観測に基づき、気象庁のサイトで公開されます。予想図(FXFE等)は数値予報から12〜72時間先が発表されます。
高層天気図はどこで見られますか?
気象庁の「高層天気図」「数値予報天気図」のページで見られます。1地点の縦の構造は当サイトのエマグラム表示ツール、面で動かして見るならWindyが便利です。
- 850hPa=気温と湿り(−6℃で雪、21℃で猛暑日)
- 500hPa=流れと寒気(トラフ前面で発達、−36℃で大雪、−6℃で夏の雷雨)
- 700hPa=上昇流と湿域=雨の場所、300hPa=ジェット
- 読む順番は上から下、原因から結果へ
- 地上気温≒850hPa気温+9℃が目安
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出典:気象庁「高層天気図」「数値予報天気図」「高層気象観測」。気温の目安は予報現場で使われる経験則で、地形や季節により幅があります。図は当サイトの模式図です。


