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こんにちは!気象予報士ののぶやんです。
【すぐわかる答え】桜島の火山灰は、1年の大半は東側(大隅半島・垂水・鹿屋、さらに都城・宮崎方面)へ流れます。鹿児島市の中心部へ灰が流れやすいのは夏〜初秋(5〜10月に増え、ピークは8〜9月)で、上空約1,500mの風で見ると8〜9月は5〜6回に1回ほど。冬(12〜2月)は1〜3%とほとんどありません。これからの11月は、灰の多くが南東〜東の垂水・鹿屋方面へ向かい、鹿児島市中心部は6.6%程度です。今日・明日の灰の向きは気象庁の降灰予報で確認してください。
10月29日、鹿児島の桜島で噴火があり、南岳山頂火口から噴煙が火口上1,200m(海抜およそ2,200m)まで上がったと報じられました(鹿児島地方気象台の発表を伝える報道による)。桜島は2022年7月24日に一時噴火警戒レベル5へ引き上げられ、27日にレベル3へ引き下げられて以降、噴火警戒レベル3(入山規制)が続いていて、噴火のたびに「今日の灰はどっちに降る?」が気になる方も多いと思います。
火山灰の行き先を決めるのは上空の風です。元気象庁職員の気象予報士として、桜島のすぐ西にある鹿児島の高層気象観測(2011〜2025年の15年分、1日2回・各高さ約1万800〜1万900回)を集計し、月ごと・高さごとに「灰がどの方角へ流れやすいか」と「周辺の12の町の方角へ流れる割合」を計算しました。富士山、十勝岳に続く「火山灰はどこへ」シリーズの第3弾です。月と高さを選べる降灰シミュレーターで、自分の町を確かめてください。
- 上空約3,000mの風(2011〜2025年)で見ると、桜島の灰が流れやすいのは東(年間44.7%)、次いで北東(18.0%)・南東(17.3%)。東側へ流れる割合は約8割
- 町の方角へ流れる割合(約3,000m・年間)は、都城34.3%・宮崎30.4%・鹿屋13.7%。鹿児島市中心部は3.6%だけ
- 鹿児島市中心部へ流れやすいのは夏。上空約1,500mでは8月17.5%・9月19.6%、12〜1月は1.3%
- 夏は太平洋高気圧のまわりの東〜南東の風、冬は強い偏西風(西風)が吹くため。「夏は鹿児島市側、冬は大隅半島側」が基本パターン
- これからの11月は、上空約1,500mで鹿屋方面25.1%・垂水方面18.8%、鹿児島市中心部6.6%
- その日の灰の向きは、気象庁の降灰予報で確認するのが確実。降灰シミュレーターで月ごとの傾向を確認できます
桜島の降灰シミュレーター:月と高さで「灰の行き先」を調べる
月と高さを選ぶと、桜島から灰が流れやすい方角(16方位のバラ図)と、周辺12の町の方角へ流れる割合を表示します。割合は、その町の方角を中心に左右22.5度(合わせて45度)の範囲へ風が吹いた回数の割合です。気象台が発表する噴煙の高さは火口上の高さです。南岳の火口は海抜約1,000mなので、発表された噴煙の高さに約1,000mを足した海抜で選んでください。火口上1,000〜2,000mの噴火なら「約1,500m」と「約3,000m」の両方を、火口上2,000〜3,000mなら「約3,000m」を、火口上4,000m以上なら「約5,500m」も見るのが目安です。
最初は「11月・約1,500m」を表示しています。高さを「約3,000m」「約5,500m」に変えると、上空ほど西風(偏西風)が強く、灰の向きが東へそろうことがわかります。月を「8月」にすると、鹿児島市中心部の割合が大きく上がります。周辺の天気や風は鹿児島の気候、鹿屋の気候、都城の気候、宮崎の気候でも確認できます。
図解:桜島の灰は「季節の風」で行き先が変わる
日本の上空では、1年の大半で偏西風(西風)が吹いています。特に冬はジェット気流が九州のすぐ上を通り、上空の西風がとても強くなるため、桜島の灰はほぼ確実に東の大隅半島側へ運ばれます。
一方、夏は偏西風が北へ離れ、日本の南の太平洋高気圧のまわりを回る東〜南東の風が吹く日が増えます。このとき灰は西〜北西、つまり錦江湾をはさんだ鹿児島市の方角へ流れます。地元で「夏は鹿児島市に灰が降る」と言われるのは、データでもはっきり確かめられます。
データ検証:鹿児島市に灰が流れやすいのは何月?
| 月 | 鹿児島市(1,500m) | 鹿児島市(3,000m) | 垂水(1,500m) | 鹿屋(1,500m) | 都城(3,000m) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 1.3% | 0.0% | 26.3% | 43.8% | 33.7% |
| 2月 | 2.8% | 0.7% | 23.0% | 37.1% | 36.7% |
| 3月 | 3.1% | 0.0% | 20.6% | 29.4% | 35.3% |
| 4月 | 8.5% | 1.2% | 16.4% | 20.0% | 35.1% |
| 5月 | 14.8% | 2.7% | 13.6% | 15.7% | 36.0% |
| 6月 | 13.4% | 2.8% | 6.1% | 7.7% | 43.4% |
| 7月 | 13.4% | 10.3% | 5.8% | 7.3% | 33.3% |
| 8月 | 17.5% | 14.5% | 6.4% | 8.5% | 22.9% |
| 9月 | 19.6% | 7.6% | 7.4% | 7.7% | 28.1% |
| 10月 | 16.4% | 2.7% | 16.1% | 17.4% | 35.7% |
| 11月 | 6.6% | 0.6% | 18.8% | 25.1% | 37.7% |
| 12月 | 1.4% | 0.1% | 22.3% | 42.2% | 33.8% |
鹿児島市中心部(桜島の西、約10km)の方角へ灰が流れる割合は、上空約1,500mで1.3%(1月)から19.6%(9月)まで、季節で10倍以上の差があります。上空約3,000mでも7〜9月は7.6〜14.5%ありますが、10〜6月は0.0〜2.8%とほとんど流れません。夏も東側へ流れる日は多いものの、鹿児島市側へ流れる日が冬の10倍以上に増えるのが特徴です。小さな噴火(噴煙が低い)ほど、夏は鹿児島市側に灰が降りやすいということです。
反対に、垂水・鹿屋など大隅半島側は冬に多く、約1,500mで1月は鹿屋方面が43.8%、垂水方面が26.3%です。都城・宮崎はさらに東で、上空の強い西風に乗った灰が届く方角にあたります。
| 方角 | 約1,500m | 約3,000m | 約5,500m |
|---|---|---|---|
| 北 | 9.5% | 6.0% | 3.0% |
| 北東 | 14.6% | 18.0% | 15.7% |
| 東 | 19.7% | 44.7% | 62.7% |
| 南東 | 23.1% | 17.3% | 9.8% |
| 南 | 8.8% | 4.0% | 2.1% |
| 南西 | 4.5% | 2.6% | 1.7% |
| 西 | 8.9% | 3.4% | 2.5% |
| 北西 | 11.0% | 3.9% | 2.5% |
1年を通して見ると、上空約3,000mでは東44.7%が突出し、北東〜南東の東側を合わせると約8割。約5,500mでは東だけで62.7%に達します。一方、約1,500mの低いところでは東と南東がそれぞれ約2割と分散していて、地上近くほど風向きが日によって変わりやすいことがわかります。
町ごとの「灰が来やすさ」一覧(1年間・高さ別)
| 町 | 桜島からの方角・距離 | 約1,500m | 約3,000m | 約5,500m |
|---|---|---|---|---|
| 鹿児島市(中心部) | 西・約10km | 9.9% | 3.6% | 2.6% |
| 姶良市 | 北・約17km | 9.4% | 5.1% | 2.8% |
| 霧島市(国分) | 北北東・約20km | 12.2% | 11.2% | 6.7% |
| 鹿児島空港 | 北北東・約25km | 10.4% | 7.5% | 3.8% |
| 垂水市 | 南南東・約11km | 15.2% | 7.2% | 3.5% |
| 鹿屋市 | 南東・約29km | 21.8% | 13.7% | 7.2% |
| 指宿市 | 南・約37km | 7.9% | 3.8% | 2.0% |
| 都城市 | 東北東・約41km | 17.9% | 34.3% | 47.3% |
| 宮崎市 | 東北東・約81km | 17.5% | 30.4% | 39.0% |
| 日置市 | 西北西・約25km | 10.4% | 3.7% | 2.6% |
| 薩摩川内市 | 北西・約42km | 11.1% | 3.9% | 2.5% |
| 熊本市 | 北・約136km | 9.6% | 6.1% | 3.1% |
1年間で見ると、低い噴煙(約1,500m)では鹿屋21.8%・都城17.9%・垂水15.2%と大隅半島側が上位ですが、鹿児島市中心部も9.9%と、およそ10回に1回は灰が向かう計算です。高い噴煙(約3,000m)になると都城34.3%・宮崎30.4%に集中し、鹿児島市中心部は3.6%まで下がります。都城・宮崎は桜島から40〜80km離れていますが、上空の強い西風に乗った灰が届く方角にあたるため、大きな噴火のときは宮崎県側でも降灰予報を確認してください。
季節ごとの特徴:春・梅雨・夏・秋・冬
- 冬(12〜2月):上空の西風がいちばん強い季節。約3,000mで東向きが61.7〜64.6%。灰はほぼ大隅半島〜都城・宮崎方面へ。鹿児島市中心部は約1,500mでも1.3〜2.8%
- 春(3〜5月):西風が少しずつ弱まり、約1,500mでは北東〜北の風下も増える。鹿児島市中心部は3月3.1%→5月14.8%と上がっていく
- 梅雨(6月):南西の湿った風が吹く日は灰が北東(霧島・鹿児島空港方面)へ。約1,500mで霧島方面14.7%。雨で灰が泥状になりやすい
- 夏(7〜9月):太平洋高気圧のまわりの東風で、灰が西の鹿児島市側へ。約1,500mで鹿児島市中心部は7月13.4%・8月17.5%・9月19.6%、約3,000mでも8月は14.5%
- 秋(10〜11月):夏の風から冬の風への切り替わり。10月は鹿児島市中心部(約1,500m)16.4%とまだ多いが、11月は6.6%に下がり、鹿屋・垂水方面が中心になる
これから(10月末〜11月)の桜島の灰はどっちへ?
11月は、夏の東風の季節から冬の西風の季節へ切り替わる時期です。上空約1,500mでは南東26.7%・東20.4%が多く、町の方角では鹿屋25.1%・垂水18.8%。鹿児島市中心部は6.6%です。10月はまだ16.4%と高く、10月末の今は「鹿児島市側にも流れる日がある」季節から「大隅半島側が中心」の季節へ移る途中です。上空約3,000mでは東が55.0%を占め、灰の大半が大隅半島〜都城方面へ流れます。
ただし、これは「流れやすさ」の平均です。低気圧や前線が近づく日は南〜南西の風、通過したあとは北西の風になるなど、その日の天気図によって灰の向きは変わります。10月30日は九州南部でも雨の予報で、雨と一緒に灰が降ると、泥のように車や洗濯物にこびりつくので注意してください。気圧配置の変化は今日の気圧の変化で確認できます。
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鹿児島の直近2週間の天気を、去年・平年と比べられます。10月29日前後の天気の傾向は次のツールで確認できます。
11月の都道府県別の風の強さは、次のツールで比べられます。
計算の方法:なぜ「上空の風」で灰の行き先がわかるのか
火山灰は、噴煙として上空に吹き上げられたあと、その高さを吹く風に流されながら落ちてきます。地上の風向きと上空の風向きは違うことが多く、地上で北風でも上空は西風、ということはよくあります。気象庁の降灰予報も、噴煙の高さと上空の風の予報をもとに計算されています。
そこで、桜島の西約10kmにある鹿児島地方気象台の高層気象観測(気球に観測器をつけて1日2回、9時と21時に上空の気温・湿度・風を測る観測)のうち、850hPa(約1,500m)・700hPa(約3,000m)・500hPa(約5,500m)の風向を、2011〜2025年の15年分(各高さ約1万800〜1万900回)集めました。風向は「風が吹いてくる方角」なので、180度反対の「風下」を灰が流れる向きとして、月ごとに10度刻みで数えています。
この方法は富士山(館野の高層観測)・十勝岳(札幌の高層観測)と同じです。ただし、実際には噴煙の高さが時間とともに変わること、灰の粒の大きさで落ちる速さが違うこと、雨で一気に落ちることなどがあり、「その方角へ流れやすいか」の目安として使ってください。
噴火・降灰のときの行動チェックリスト
- 気象庁の降灰予報(速報)で、自分の市町村に「多量」「やや多量」が出ていないか確認する
- 洗濯物・布団は取り込む。窓を閉め、エアコンの外気取り入れを止める
- 外出時はマスクとめがね(コンタクトレンズは灰が入ると目を傷つけやすい)
- 車は徐行し、ワイパーは水で灰を流してから。灰が積もった道路は雨の日と同じようにすべりやすい
- 屋根や雨どいの灰は、雨の前に取り除くと詰まりを防げる(高所作業は無理をしない)
- 鹿児島市では「克灰袋」に入れて指定の場所に出す(市町村のルールを確認)
桜島の噴火と降灰:知っておきたい基本
- 噴火警戒レベル:桜島は2022年7月27日からレベル3(入山規制)が続いています(気象庁)。火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石や火砕流に警戒が必要です
- 降灰予報:気象庁は噴火が起きると「降灰予報(速報・詳細)」を発表し、どの市町村にどのくらい灰が降るかを予想します。定時の降灰予報では、噴火した場合の降灰範囲も毎日示されています
- 灰の量の目安:降灰予報では、灰の厚さで「少量(0.1mm未満、うっすら積もる)」「やや多量(0.1mm以上1mm未満、道路の白線が見えにくい)」「多量(1mm以上、外出や車の運転を控える)」に分けて表現されます
- 雨の日の灰:灰が雨にぬれると泥状になり、乾くと固まります。雨の前に灰を片づけておくと後が楽です
- 洗濯物:鹿児島市側に灰が流れやすい夏は、降灰予報を見てから外干しを決めるのが地元の知恵。風の強い日の外干しの目安は風速5mで洗濯物は干せる?も参考に
- 飛行機:火山灰はジェットエンジンに影響するため、噴煙が高く上がると鹿児島空港の便に影響が出ることがあります(飛行機が欠航する天気の基準)
鹿児島への旅行の服装と天気は鹿児島観光の天気と服装・鹿児島の11月の天気と服装にまとめています。
よくある質問
Q. 桜島の灰はどっちに降りやすいですか?
1年の大半は東側(大隅半島の垂水・鹿屋、さらに都城・宮崎方面)です。鹿児島の上空約3,000mの風(2011〜2025年)では、東へ流れる割合が44.7%、北東〜南東の東側を合わせると約8割でした。
Q. 鹿児島市に灰が降りやすいのはいつですか?
夏〜初秋(特に8〜9月)です。上空約1,500mの風で鹿児島市中心部の方角へ流れる割合は、8月17.5%、9月19.6%と高く、12月・1月は1.3%にとどまります。夏は太平洋高気圧のまわりの東〜南東の風が吹きやすいためです。
Q. 11月の桜島の灰はどこへ流れますか?
上空約1,500mでは南東26.7%・東20.4%が多く、鹿屋方面25.1%、垂水方面18.8%です。鹿児島市中心部の方角は6.6%と少なめです。
Q. 2026年10月29日の桜島の噴火はどんな噴火でしたか?
鹿児島地方気象台の発表を伝える報道によると、10月29日12時26分ごろに南岳山頂火口で噴火があり、噴煙は火口上1,200mまで上がりました。桜島は2022年7月27日以降、噴火警戒レベル3(入山規制)が続いています。
Q. 今日の桜島の灰がどこに降るか知る方法は?
気象庁の降灰予報を確認するのが確実です。噴火が起きると降灰予報(速報・詳細)が発表され、市町村ごとに降灰の量が示されます。この記事のシミュレーターは月ごとの傾向を示すもので、その日の予報の代わりにはなりません。
Q. 噴煙が高いと灰の向きは変わりますか?
変わります。上空ほど西風が強くそろうため、噴煙が高い噴火ほど灰は東へ運ばれやすくなります。1年間で見ると東へ流れる割合は、約1,500mで19.7%、約3,000mで44.7%、約5,500mで62.7%です。
Q. なぜ鹿児島の高層観測のデータを使うのですか?
鹿児島の高層気象観測点(鹿児島地方気象台)は桜島の西約10kmにあり、1日2回、気球で上空の風を測っています。桜島の真上に近い風を長期間調べられる、最も近い観測点だからです。
- 桜島の灰は1年の大半で東側(大隅半島・都城・宮崎方面)へ。上空約3,000mで東向きが44.7%
- 鹿児島市中心部へ流れやすいのは夏(約1,500mで8〜9月に約2割)、冬はほとんどない
- 11月は南東〜東向きが中心で、鹿屋・垂水方面に注意
- 噴煙が高いほど西風に乗って東へ。その日の向きは気象庁の降灰予報で確認を
出典:気象庁「過去の気象データ検索(高層)」鹿児島(47827)の日ごとの指定気圧面の観測値(850・700・500hPa、2011〜2025年、9時・21時)、気象庁「噴火警報・噴火速報」、気象庁「降灰予報」、10月29日の噴火は報道(鹿児島地方気象台発表)による。集計・計算・図表・ツールは当ブログによるものです。
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