気象予報士試験の学科一般15問のうち4問は気象業務法などの法規から出ます。物理と違って「知っていれば必ず取れる」分野で、法規4問を満点にすれば残り11問中7問(64%)で合格ラインに届きます。この記事は、出題される条文を「定義」「観測」「予報・警報」「予報業務の許可」「気象予報士」「罰則」「関連法(災害対策基本法・水防法・消防法)」の7つに整理し、図解と一問一答31問で、法規を得点源にするための完全版です。条文番号は覚える必要はありませんが、「誰が」「何を」「許可か届出か」の3点は必ず問われます。
- 法規4問の出題は毎回ほぼ固定:①定義(気象・地象・水象、予報・警報)、②観測(届出・検定7種)、③予報業務の許可(許可基準・予報士の設置・変更は許可・休廃止は届出)、④警報(気象庁のみ・NHKは直ちに放送・特別警報の通知は義務)+気象予報士の登録・欠格・罰則。
- 「許可」と「届出」の区別が最頻出。予報業務=許可、目的・範囲の変更=許可、休止・廃止=届出、観測施設の設置=届出。
- 「しなければならない」と「努めなければならない」の区別。NHKの放送・特別警報の周知は義務、警報事項の利用者への伝達は努力義務。
- 罰則は「損壊が最重(3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)」「無許可予報・無許可警報・未検定測器は50万円以下の罰金」「休廃止の届出忘れは20万円以下の過料」。
- 関連法は「誰が出すか」:避難指示=市町村長、洪水予報=国交大臣または知事と気象庁が共同、火災気象通報=気象庁から知事へ。
1. 定義(第1条・第2条)|気象・地象・水象と、予報・警報
| 用語 | 定義(要旨) | 試験でのポイント |
|---|---|---|
| 気象 | 大気(水象を除く)の諸現象 | 「水象を除く」に注意 |
| 地象 | 地震・火山現象、地面・地中の諸現象で気象に密接に関連するもの | 地震動は「地象」。津波は地象ではなく水象 |
| 水象 | 気象または地震に密接に関連する陸水・海洋の諸現象 | 津波・高潮・波浪・洪水はここ |
| 気象業務 | 観測・予報・警報・その通知、情報の収集発表、調査研究、国際協力など | 気象庁の業務全体 |
| 観測 | 自然科学的方法による現象の観察・測定 | 目視の観察も観測 |
| 予報 | 観測の成果に基づく現象の予想の「発表」 | 発表しなければ予報ではない |
| 警報 | 重大な災害の起こるおそれのある旨を警告して行う予報 | 警報は予報の一種。注意報は法律上の定義なし |
| 特別警報 | 警報の基準をはるかに超える現象で、重大な災害の起こるおそれが著しく大きい場合の警報 | 2013年8月30日施行 |
目的(第1条)は「気象業務の健全な発達を図り、災害の予防、交通の安全の確保、産業の興隆等公共の福祉の増進に寄与するとともに、気象業務に関する国際的協力を行うこと」。選択肢に「気象予報士の育成」「気象産業の保護」のような言葉が混ざるひっかけがあります。
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2. 観測(第6条〜第9条)|届出と検定7種
気象庁以外の者が観測を行う場合、①政府機関・地方公共団体の気象観測と、②それ以外の者が「成果を発表するため」「災害の防止に利用するため」に行う気象観測は、国土交通省令で定める技術上の基準に従わなければなりません(第6条)。研究や教育のための観測は除きます。基準に従って観測施設を設置したときは気象庁長官に届出(許可ではない)。廃止や変更も届出です。
| 測器 | 検定 | 備考 |
|---|---|---|
| 温度計 | 必要 | 通風筒つき、地上1.5m |
| 気圧計 | 必要 | |
| 湿度計 | 必要 | |
| 風速計 | 必要 | 風向計は検定不要 |
| 日射計 | 必要 | |
| 雨量計 | 必要 | 転倒ます型など |
| 雪量計 | 必要 | |
| 風向計・視程計・雲高計など | 不要 | 選択肢に混ぜられる |
検定は気象庁長官が行い(登録検定機関に行わせることができる)、合格した測器には検定証印が付されます。試験では「風向計は検定が必要か」(不要)、「研究用の観測にも検定測器が必要か」(不要)、「届出は許可か」(届出)が繰り返し問われます。観測の実際はアメダスとは・学科専門の観測分野で。
3. 予報・警報(第13条〜第15条の2)|気象庁がする、NHKが放送する
| 条文 | 内容 | 義務か努力か |
|---|---|---|
| 第13条 | 気象庁は、気象・地象(地震動)・津波・高潮・波浪・洪水の一般の利用に適合する予報・警報をしなければならない | 義務 |
| 第13条の2 | 特別警報(現象が特に異常で重大な災害のおそれが著しく大きいとき) | 義務 |
| 第14条 | 船舶・航空機の利用に適合する予報・警報 | 義務 |
| 第14条の2 | 水防活動の用に供する予報・警報(洪水は国交大臣・知事と共同) | 義務 |
| 第15条 | 警報を関係機関(NTT・警察庁・消防庁・国交省・海保・都道府県・NHK等)に通知。NHKは直ちに放送 | NHKの放送は義務 |
| 第15条の2 | 特別警報の通知:知事→市町村長、市町村長→住民に周知の措置 | 義務(警報は努力義務) |
| 第23条 | 気象庁以外の者は警報をしてはならない | 禁止(50万円以下の罰金) |
特別警報は大雨(浸水害・土砂災害)・暴風・暴風雪・大雪・波浪・高潮の6種類の気象特別警報に、津波(大津波警報)・噴火(噴火警報の居住地域)・地震動(震度6弱以上の緊急地震速報)を加えたものです。警報・注意報の発表基準(土壌雨量指数・表面雨量指数・流域雨量指数)は学科専門の頻出分野と警報・注意報と防災情報で。
4. 予報業務の許可(第17条〜第24条)|許可・変更の許可・休廃止の届出
| 場面 | 必要な手続き | 根拠 |
|---|---|---|
| 予報業務を始める | 気象庁長官の許可 | 第17条 |
| 予報業務の目的・範囲を変える | 気象庁長官の変更の許可 | 第19条 |
| 名称・住所など軽微な変更 | 届出 | 第19条・施行規則 |
| 予報業務を休止・廃止する | 気象庁長官への届出 | 第21条 |
| 現象の予想を行う | 気象予報士に行わせる(地震動・火山・津波は除く) | 第19条の3 |
| 警報事項を受け取ったとき | 利用者に迅速に伝達するよう努める | 第20条 |
| 予報業務の実施状況 | 記録を作成し保存 | 施行規則 |
| 基準を満たさなくなった・違反した | 改善命令、業務停止命令、許可の取消し | 第22条・第24条 |
許可の基準(第18条)は、①観測その他の予報資料の収集・解析の施設と要員、②予報業務の目的・範囲に応じた気象予報士の設置、③警報事項を迅速に受け取れる(利用者へ伝達できる)施設と要員などです。「予報の精度が一定以上であること」は基準にありません。個人の気象予報士が自分のサイトで独自予報を公表する場合も許可が必要で、許可なく行えば50万円以下の罰金です(気象庁の予報をそのまま伝えるだけなら予報業務ではない)。予報士の仕事と許可の実務は気象予報士の仕事と年収で。
5. 気象予報士(第24条の2〜第24条の25)|試験・登録・欠格・抹消
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 資格 | 気象予報士試験に合格した者は気象予報士となる「資格」を有する |
| 登録 | 気象予報士となるには気象庁長官の登録を受ける(登録免許税が必要)。登録して初めて「気象予報士」を名乗れる |
| 試験の実施 | 気象庁長官が行うが、指定試験機関(気象業務支援センター)に実施させている |
| 欠格事由 | ①気象業務法違反で罰金以上の刑を受け、執行を終えてから2年を経過しない者 ②登録を抹消され2年を経過しない者 |
| 抹消 | 死亡(相続人が届出)、欠格事由に該当、不正な手段で登録を受けたとき |
| 更新 | 更新制度はない。実務経験の有無で資格を失うこともない |
| 年齢・国籍 | 制限なし(小学生の合格者も登録できる) |
6. 罰則(第44条〜第47条)|3段階で覚える
試験では「無許可で予報業務を行った者の罰則は」「気象庁以外の者が警報をした場合は」という形で、50万円以下の罰金が答えになることが多く、「拘禁刑(懲役)」が入る選択肢は測器・標識の損壊と業務停止命令違反などに限られます。もう一つの頻出は「届出を怠った場合」で、休廃止の届出忘れは罰金ではなく過料(行政上の制裁)、観測施設の届出(第6条第3項)には罰則がないことが問われます。
7. 関連法|災害対策基本法・水防法・消防法
| 法律 | 出題される内容 | 誰が |
|---|---|---|
| 災害対策基本法 | 避難指示(警戒レベル4)・緊急安全確保(レベル5)・高齢者等避難(レベル3)。2021年改正で避難勧告を廃止 | 市町村長 |
| 災害対策基本法 | 防災基本計画(中央防災会議)、地域防災計画(都道府県・市町村) | 中央防災会議・自治体 |
| 水防法 | 洪水予報(氾濫注意情報・氾濫警戒情報・氾濫危険情報・氾濫発生情報) | 国交大臣または知事が気象庁と共同 |
| 水防法 | 水位周知河川(氾濫危険水位の通知) | 国交大臣・知事 |
| 消防法 | 火災気象通報(気象が火災の予防上危険なとき) | 気象庁(気象官署)→都道府県知事→市町村長 |
| 消防法 | 火災警報 | 市町村長 |
| 気象業務法施行令 | 検定測器の種類、予報・警報の種類 | — |
警戒レベルと気象庁の情報の対応は、レベル5=緊急安全確保(大雨特別警報・氾濫発生情報)、レベル4=避難指示(土砂災害警戒情報・氾濫危険情報・高潮警報)、レベル3=高齢者等避難(大雨警報・洪水警報・氾濫警戒情報)、レベル2=注意報、レベル1=早期注意情報。気象庁の情報は「レベル相当」で、避難の指示そのものは市町村長が出す、という切り分けが問われます。
ひっかけ10選|選択肢の作られ方
| ひっかけ | 正しくは |
|---|---|
| 「予報業務は気象庁長官への届出で行える」 | 許可(第17条) |
| 「予報業務の休止・廃止は許可が必要」 | 届出(第21条) |
| 「予報業務許可事業者は警報を発表できる」 | 気象庁以外は警報禁止(第23条) |
| 「許可事業者は警報事項を利用者に伝達しなければならない」 | 伝達するよう努めなければならない(努力義務) |
| 「NHKは警報を放送するよう努める」 | 直ちに放送しなければならない(義務) |
| 「津波は地象である」 | 水象。地震動が地象 |
| 「試験に合格すれば気象予報士である」 | 登録を受けて気象予報士となる |
| 「気象予報士の登録は5年ごとに更新」 | 更新制度はない |
| 「風向計は検定が必要」 | 検定7種に風向計はない |
| 「避難指示は気象庁が出す」 | 市町村長(災害対策基本法) |
気象業務法・関連法 一問一答31問(分野別の成績が出ます)
本番と同じく「正しいもの/誤っているもの」を選ぶ形式。分野別の正解数で弱点が分かります。
気象予報士試験の定番テキスト
独学なら「一般気象学(小倉義光)」で土台を作り、「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト」で学科の穴を埋め、過去問は最低5回分を3周するのが王道です。実技は解説つきの過去問集が必須です。
法規の勉強法|条文は読まず、「表」で覚える
- この記事の表を3回読む。条文そのものは読まなくてよい。「誰が・何を・許可か届出か・義務か努力か」だけを表で覚える。
- 過去問の法規4問を10回分解く(40問)。同じ論点の言い換えが9割。間違えた選択肢を「ひっかけ10選」に追記していく。
- 試験1週間前に一問一答31問をもう一度。法規は忘れやすいので直前に固める。本番では法規4問を最初に解いて「4点確保」してから物理に進むと落ち着く。
学科一般全体の配分と他の分野は学科一般の頻出分野と対策、勉強計画は独学の勉強法、合格基準は合格基準と配点で。
気象業務法についてよくある質問
Q. 気象予報士試験の法規は何問出ますか?
A. 学科一般15問のうち約4問です。気象業務法が中心で、災害対策基本法・水防法・消防法から1問出ることもあります。知っていれば確実に取れるため、合格者のほとんどは法規で満点を取っています。
Q. 気象業務法で最も出るのは何ですか?
A. 予報業務の許可(許可・変更の許可・休廃止の届出・予報士の設置・警報事項の伝達)と、警報(気象庁のみ・NHKの放送義務・特別警報の通知義務)、定義(気象・地象・水象、予報・警報)の3つです。
Q. 個人の気象予報士が独自の予報をSNSで発表してもいいですか?
A. 独自の予想を発表する「予報業務」には気象庁長官の許可が必要で、資格があるだけでは行えません。気象庁の予報をそのまま伝える、解説する、過去のデータを分析するのは予報業務にあたりません。
Q. 気象予報士の登録に更新はありますか?
A. ありません。一度登録すれば、欠格事由に該当したり不正な手段で登録を受けたりしない限り抹消されません。実務経験がなくても資格は失いません。
Q. 検定が必要な気象測器は何ですか?
A. 温度計・気圧計・湿度計・風速計・日射計・雨量計・雪量計の7種類です。風向計や視程計は含まれません。届出観測や政府機関の観測に使う場合に検定合格品が必要で、研究・教育用は対象外です。
Q. 特別警報と警報の法律上の違いは?
A. 特別警報は警報の基準をはるかに超える現象で重大な災害のおそれが著しく大きい場合に気象庁が発表します(第13条の2)。通知を受けた都道府県知事は市町村長に、市町村長は住民に周知する措置をとる義務があり、警報の場合の努力義務より強い規定です。
Q. 条文の番号は覚える必要がありますか?
A. 不要です。試験は「誰が」「何を」「許可か届出か」「義務か努力か」を問うので、条文番号が選択肢に出ることはほぼありません。この記事の表の内容が言えれば十分です。
- 定義:気象=大気、地象=地震・火山・地面(地震動を含む)、水象=津波・高潮・波浪・洪水。予報は「発表」、警報は「重大な災害のおそれ」。
- 観測:技術上の基準、設置は届出、検定7種(風向計は含まない)。
- 警報:気象庁のみ。NHKは直ちに放送(義務)。特別警報の周知は義務。
- 許可:予報業務=許可、目的範囲の変更=許可、休廃止=届出、予想は気象予報士、警報事項の伝達は努力義務。
- 予報士:合格+登録。欠格2年。更新なし。
- 罰則:損壊3年/100万、無許可予報・無許可警報・未検定測器50万、改善命令違反・報告違反30万、休廃止届出忘れ20万の過料。
- 関連法:避難指示=市町村長、洪水予報=国交大臣・知事と気象庁が共同、火災気象通報=気象庁→知事。
出典:気象業務法(昭和27年法律第165号、最終改正を反映した現行法)、気象業務法施行令・施行規則、災害対策基本法、水防法、消防法、気象庁「気象予報士制度」「特別警報について」、気象業務支援センター「気象予報士試験 過去の試験問題」。
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