こんにちは!のぶやんです。
「北海道には台風が来ない」——そう聞いたことがある人は多いと思います。たしかに北海道は台風の接近数が47都道府県で最も少ないのですが、2025年7月には9年ぶりに台風5号が上陸し、「来ないはず」が崩れたばかりです。この記事では、北海道に台風が来にくい3つの理由を気象予報士がわかりやすく解説したうえで、気象庁75年分のデータで「本当に来ないのか」を検証し、実際に上陸した台風の一覧と、台風でなくなってからの危険までまとめました。

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- 北海道に台風が来にくい理由は3つ。①周りの海水温が低く台風の勢力を保てない、②秋は偏西風と寒気で温帯低気圧に変わってしまう、③太平洋高気圧の縁を回る台風は北海道の手前で東へそれる。
- データで見ても北海道は台風の接近数が年平均1.9回で47都道府県中最下位(沖縄は7.7回)。1951年以降に北海道へ最初に上陸した台風は7個だけです。
- ただし2025年7月15日には台風5号が襟裳岬付近に上陸(9年ぶり・統計開始以来初の7月上陸)。本州を縦断した台風の「再上陸」は20回で全国1位、温帯低気圧に変わった後に暴風・大雨をもたらす例も多く、「来ない」と油断はできません。
この記事では、北海道に台風が来ない3つの理由を気象予報士がわかりやすく解説したうえで、気象庁75年分のデータで「本当に来ないのか」を検証し、実際に上陸した7個の台風と、台風でなくなってからの危険までまとめました。
北海道は本当に台風が来ない?気象庁75年のデータで確認
まず「イメージ」ではなく数字で確認しておきましょう。気象庁の統計(1951〜2025年)をもとに当ブログで集計した台風の接近数ランキングでは、北海道の接近数は年平均1.9回で47都道府県中47位。1位の沖縄県(7.7回)の4分の1、九州や関東(3〜4回)の半分程度しか台風が近づきません。
| 項目 | 北海道 | 備考 |
|---|---|---|
| 台風の接近数(年平均・都道府県別) | 1.9回/47位 | 沖縄7.7回・鹿児島3.9回・東京3.3回。詳細は接近数ランキング |
| 北海道地方への接近数(1951〜2025年) | 119個(年平均1.6個) | 最多は2016年の5個。2000年以降の平均は1.7個 |
| 北海道に最初に上陸した台風 | 7個 | 全国の上陸数は218個。1位は鹿児島県の45個 |
| 北海道への再上陸(本州などに上陸後) | 20回(全国1位) | 上陸+再上陸の合計は27回 |
接近数の少なさでは全国1位の北海道ですが、「上陸したことがない県」ではありません。台風が一度も上陸していない23都府県と「本当に台風が少ない県」は台風が来ない県はどこ?で、地震・雪・雨まで含めた災害の少なさは災害が少ない県ランキングで比べられます。つまり「台風の中心が北海道に来る」ことはたしかに少ないのですが、ゼロではなく、本州を縦断してきた台風が最後に北海道へ再上陸するケースは全国で最も多いのです。「上陸」「再上陸」「接近」の定義の違いは台風の「上陸」「通過」「接近」の定義にまとめています。
地方別の接近数を比べる
気象庁が地方ごとに集計している接近数(1951年〜)を並べると、北海道が全国でどの位置にあるかがひと目でわかります。
| 順位 | 地方 | 合計(1951〜2025年) | 年平均 | 平年値 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 沖縄 | 553個 | 7.4個 | 7.7個 |
| 2 | 伊豆・小笠原 | 401個 | 5.3個 | 5.4個 |
| 3 | 奄美 | 300個 | 4.0個 | 4.3個 |
| 4 | 九州南部 | 279個 | 3.7個 | 3.9個 |
| 5 | 九州北部 | 257個 | 3.4個 | 3.8個 |
| 6 | 東海 | 248個 | 3.3個 | 3.5個 |
| 7 | 四国 | 244個 | 3.3個 | 3.3個 |
| 8 | 関東甲信 | 238個 | 3.2個 | 3.3個 |
| 9 | 近畿 | 235個 | 3.1個 | 3.4個 |
| 10 | 中国 | 213個 | 2.8個 | 3個 |
| 11 | 東北 | 192個 | 2.6個 | 2.7個 |
| 12 | 北陸 | 186個 | 2.5個 | 2.8個 |
| 13 | 北海道 | 119個 | 1.6個 | 1.9個 |
北海道に台風が来ない理由①|海水温が低くて台風の勢力を保てない
1つ目の理由は、北海道付近の緯度が高く、海水温が低いことです。台風は、熱帯の暖かい海から蒸発した水蒸気が雲になるときに出す熱をエネルギーにして発達する「熱帯低気圧」の強いもの(最大風速17.2m/s以上)です。
この発達を続けるには海面水温26〜27℃以上の暖かい海が必要とされています。ところが、台風が最も多くなる9月中旬の海面水温の平年値(1991〜2020年)を見ると、沖縄付近が28〜29℃あるのに対して、北海道付近は18℃前後しかありません。

暖かい海が台風の”燃料”だとすると、北海道近海はガソリンスタンドのない道路のようなもの。北上するにつれてエネルギー補給が途絶え、台風は「熱帯低気圧」に格下げされてしまいます。陸地の上を進むときも同じで、上陸そのものが台風を弱める理由のひとつです。
実際に台風が北海道に到達する前に熱帯低気圧に変わった例として、2007年8月1〜4日の天気図を見てみましょう。日本の南の海上では945hPaまで発達した台風が、九州を通過して北上するうちに勢力を弱め、北海道に近づくころには熱帯低気圧になっています。

2025年は「海水温が平年より3℃高い」ことで上陸できた
この理由①を逆手に取ったのが、2025年7月15日に襟裳岬付近に上陸した台風5号です。このときは三陸沖〜北海道沖の海面水温が平年より3℃前後高く、しかも時速約50kmと速いスピードで北上したため、勢力が衰えきる前に北海道へ到達しました。海水温の上昇が続けば、北海道への上陸は今よりも珍しくなくなる可能性があります(後述)。
北海道に台風が来ない理由②|偏西風と寒気で温帯低気圧に変わってしまう
2つ目の理由は、北海道に着く前に台風が温帯低気圧に変わってしまうことです。温帯低気圧は、北の寒気と南の暖気がぶつかる中緯度で発達し、前線をともなう低気圧のこと。台風(熱帯低気圧)が暖かい空気だけでできているのに対して、温帯低気圧は「南北の温度差」をエネルギーにしています。
秋になると北から冷たい空気が南下し、上空には偏西風が吹くようになります。北上してきた台風が偏西風に取り込まれ、北側の寒気を巻き込むと、構造が変わって温帯低気圧になります。日本の最も北にある北海道は、秋にはほかの地域より早く偏西風と寒気の影響を受けるため、台風のままではなく温帯低気圧の姿で北海道にやってくることが多いのです。
ここで大事なのは、温帯低気圧に変わっても危険は減らないということです。温帯低気圧化すると中心付近の風は弱まることがある一方で、強風の範囲は台風のときより広がり、前線が活発になって大雨になることもあります。気象庁が「台風から変わった温帯低気圧」と呼んで警戒を続けるのはこのためです。気象学者の荒木健太郎さんの注意喚起も載せておきます。
実際に台風が温帯低気圧に変わった例として、2017年9月16〜18日の天気図を見てみましょう。九州付近では台風だったものが、18日には構造が変わって温帯低気圧になり、しかもかなり発達しています。このため北海道では1時間に85mmの猛烈な雨と暴風を観測しました。

温帯低気圧の代表的な被害例が2004年9月8日の台風18号です。長崎に上陸したあと日本海を北上し、北海道付近で温帯低気圧に変わる前後に猛烈な風が吹き、札幌で最大瞬間風速50.2m/s(札幌の観測史上1位)を記録。北海道大学のポプラ並木が倒れ、道内で大規模な停電と倒木被害が出ました。
北海道に台風が来ない理由③|太平洋高気圧の縁を回る台風は手前で東へそれる
3つ目は進路の問題です。台風は自分で進むのではなく、周りの風に流されて動きます。夏から秋の台風は太平洋高気圧の縁(へり)に沿って北上し、偏西風に乗ると北東〜東へ向きを変えるのが基本の動きです。
この「転向点」は多くの場合、本州の南〜東の海上にあります。すると台風は関東や東北の東海上を通って東へ抜けてしまい、北海道には中心が届きません。北海道に台風が来るのは、太平洋高気圧が日本の東海上に強く張り出して、台風が北へまっすぐ押し上げられる形になったときや、2016年のように高気圧の縁が北海道の東まで伸びていたときです。太平洋高気圧の仕組みは太平洋高気圧はなぜできる?、台風が9月に多い理由は台風はなぜ9月に多い?で詳しく解説しています。
それでも来る!北海道に上陸した台風は7個
北海道に台風が来にくい理由を挙げてきましたが、気象庁の統計が始まった1951年以降、北海道に最初に上陸した台風は7個あります(本州などに上陸したあと北海道に再上陸したものは除く)。2023年までは6個すべてが8月の上陸でしたが、2025年7月15日に台風5号が襟裳岬付近に上陸し、9年ぶり・統計開始以来初めての「7月の北海道上陸」となりました。
| 年月日 | 台風 | 上陸地点 | 上陸時の中心気圧 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 1952年8月 | 1952年台風9号 | 北海道 | 990hPa | 戦後まもない統計初期の上陸 |
| 1956年8月 | 1956年台風9号 | 北海道 | 994hPa | |
| 1962年8月 | 1962年台風9号 | 北海道 | 990hPa | |
| 1993年8月 | 1993年台風11号 | 釧路市付近 | 980hPa | 北海道上陸では最も低い気圧のひとつ |
| 2016年8月17日 | 2016年台風7号 | 襟裳岬付近 | 980hPa | 2016年は北海道に3個上陸(7号・11号・9号は再上陸) |
| 2016年8月21日 | 2016年台風11号 | 釧路市付近 | 1002hPa | 直後に台風9号(再上陸)と10号(岩手)が続き、十勝・南富良野で河川氾濫 |
| 2025年7月15日 | 2025年台風5号(ナーリー) | 襟裳岬付近 | 992hPa | 9年ぶり・統計開始以来初の7月上陸。海水温が平年より約3℃高かった |
上陸時の中心気圧を見ると980〜1002hPaで、九州や本州に上陸するような「非常に強い」勢力の台風は来ていません。それでも2016年8月は1週間のうちに3個の台風が北海道に上陸し、さらに東北太平洋側に初めて上陸した台風10号の大雨で、南富良野町の空知川が決壊、十勝地方の橋や道路が流されるなど、道内の農業に大きな被害が出ました。
また「再上陸」まで含めると北海道は20回で全国1位。本州に上陸した台風が日本列島を縦断し、津軽海峡を越えて最後にたどり着く「終着駅」だからです。上陸地点や都道府県別の順位は台風の上陸数が多い都道府県・市町村ランキング、歴代最強の上陸台風は上陸時の中心気圧ランキングで確認できます。
北海道への台風は今後増える?|海水温の上昇と近年の変化
北海道に台風が来にくい最大の理由は「海水温の低さ」でした。しかし日本近海の海面水温は100年あたり1℃以上のペースで上昇しており、とくに三陸沖〜北海道南東沖は夏の海水温の上昇が大きい海域です。2016年の3個上陸、2025年7月の上陸はいずれも海水温が平年より高い年に起きています。
将来、台風の「数」が増えるかどうかは研究でも意見が分かれていますが、強い勢力を保ったまま北上する台風が増えるという予測は多くの研究で共通しています。「北海道には台風が来ない」という前提は、少しずつ通用しなくなりつつあると考えておいた方がよさそうです。
台風が発生したら、台風のたまご 最新で発生状況と各国の進路予想を、台風データベースで過去の台風の経路を確認できます。北海道の各地点の観測史上の最大風速・日降水量は地点別の気候データ(例:札幌・釧路・えりも岬)、特定の日の天気は過去の天気検索で調べられます。
あなたの県の台風接近数は全国何位?|47都道府県 指標切替ランキングツール
台風の接近数のほか、気温・降水量・雪・風・雷・地震など20の指標を切り替えて47都道府県を比べられるツールです。都道府県名を選ぶと順位・偏差値・全国平均との差が出ます。
北海道と台風に関するよくある質問
北海道に台風が来ないのはなぜ?
理由は3つです。①北海道付近の海水温(9月でも18℃前後)が低く、台風の勢力を保てない、②秋は偏西風と寒気の影響で台風が温帯低気圧に変わってしまう、③太平洋高気圧の縁を回る台風は本州の東海上で東へそれるため、台風の中心が北海道まで届くことは少なくなります。
北海道に台風が上陸したことはある?
あります。気象庁の統計が始まった1951年以降、北海道に最初に上陸した台風は7個。1952年・1956年・1962年・1993年・2016年(2個)はいずれも8月、そして2025年7月15日には台風5号が襟裳岬付近に上陸し、統計開始以来初めての7月上陸となりました。本州に上陸したあと北海道に再上陸した台風は20回で全国1位です。
北海道に台風が来る時期はいつ?
台風の中心が北海道に近づくのは8月〜9月が中心です。8月は太平洋高気圧の張り出し方によって台風のまま到達することがあり、9月は温帯低気圧に変わって北海道を通過するパターンが多くなります。北海道地方への接近数は年平均1.6個、最も多かった年は2016年の5個です。
台風が温帯低気圧に変わったら安心?
安心できません。温帯低気圧に変わると中心付近の風は弱まることがありますが、強風の範囲は広がり、前線が活発になって大雨になることがあります。2004年9月の台風18号は温帯低気圧に変わる前後に札幌で最大瞬間風速50.2m/s(観測史上1位)を記録し、2017年9月の台風18号から変わった温帯低気圧は北海道に1時間85mmの猛烈な雨をもたらしました。
北海道旅行の台風リスクはどのくらい?
都道府県別の台風接近数は北海道が年平均1.9回で全国最下位(沖縄7.7回、東京3.3回)なので、旅行が台風で中止になる確率は本州以南よりかなり低いです。ただし8月下旬〜9月は温帯低気圧に変わった台風で飛行機やJRが止まることがあるため、その時期は出発の3日前から台風のたまご最新情報をチェックしておくと安心です。
台風の「上陸」「再上陸」「接近」はどう違う?
「上陸」は台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸線に達すること、「再上陸」はいったん海に出た台風が再び上陸すること、「接近」は台風の中心が気象官署から300km以内に入ることです。沖縄は定義上「上陸」できないため、上陸数ランキングでは0個になります。詳しくは台風の「上陸」「通過」「接近」の定義の違いをどうぞ。
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まとめ
- 北海道に台風が来ない理由は「海水温が低い」「偏西風と寒気で温帯低気圧に変わる」「太平洋高気圧の縁を回って手前で東へそれる」の3つ
- データでも北海道は台風の接近数が年平均1.9回で47都道府県中最下位。北海道に最初に上陸した台風は1951年以降で7個
- ただし2025年7月15日に台風5号が襟裳岬付近に上陸(9年ぶり・初の7月上陸)。本州縦断後の再上陸は20回で全国1位
- 温帯低気圧に変わっても暴風・大雨の危険は続く(2004年 札幌50.2m/s、2017年 1時間85mm)
- 海水温の上昇で「強いまま北上する台風」は増える見込み。台風が発生したら台風のたまご最新情報で進路をチェック
以上が、「北海道に台風が来ないのはなぜ?」でした。読んでいただきありがとうございました。


