昭和の三大台風(室戸・枕崎・伊勢湾)とは?なぜ被害が大きかったのか、現代の台風と比べて気象予報士が解説

室戸・枕崎・伊勢湾台風の経路を重ねた日本地図のイメージ 気象

「昭和の三大台風」とは、室戸台風(1934年)・枕崎台風(1945年)・伊勢湾台風(1959年)の3つを指します。いずれも死者・行方不明者が3,000人を超え、日本の防災の仕組みを変えた台風です。

この記事では、3つの台風がどんな台風だったのか、なぜそれほど被害が大きかったのか、そして現代の台風(2018年台風21号や2019年台風19号など)と比べて何が違うのかを、気象予報士が気象庁の記録をもとに解説します。

のぶやん
のぶやん

3つに共通するのは「9月」「異常に低い気圧」「高潮」。そして「予報・防災体制がまだ整っていなかった」ことです。

昭和の三大台風 早見表

室戸台風枕崎台風伊勢湾台風
上陸日1934年(昭和9年)9月21日1945年(昭和20年)9月17日1959年(昭和34年)9月26日
上陸地点高知県 室戸岬付近鹿児島県 枕崎市付近和歌山県 潮岬の西
上陸時の中心気圧911.6hPa(室戸岬で観測)916.1hPa(枕崎で観測)929hPa
最大瞬間風速室戸岬 60m/s超(計測限界)細島(宮崎)75.5m/s伊良湖(愛知)55.3m/s
死者・行方不明者約3,000人(死者2,702・不明334)3,756人(死者2,473・不明1,283)5,098人(死者4,697・不明401)
負傷者約15,000人約2,500人約39,000人
最大の被害大阪の高潮(4m超)、学校校舎の倒壊広島県の土砂災害(死者・不明2,000人超)名古屋・伊勢湾岸の高潮(3.5m超)
その後の変化鉄筋コンクリート校舎の普及—(終戦直後で記録も乏しい)災害対策基本法の制定(1961年)
昭和の三大台風の比較(気象庁「災害をもたらした気象事例」ほか)

【ツール】都道府県の台風・風・雨の指標を切り替えて順位を確認

下のツールでは、台風の接近数・平均風速・雨の日の割合・降水量などを年間・月別に切り替えて、47都道府県の順位と偏差値を確認できます(高知県を黄色で強調表示)。

室戸台風(1934年9月21日)|陸上の気圧の世界記録

9月21日の午前5時ごろ、高知県室戸岬付近に上陸。室戸岬測候所で観測した911.6hPaは、当時の陸上における世界最低気圧で、現在も日本の上陸台風の記録です。気象庁の統計(1951年以降)には含まれないため「参考記録」扱いですが、統計上1位の第二室戸台風(925hPa)より13hPa以上低い数字です。

被害を大きくしたのは大阪湾の高潮でした。台風が大阪湾の西側を北上したため、南寄りの暴風で海水が湾奥に吹き寄せられ、4mを超える高潮が大阪市街に流れ込みました。さらに登校時間帯と重なり、大阪市内の小学校の校舎が次々に倒壊して児童が多数犠牲になっています。この教訓から、学校の鉄筋コンクリート化が進みました。

枕崎台風(1945年9月17日)|終戦から1か月後

9月17日午後2時ごろ鹿児島県枕崎市付近に上陸。枕崎で916.1hPaを観測し、これは室戸台風に次ぐ記録です。宮崎県細島では最大瞬間風速75.5m/sを記録しました。

この台風の特殊性は時期です。終戦からわずか1か月、原爆投下から6週間後の広島県を直撃し、山津波(土石流)で2,000人以上が犠牲になりました。気象観測網も報道も機能していない状況で、警報が住民に届かないまま夜間に襲われた——気象庁の記録にも「気象情報も少なかったことや防災体制も十分でなかったため」被害が拡大した、と記されています。

伊勢湾台風(1959年9月26日)|戦後最大の台風災害

9月26日午後6時ごろ和歌山県潮岬の西に上陸。上陸時の中心気圧は929hPaで、気象庁の統計では伊勢湾台風として第2位です(1位は第二室戸台風の925hPa)。

この台風の恐ろしさは「非常に広い暴風域」と「速度」でした。時速60km以上で本州を縦断し、伊勢湾の奥に位置する名古屋市周辺に3.5mを超える高潮を引き起こしました。名古屋港周辺は海面より低いゼロメートル地帯で、貯木場の木材が流れ出して家屋を破壊。死者・行方不明者5,098人のうち、愛知県だけで3,300人以上が犠牲になっています。

伊勢湾台風を機に1961年、災害対策基本法が制定されました。現在の防災計画・避難情報・気象庁の警報の枠組みは、この台風から始まっています(注意報・警報・特別警報の違い)。

なぜこれほど被害が大きかったのか|4つの共通点

  1. 気圧が極端に低かった:上陸時の気圧が910〜930hPa台。現代で「非常に強い」とされる2018年台風21号(950hPa)や2019年台風15号(960hPa)より20〜50hPa低く、風の強さも高潮の高さも別次元でした。
  2. 高潮:3つとも湾の西側を北上するコースで、南風が湾奥に海水を押し込みました。台風の右側で風が強い性質(台風の右側が危険な理由)が最悪の形で出た例です。
  3. 予報・警報が届かなかった:気象衛星もレーダーもなく、進路予報の精度は今とは比べものになりません。伊勢湾台風では警報が出ていましたが、深夜の高潮に住民が対応できませんでした。
  4. 建物と土地の弱さ:木造家屋、ゼロメートル地帯、河口の低地への人口集中。

現代の台風と比べると

台風上陸時気圧死者・行方不明者備考
伊勢湾台風(1959)929hPa5,098人高潮
第2室戸台風(1961)925hPa202人伊勢湾台風の2年後、同規模でも被害は40分の1
2018年 台風21号950hPa14人関西空港の浸水、大阪で高潮の記録更新
2019年 台風15号(房総半島台風)960hPa9人千葉県で長期停電
2019年 台風19号(東日本台風)955hPa100人超広範囲の記録的大雨・河川氾濫
昭和の三大台風と近年の台風の比較(死者数は消防庁・内閣府資料などの概数)

注目してほしいのが第2室戸台風(1961年)です。伊勢湾台風とほぼ同じ気圧・同じ9月・近いコースで大阪を直撃したのに、犠牲者は約200人。伊勢湾台風の教訓から高潮対策と避難が機能した結果で、「予報と防災で被害は減らせる」ことを示した台風として、気象の世界では必ず引き合いに出されます。

一方で2019年台風19号は、気圧では三大台風に遠く及ばないのに100人以上が犠牲になりました。現代の台風災害の主役は暴風・高潮から「大雨・河川氾濫」へ移っています。過去の台風の記録と上陸時気圧の一覧は上陸時の中心気圧が低い台風ランキングTOP100、あなたの街で過去に起きた台風・水害は市区町村別 災害履歴データベースで調べられます。

三大台風はなぜ全部9月なのか

9月は太平洋高気圧が東に退いて本州へのコースが開き、海面水温がピークで勢力が衰えず、偏西風で加速して一気に上陸する——「強いまま本州に来る」条件がそろう月です。理由の詳細は台風はなぜ9月に多い?月別の発生数・接近数・上陸数で解説しています。上陸時気圧ランキングの上位を月別に数えても、9月が圧倒的です。

上陸した月台風数(上位110台風中)
6月3
7月12
8月35
9月46
10月13
11月1
上陸時の中心気圧が低い上位110台風の月別内訳

都道府県ランキングで見る三大台風の上陸地|高知・鹿児島・愛知

室戸台風(高知)・枕崎台風(鹿児島)・伊勢湾台風(愛知)の上陸地の県について、接近数・風速・雨のランキングでの位置を確認します。

台風の接近数の多さ:高知は32位

順位都道府県台風の接近数偏差値
1位沖縄県7.7回107.3
2位宮崎県3.9回57.4
3位鹿児島県3.9回57.4
4位山口県3.8回56.1
5位福岡県3.8回56.1
6位佐賀県3.8回56.1
7位長崎県3.8回56.1
8位熊本県3.8回56.1
9位大分県3.8回56.1
10位岐阜県3.5回52.1
32位高知県3.3回49.5
台風の接近数の多さランキング(年平均接近数)

高知県は32位(3.3回、偏差値49.5)。1位は沖縄県(7.7回)、47位は北海道(1.9回)、全国平均は3.3回です。比較:鹿児島3位・和歌山19位・愛知12位・東京25位。詳しくは台風の接近数ランキングあなたの市町村には年何個来る?気象庁データをご覧ください。

平均風速の強さ:高知は46位

順位都道府県平均風速偏差値
1位沖縄県5.3m/s83.3
2位秋田県4.3m/s69.3
3位石川県4.0m/s65.1
4位千葉県3.9m/s63.7
5位和歌山県3.8m/s62.3
6位青森県3.7m/s60.9
7位北海道3.6m/s59.5
8位三重県3.6m/s59.5
9位兵庫県3.6m/s59.5
10位広島県3.6m/s59.5
46位高知県1.8m/s34.2
平均風速の強さランキング(平年値)

高知県は46位(1.8m/s、偏差値34.2)。1位は沖縄県(5.3m/s)、47位は山形県(1.7m/s)、全国平均は2.9m/sです。比較:鹿児島14位・和歌山5位・愛知19位・東京26位。詳しくは平均風速ランキングをご覧ください。

9月の雨の日の多さ:高知は7位

順位都道府県雨の日の割合(9月)偏差値
1位栃木県39.5%66.4
2位富山県39.1%65.4
3位宮崎県39.0%65.1
4位千葉県38.8%64.6
5位秋田県38.4%63.5
6位石川県38.3%63.3
7位高知県38.2%63.0
8位群馬県37.7%61.7
9位鳥取県37.7%61.7
10位埼玉県36.9%59.6
9月の雨の日の多さランキング(約60年の天気出現率)

高知県は7位(38.2%、偏差値63.0)。1位は栃木県(39.5%)、47位は岡山県(26.2%)、全国平均は33.2%です。比較:鹿児島30位・和歌山38位・愛知23位・東京18位。詳しくは雨の日が多い都道府県ランキング(年間・月別)をご覧ください。

年降水量の多さ:高知は1位

順位都道府県年降水量偏差値
1位高知県2,666mm73.8
2位宮崎県2,626mm72.9
3位鹿児島県2,435mm68.4
4位石川県2,402mm67.6
5位富山県2,374mm66.9
6位静岡県2,327mm65.8
7位福井県2,300mm65.2
8位沖縄県2,161mm61.9
9位熊本県2,007mm58.3
10位佐賀県1,951mm56.9
年降水量の多さランキング(平年値)

高知県は1位(2,666mm、偏差値73.8)。1位は高知県(2,666mm)、47位は長野県(965mm)、全国平均は1,657mmです。比較:鹿児島3位・和歌山30位・愛知25位・東京24位。詳しくは降水量が多い都道府県・市町村ランキングをご覧ください。

よくある質問

Q. 三大台風クラスは今も来る?

中心気圧910〜920hPaでの上陸は1961年の第2室戸台風以降ありませんが、2018年の台風21号(950hPa)で関西空港が浸水したように、勢力が弱くても被害は大きくなります。上陸時の中心気圧ランキングで歴代の記録を確認できます。

Q. なぜ昔の台風は死者が多かった?

高潮・堤防の脆弱さ、予報と警報の不備、木造家屋の多さが理由です。伊勢湾台風の死者の多くは高潮による溺死で、これを機に災害対策基本法が制定されました。

Q. 室戸岬の911.6hPaは世界記録?

上陸時の気圧としては日本記録で、当時は世界の地上観測でも最低クラスでした。現在の世界記録は1979年の台風20号(Tip)の870hPa(海上)です。

Q. 三大台風はなぜすべて9月?

海面水温が最も高く、偏西風が南下し始めて本州に向かう経路になるためです。台風はなぜ9月に多いのかで解説しています。

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まとめ
  • 昭和の三大台風=室戸台風(1934)・枕崎台風(1945)・伊勢湾台風(1959)。いずれも9月に上陸
  • 上陸時気圧は911.6・916.1・929hPa。現代の「非常に強い台風」より20〜50hPa低い
  • 被害の主因は高潮と、予報・防災体制の未整備。伊勢湾台風は5,098人が犠牲になり災害対策基本法の制定につながった
  • 同規模の第2室戸台風(1961)は犠牲者約200人。防災で被害は減らせる
  • 現代の台風災害の主役は暴風・高潮から大雨・河川氾濫へ

出典:気象庁「台風の統計資料」(発生数・接近数・上陸数、1951年〜)、気象庁「予報用語」、気象庁「災害をもたらした気象事例」、内閣府・消防庁の災害資料。記事内の数値は気象庁の年間確定値にあわせて自動更新しています(最終更新:2026年9月2日、確定年:2025年)。

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