網走市美岬の山林火災、なぜ燃えやすかった?13日間1mm以上の雨なし・湿度27%|林野火災注意報の基準(1)まで「あと1.5mm」と48地点の乾燥チェッカー【2026年10月】

気象

こんにちは!気象予報士ののぶやんです。

10月15日(木)の夕方、北海道網走市美岬の能取湖近くの国有林で山林火災が発生しました。報道によると、午後5時半ごろに「山の中で煙と赤い火のようなものが見える」と通報があり、火元が山奥で消防車両が近寄れない状態となり、15日夜の時点で北海道が自衛隊への災害派遣要請を検討していると報じられました。16日朝の時点で、けが人や住宅への被害は確認されていません(NHK、北海道放送などの報道)。

わかっていること(10月16日朝の報道)
  • 場所:網走市美岬、能取湖近くの国有林(航空自衛隊網走分屯基地の近く、北海道放送)
  • 発生:10月15日午後5時半ごろ通報
  • 状況:消防車両が近寄れず、16日朝の時点で火は完全には消し止められていない。けが人や住宅への被害は確認されていない(NHK)
  • 北海道は15日夜、自衛隊への災害派遣要請を検討
※最新の状況は報道機関・網走市の発表をご確認ください。

火事の原因などはこの記事では扱いません。ここで取り上げるのは、「なぜ燃え広がりやすい天気だったのか」です。網走のアメダスを調べると、1mm以上の雨は10月2日が最後で、15日まで13日間ほぼ雨なし。前30日間の雨は31.5mmと平年の30%しかなく、15日は最小湿度27%まで乾いていました。

2025年の大船渡の大規模林野火災を受けて、雨の少なさをもとに市町村が「林野火災注意報」「林野火災警報」を出す仕組みが各地で始まっています(網走地区消防組合も2026年6月に網走市で林野火災注意報を発令しています)。国が示した基準の例に当てはめると、網走の前30日間の雨は基準(1)の「30mm以下」をわずか1.5mm上回っているだけでした。全国48地点のいまの乾燥ぐあいを、気象庁の最新の観測で判定するツールもつけました。

この記事の結論(30秒で読める版)
  • 網走は10月3〜15日の13日間、1mm以上の雨なし。前30日間(9/16〜10/15)の雨は31.5mm=平年(106.6mm)の30%。
  • 火災が起きた15日は日平均湿度46%・最小湿度27%。通報のあった午後5時台前後(17時・18時の観測)は気温13℃・湿度39〜40%・西の風4〜5m/sで、この日の最大瞬間風速は16.3m/s(西)でした。
  • 林野火災注意報の基準(1)は「前3日間1mm以下、かつ前30日間30mm以下」。網走は前3日間0mm、前30日間31.5mmで、基準(1)まであと1.5mm。雨が降らなければ10月20日に基準(1)に達する計算です。
  • 2025年2月の大船渡(岩手)の大規模林野火災のときは、前30日間の雨がわずか3.5mm。網走はそこまでではないものの、秋としてはかなり乾いた状態です。
  • 全国48地点(10月15日まで)では基準(1)に該当する地点はなし。ただし青森(平年の24%)・網走(30%)・秋田(33%)など東北北部とオホーツク海側で雨が少なく、関東南部の沿岸(千葉・横浜・東京・水戸)は逆に平年の1.5〜2倍以上。

【ツール】あなたの街は「林野火災注意報」の基準に近い?48地点の乾燥チェッカー

地点を選ぶと、気象庁の観測データ(きのうまで)を読み込んで、前3日間・前30日間の降水量、実効湿度、雨が降っていない日数を計算し、林野火災注意報の基準(1)に照らして判定します。ページを開くたびに最新の観測で計算するので、冬から春の乾燥シーズンにも使えます。

林野火災の気象条件チェッカー(48地点)
地点:
※判定は、大船渡の火災を受けて国が示した基準の例(福岡市などが採用)にもとづく「林野火災注意報」の基準(1)(前3日間の合計降水量1mm以下、かつ前30日間の合計降水量30mm以下)を、各地点の気象台などの観測値に当てはめたものです。基準や運用は市町村によって異なる場合があります。実際の発令は市町村ごとに、乾燥注意報・強風注意報の発表状況や当日の降水の見込みも考えて判断されます。発令状況はお住まいの市町村・消防本部の情報でご確認ください。実効湿度は日平均湿度から係数0.7で30日分を重みづけして求めた推定値です。

「林野火災注意報」「林野火災警報」とは?基準を図で確認

2025年2月に岩手県大船渡市で起きた大規模な林野火災をきっかけに、国は雨の少なさなど気象の条件をもとにした基準の例を示し、各市町村が火災予防条例で定めて「林野火災注意報」「林野火災警報」を出す仕組みが広がりました。発令するのは市町村長(消防)で、たとえば福岡市は2026年3月1日から運用しています。網走地区消防組合も、2026年6月5日に網走市で林野火災注意報を発令しました(同組合のX)。発令中は、山林やその周辺でのたき火や火入れなど、火の使用が制限されます。

基準(1)前3日間の雨 1mm以下かつ 前30日間の雨 30mm以下長く雨が少なく、落ち葉や枯れ草が乾く基準(2)前3日間の雨 1mm以下かつ 乾燥注意報が発表中空気がいま乾いている(1)か(2)のどちらか → 林野火災注意報+ 強風注意報が発表中→ 林野火災警報(火の使用を強く制限)風が強いと、飛び火で一気に燃え広がる
図1 林野火災注意報・警報の発令基準(福岡市消防局などの公表資料をもとに当ブログ作成。実際の発令は各市町村が当日の降水の見込みなども考えて判断)

ポイントは、「長い目で見た雨の少なさ(30日間)」と「直近の雨のなさ(3日間)」の両方を見ていることです。地面の落ち葉や枯れ草は、数日晴れただけでは表面しか乾きませんが、何週間も雨が少ないと奥まで乾き、いったん火がつくと燃え続けやすくなります。そこに強い風が加わると、火の粉が飛んで燃え広がる——これが警報の考え方です。

気象庁が出す「乾燥注意報」は、空気の湿り具合(最小湿度や実効湿度)をもとにしています。実効湿度は、きょうの湿度だけでなく数日前からの湿度を少しずつ重みを減らして足し合わせたもので、木材の乾き具合の目安として火災予防に使われてきました。

データ検証:網走はどれだけ乾いていた?アメダスの30日間

項目網走(2026年10月15日まで)参考:大船渡(2025年2月26日まで)
前3日間の降水量0mm(基準1mm以下を満たす)0mm
前30日間の降水量31.5mm(平年106.6mmの30%)3.5mm
1mm以上の雨がない日10月3〜15日の13日間1月27日〜2月26日の31日間
実効湿度(推定)66%55%
当日の最小湿度27%(日平均46%)37〜38%(2月25・26日)
当日の最大瞬間風速16.3m/s(西)18.1m/s
基準(1)の判定あと1.5mmで該当該当
表1 網走と大船渡の火災発生時の気象条件(気象庁の観測値から当ブログ計算。網走の30日間は9月16日〜10月15日、大船渡は1月28日〜2月26日。2025年2月の大船渡の月降水量は2.5mm)

網走は9月11〜19日にも雨がほとんどなく、9月20日〜10月2日にまとまった雨は9月28日の14.0mmだけでした。秋のオホーツク海側は、移動性高気圧に覆われて晴れる日が多いうえ、低気圧が通り過ぎたあとに乾いた西よりの風が山を越えて吹き下りると、空気がさらに乾きます。15日の網走は、日中の湿度が30〜40%台で推移し、西よりの風がやや強く吹いていました。

ただし網走の場合、「雨が少ない」とはいえ大船渡の2025年2月(30日間で3.5mm)ほど極端ではありません。秋の北海道としては乾いているが、冬〜春の太平洋側ほどではない、というのが数字から見た位置づけです。それでも山の中で火がつけば、乾いた落ち葉と風で消火が難しくなることがわかります。

網走の今後については、10月16日5時発表の気象庁の予報で、網走地方はきょう「くもり時々晴れ、所により昼前から昼過ぎ雨」、降水確率は30〜20%、西の風がやや強い見込みです。週間予報では19日(月)の降水確率が60%で、まとまった雨はそれまで期待しにくい状況です。雨が降らなければ、10月20日には前30日間の雨が29.0mmとなり、基準(1)に達する計算です(9月20日の2.5mmが30日の枠から外れるため)。

火災当日(10月15日)の網走の天気:1時間ごと

時刻気温湿度風向・風速(m/s)
9時13.5℃44%南西 6.3
10時14.6℃37%南西 6.3
11時15.6℃31%西 5.5
12時16.2℃27%西 6.6
13時15.8℃30%西南西 7.5
14時15.3℃36%西北西 5.0
15時14.7℃38%西 2.2
16時14.1℃38%西 4.4
17時13.3℃39%西 5.2
18時13.1℃40%西 4.3
19時12.5℃44%西 2.8
20時11.9℃50%西南西 3.5
21時11.7℃49%西南西 4.3
22時11.7℃46%南西 3.6
23時11.8℃44%西南西 3.9
24時9.4℃53%西南西 2.5
表3 網走(アメダス)の10月15日の毎正時の観測値(気象庁)。12時に湿度27%、17時半ごろに火災の通報

前日の14日は南よりの風で気温が22.7℃まで上がりましたが、低気圧が通り過ぎた夜から西の風に変わり、乾いた空気が流れ込みました。15日の最高気温は17.8℃と前日より下がったのに、日中の湿度は30%前後まで下がりました(12時の露点温度は−2.8℃)。西の風は、網走から見て内陸の山地を越えて吹いてくる風で、山を吹き下りるときに温まって湿度がさらに下がります(フェーン現象のしくみ、乾いた風が吹くわけ)。

通報があった午後5時半ごろの前後は、17時が湿度39%・西の風5.2m/s、18時が湿度40%・西の風4.3m/s。一般に夜は気温が下がって湿度が上がりやすいのですが、15日の網走は日が暮れてからも湿度が40〜50%台にとどまり、乾いた西風が続いていました。

内陸の山地網走能取湖・オホーツク海低気圧通過後の乾いた西風吹き下りて乾いた風に10月15日 湿度27〜40%
図2 低気圧が通り過ぎたあとの乾いた西風が山を越えてオホーツク海側に吹き下り、湿度がさらに下がる(模式図)

全国48地点のいま:雨が少ないのはどこ?

順位地点前30日間の降水量平年比前3日間実効湿度
1青森32.0mm24%7.0mm75%
2網走31.5mm30%0mm66%
3秋田56.5mm33%19.0mm69%
4津86.5mm36%10.5mm65%
5金沢70.5mm36%37.0mm68%
6松江61.5mm41%11.5mm74%
7盛岡59.0mm43%10.5mm72%
8仙台79.0mm43%2.5mm70%
9山形53.0mm45%0.5mm72%
10新潟69.0mm45%8.5mm72%
11富山91.0mm48%28.5mm73%
12高知152.0mm51%0mm65%
表2 前30日間(2026年9月16日〜10月15日)の降水量が平年に比べて少ない地点(全国48地点の気象台など。平年は日別平年値の合計。津は9月29・30日が資料不足値を含む)

48地点のうち、10月15日時点で基準(1)(前3日間1mm以下かつ前30日間30mm以下)に当てはまる地点はありませんでした。前30日間の雨がいちばん少ないのは網走(31.5mm)、次いで青森(32.0mm)。平年比で見ると青森24%、網走30%、秋田33%と、東北北部とオホーツク海側で雨の少なさが目立ちます(札幌は平年並の100%)。

反対に、9月20〜21日の大雨や9月29〜30日の雨があった関東南部の沿岸は、千葉(平年の218%)、横浜(176%)、東京(159%)、水戸(153%)と平年を大きく上回っています。ただ東京・水戸は10月5日を最後に1mm以上の雨がなく、短い期間で見ると関東も乾き始めています。ツールで地点を切り替えて、30日間の雨の降り方を確かめてみてください。

サイト内ツールで、雨と湿度を確かめる

都道府県別に、10月の雨の量と湿度の平年値を比べられます。北海道のなかでも、オホーツク海側は雨が少ない地域です。

網走の去年のいまごろの天気と比べると、今年の雨の少なさがよくわかります。

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網走の気温や雨の平年値は網走の気候データ、過去の日ごとの天気は過去の天気を調べるや10月15日の天気(日付別)、北海道の各地の天気データは北海道の天気データベースでも確認できます。網走市の地震の記録は網走市の地震にまとめています。

秋の山火事はめずらしい?乾燥しやすい季節と地域

日本の林野火災は一般に、落ち葉や枯れ草が多く、空気が乾いて風の強い冬の終わりから春に多い傾向があります。大船渡の火災も2月下旬でした。秋は一般に台風や秋雨で雨が多い季節ですが、今年の東北北部やオホーツク海側は9月中旬から雨の少ない状態が続いています。

  • オホーツク海側・北海道東部:もともと年間の降水量が少なく、秋は晴れて乾いた西風が吹きやすい地域です。
  • 太平洋側(関東〜九州):冬型の気圧配置が強まる12〜3月に晴天と乾いた北西風が続き、乾燥注意報が出やすくなります。
  • 日本海側:冬は雪や雨が多く、林野火災の危険が高まるのは雪どけ後の春です。

乾燥の季節に向けて、室内の湿度管理は加湿器はいつから?、これからの天気の傾向は11月は暖かい?2026年の1か月予報もあわせてどうぞ。北海道(オホーツク海側を含む)と東北は1か月予報(10月15日発表)で降水量「平年並か多い」とされており、雨が戻れば乾燥は解消に向かう見込みです。

林野火災を防ぐために、気をつけたいこと

  • 注意報・警報の発令中は、山林や近くでたき火・火入れ・花火をしない。発令状況は市町村や消防本部のホームページ・防災メールで確認できます。
  • たばこのポイ捨てをしない。車の窓からの投げ捨ては、乾いた草地では特に危険です。
  • 屋外で火を使うときは、風の強い日を避け、消火の準備をしてから。燃えかすは水をかけて完全に消します。
  • 雨が降ったからと安心しない。数mmの雨では表面が湿るだけで、前30日間の雨が少ない状態は続きます。
  • 煙や火を見つけたらすぐ119番。山の中の火は初期消火が難しく、早い通報が何より大切です。

風向きと煙の流れ方は、十勝岳の噴火と火山灰の風向きの記事で解説した上空の風の考え方も参考になります。今日の気圧配置は今日の気圧、全国で風が強かった地点は今日の最大風速ランキングでチェックできます。

よくある質問(FAQ)

Q. 網走の山林火災はいつ、どこで起きましたか?

報道によると、2026年10月15日午後5時半ごろ、北海道網走市美岬の能取湖近くの国有林で煙と火が見えると通報がありました。火元が山奥で消防車両が近寄れない状態と報じられました。16日朝の時点でけが人や住宅への被害は確認されていません。

Q. 網走はどれくらい雨が降っていなかったのですか?

網走のアメダスでは、1mm以上の雨は10月2日が最後で、10月3〜15日の13日間は1mm以上の雨がありませんでした(6日に0.5mm)。前30日間(9月16日〜10月15日)の降水量は31.5mmで、平年(106.6mm)の30%でした。

Q. 林野火災注意報の基準は?

大船渡の火災を受けて国が示した基準の例(福岡市などが採用)では、(1)前3日間の合計降水量が1mm以下かつ前30日間の合計降水量が30mm以下、または(2)前3日間の合計降水量が1mm以下で乾燥注意報が発表されているとき、に林野火災注意報が出されます。これに加えて強風注意報が発表されていると林野火災警報になります。実際の基準や発令は市町村ごとに定められ、当日の降水の見込みなども考えて判断されます。

Q. 林野火災警報が出るとどうなりますか?

発令中は、山林やその周辺でのたき火、火入れ、喫煙など火の使用が制限されます。内容は市町村の火災予防条例によって決まっているので、お住まいの市町村の案内を確認してください。

Q. 実効湿度とは何ですか?

きょうの湿度に、きのう、おととい…の湿度を少しずつ重みを減らして足し合わせた値で、木材などの乾き具合の目安です。この記事では係数0.7で30日分を計算しました。網走は10月15日に66%、2025年2月の大船渡の火災時は55%でした。

Q. 秋に山火事が起きるのはめずらしいですか?

日本の林野火災は、空気が乾き風の強い冬の終わりから春に多い傾向があります。秋は雨が多い季節ですが、2026年は東北北部とオホーツク海側で9月中旬から雨の少ない状態が続き、網走の前30日間の雨は平年の30%でした。

Q. いま林野火災の基準に近い地域は?

10月15日時点の全国48地点では、基準(1)に当てはまる地点はありませんでした。前30日間の雨が少ないのは網走(31.5mm)と青森(32.0mm)で、平年比では青森24%、網走30%、秋田33%です。最新の状況は記事内のチェッカーで確認できます。

まとめ
  • 網走は10月3〜15日の13日間、1mm以上の雨がなく、前30日間の雨は31.5mm(平年の30%)。15日の最小湿度は27%。
  • 林野火災注意報の基準(1)「前3日間1mm以下・前30日間30mm以下」まで、あと1.5mm。雨がなければ10月20日に到達する計算。
  • 大船渡(2025年2月)の30日間3.5mmほどではないが、秋の北海道としては乾いた状態。
  • 全国では青森・網走・秋田など東北北部・オホーツク海側で雨が少なく、関東南部の沿岸は多い。チェッカーで自分の街の乾燥度を確かめよう。

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出典・データについて

  • 火災の発生状況:NHKニュース(2026年10月16日7時17分)、北海道放送(TBS NEWS DIG、10月15日20時50分)などの報道
  • 林野火災注意報・警報の基準:福岡市消防局「「林野火災注意報」及び「林野火災警報」の運用について」、網走地区消防組合の発令状況(同組合のX、2026年6月5日)
  • 気象庁「過去の気象データ」:網走など全国48地点の日別値(2026年8月〜10月15日)、網走の時別値(10月15日)、大船渡の日別値(2025年1〜2月)、日別平年値(統計期間1991〜2020年)
  • 気象庁 府県天気予報・週間天気予報(網走地方、2026年10月16日5時発表)
  • 実効湿度は、日平均湿度を使い係数0.7で30日分を重みづけした当ブログの推定値で、気象庁の乾燥注意報に使われる値とは計算方法が異なる場合があります

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