南岸低気圧は関東の雪を左右する低気圧で、実技試験では「雨か雪か」の判別が3回に1回出る定番テーマです。設問は、850hPa気温(−6℃)・1000〜850hPa層厚(1300m)・地上気温と湿度・湿球温度といった判別基準の適用、北東風で残る冷気層と沿岸前線の理解、低気圧のコースと降水域、そして「なぜ雪になるか」「なぜ雨に変わるか」の記述です。学科一般の降水過程(氷晶が0℃層で融ける)と熱力学(蒸発冷却・湿球温度)が理屈の土台になります。この記事は出題傾向、3つの図解、判別の手順、記述の型、オリジナル問題15問(記述模範解答つき)+一問一答20問で構成しています。
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出題傾向|第55〜65回の実技でどう出たか
直近11回・22題のうち、南岸低気圧・雨雪判別が主題または大問の一部になった題は7題。冬〜春の事例が多く、第1回試験(1月)・第2回試験(8月)のどちらでも出ます。
| 分野・論点 | 出題頻度 | 典型的な問われ方 |
|---|---|---|
| 雨雪判別の基準の適用 | ◎ 出るときは必ず | 850hPa気温・層厚・地上気温と湿度から「雪になると考えられる根拠」を挙げる |
| 冷気層・沿岸前線 | ○ 2回に1回 | 関東平野の北東風、内陸の高気圧、沿岸前線の位置と雨雪の境 |
| エマグラムからの判別 | ○ 2回に1回 | 0℃層の高さ、融解層の厚さ、上空の暖気層(凍雨・雨氷) |
| 低気圧のコース・降水域 | ○ 2回に1回 | 八丈島の北か南か、降水域の広がり、発達 |
| 降水量・降雪量の計算 | △ 3回に1回 | 降水量に雪水比をかけて降雪量、または層厚の計算 |
| 記述(雪になる理由・雨に変わる理由) | ◎ 出るときは必ず | 「寒気が残り」「蒸発冷却で」「南風に変わり暖気が入って」 |
- 判別基準は4段構え:①850hPa気温−6℃以下(平地で雪の目安、−3℃で山沿い)②1000〜850hPa層厚1300m以下(雪)/1320m以上(雨)③地上気温1℃以下は雪・3℃以上は雨、間は湿度(低いほど雪)④湿球温度1℃前後
- 関東の雪は「北東風で残る冷気層」と「降水の蒸発冷却」で決まる。低気圧が近づいて南風に変わると雨
- 沿岸前線:内陸の冷たい北東風と海上の暖かい南東風の境。内陸側が雪、海側が雨
- 記述の要素:「地上付近に寒気(北東風)が残る」「850hPaの気温が−6℃以下」「降水の蒸発により気温が下がる」「湿度が低い」
コースと天気|近すぎても遠すぎてもだめ
| 論点 | 正しい理解 |
|---|---|
| 南岸低気圧とは | 東シナ海〜九州の南で発生し、本州の南岸に沿って東北東へ進む低気圧。冬〜春に多い。太平洋側に雨・雪をもたらす唯一のパターン(冬型では太平洋側は晴れ) |
| コースと降水 | 低気圧の降水域は中心の北〜北東側に広がる(温暖前線の前面・暖気の滑昇)。陸に近すぎると暖気が入って雨、離れすぎると降水域が届かない。関東で雪になるのは「ほどよい距離(八丈島付近)を発達しながら通る」とき |
| 雪になる条件 | ①上空に寒気(850hPa −6℃以下)②地上付近に冷気層(北東風、内陸の高気圧)③低気圧が発達して降水が強い(蒸発冷却が効く)④夜間〜早朝(日射で暖まらない) |
| 雨に変わるとき | 低気圧が近づいて南よりの風に変わり暖気が流入、または降水が弱まって日中の昇温。逆に降り始めは雨でも、蒸発冷却で雪に変わることがある |
| 予想の難しさ | コースが50km違うだけで雨雪が変わる。層厚1300m付近の「境目」の事例が多く、最新の数値予報でも判断が分かれる。だからこそ実技で「根拠を挙げて判断」させる |
判別の基準|4つの目安
| 基準 | 雪 | 雨 | 理屈 |
|---|---|---|---|
| 850hPa気温 | −6℃以下なら平地でも雪の目安(関東)。−3℃なら山沿い・内陸で雪 | −3℃より高いと平地は雨 | 850hPa(約1500m)から地上まで湿潤断熱で下ろすと約6℃上がる→地上が0℃前後。地域・地形で目安は変わる(層厚と気温) |
| 1000〜850hPa層厚 | 1300m以下(1280m以下ならほぼ雪) | 1320m以上ならほぼ雨 | 層厚は層の平均気温に比例(29.3×T̄×0.163)。1300mは平均気温約−1℃に相当 |
| 500hPa気温 | −30℃以下 | 上空の寒気の強さ。単独では判別できない補助基準 | |
| 地上気温・湿度 | 気温1℃以下はほぼ雪。2℃なら湿度60%以下、3℃でも湿度50%以下なら雪もある | 3℃以上はほぼ雨(湿度が高いとき) | 雪片が落下中に昇華・蒸発して周囲を冷やす。乾いているほど冷却が強く融けない |
| 湿球温度 | 約1℃以下 | 約1.5℃以上 | 気温と湿度を一つにまとめた指標。雪片の表面温度に近い。露点・湿球温度の計算 |
| エマグラム | 0℃層が地表付近〜数百m以下、融解層が薄い | 0℃層が高く(1000m以上)、暖気層が厚い | 雪片が0℃以上の層を数百m以上落下すると融ける。上空に暖気層があり地上付近だけ0℃以下なら凍雨・雨氷 |
なぜ湿度が効くのか。雪片は落ちながら周囲の空気に水蒸気を奪われて昇華(蒸発)し、その潜熱で自分と周囲を冷やします。乾いた空気ほど昇華が盛んで冷却が強く、気温3℃でも湿度50%なら湿球温度は約−1℃で雪のまま落ちてきます。逆に湿度100%なら気温=湿球温度で、2℃でも雨。「降り始めは雨、強まると雪に変わる」のは、降水による蒸発冷却で地上気温が下がるからです。
計算例:層厚から判別
1000〜850hPaの平均気温が−2℃(271K)のとき、層厚=29.3×271×ln(1000/850)=29.3×271×0.163=1294m→1300m以下で雪の目安。平均気温が+1℃(274K)なら1309m→境目。3℃違うと約14m変わる計算で、実技では「層厚1290mの等値線が○○を通過しているので、その北側では雪」のように使います。
冷気層と沿岸前線|関東で雪になる仕組み
- 南岸低気圧の北側では北東〜北の風が吹く。関東平野では内陸に高気圧(または冷たい空気)があり、北東風が冷気層(冷気ドーム)として地表付近に滞留する
- 低気圧の暖気はこの冷気層の上を滑昇して雲・降水を作る(温暖前線型の降水)。地上の風が北東のままなら冷気層は壊れず、降水の蒸発・融解による冷却で気温がさらに下がって雪になる
- 沿岸前線:冷気層の海側の縁で、内陸の北東風と海上からの暖かい南東風がぶつかる前線。房総半島〜相模湾付近にできることが多く、前線の内陸側が雪、海側が雨。地上天気図では風向の不連続と気温差(数℃)で解析する
- 低気圧が接近して南よりの風に変わると暖気が入って雨に。低気圧が離れて降水が弱まっても、日中なら日射で昇温して雨・みぞれ
- 実技では「北東風の持続」「内陸の高気圧」「気温の時系列(降水開始後に気温が下がる)」を根拠に挙げさせる。アメダスの気温・風向の時系列が資料になることが多い(アメダスの実況)
判別の手順|試験での解き方
- 850hPa気温:−6℃線が関東を覆っているか。−3℃なら山沿いのみ。予想図で時間変化も見る(寒気が抜けるタイミング)
- 層厚・500hPa:1000〜850hPa層厚1300m線の位置、500hPa −30℃線。与えられた図を使う
- 地上の風・気圧配置:関東に北東風が続くか、内陸に高気圧があるか。南風に変わる時刻はいつか
- 地上気温・湿度・湿球温度:予想の地上気温が1℃以下か、湿度は低いか。降水が強まると気温が下がることを考慮
- エマグラム:0℃層の高さと融解層の厚さ、上空の暖気層の有無(凍雨)
- 総合判断と記述:根拠を「上空の寒気」「地上付近の冷気層」「蒸発冷却」の順で書く
記述の型|このパターンで使う定型文
| 設問 | 模範解答の型(要素) |
|---|---|
| 関東平野で雪になると考えられる理由 | 「850hPaの気温が−6℃以下で上空に寒気があり、地上付近では北東風により寒気(冷気層)が残るため。さらに降水の蒸発により気温が下がるため」 |
| 降り始めは雨で、その後雪に変わる理由 | 「降水が強まり、雨や雪の蒸発・融解による冷却で地上付近の気温が下がるため」 |
| 雪から雨に変わると予想される理由 | 「低気圧の接近で風向が南よりに変わり暖気が流入し、地上付近の気温が上がるため」 |
| 沿岸前線の位置と役割 | 「内陸の冷たい北東風と海上の暖かい南東風の境界にでき、前線の内陸側で雪、海側で雨となる」 |
| 同じ気温でも湿度が低いと雪になる理由 | 「雪片が落下中に昇華(蒸発)して周囲から潜熱を奪い、融けにくくなるため」 |
| 低気圧のコースと降水域 | 「降水域は低気圧の北〜北東側に広がるため、低気圧が南に離れると関東の降水は弱い/陸に近づくと暖気が入り雨になる」 |
オリジナル問題15問|記述は模範解答つき
判別問題は必ず根拠を2つ以上挙げる練習を。過去問は気象業務支援センターで。
- ① 0℃以下
- ② −3℃以下
- ③ −6℃以下
- ④ −12℃以下
- ⑤ −20℃以下
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③。−3℃は山沿い・内陸の目安。地域により異なる。
- ① 層厚1500m以下で雪
- ② 層厚1300m以下なら雪、1320m以上なら雨の目安
- ③ 層厚が大きいほど雪
- ④ 層厚は雨雪判別に使えない
- ⑤ 層厚1000m以下で雪
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②。層厚は層の平均気温に比例し、1300mは約−1℃に相当。
- ① 約1250m
- ② 約1294m
- ③ 約1320m
- ④ 約1350m
- ⑤ 約1400m
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②。29.3×271×0.163=1294m。雪の目安の範囲。
- ① 気温が同じなら湿度が高いほど雪になりやすい
- ② 気温が同じなら湿度が低いほど雪になりやすい
- ③ 気温3℃以上では湿度によらず必ず雨
- ④ 気温0℃でも湿度が高ければ雨
- ⑤ 湿度は雨雪判別に関係ない
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②。雪片の昇華による冷却。3℃でも湿度50%以下なら雪のことがある。
- ① 乾いた空気は重いから
- ② 雪片が落下中に昇華(蒸発)して周囲から潜熱を奪い、雪片と周囲の空気が冷やされるから
- ③ 乾いた空気は氷晶核が多いから
- ④ 湿度が低いと雪片が大きくなるから
- ⑤ 湿度が低いと0℃層が高くなるから
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②。湿球温度が雪片の温度に近い。
- ① 南西の強風
- ② 北東〜北の風
- ③ 西風
- ④ 無風
- ⑤ 南東の暖かい風
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②。内陸の高気圧からの北東風が冷気層を維持する。南風に変わると雨。
- ① 海上の寒冷前線のことである
- ② 関東平野の内陸の冷たい北東風と海上の暖かい南東風の境界にでき、内陸側が雪・海側が雨となりやすい
- ③ 沿岸前線の海側で雪になる
- ④ 沿岸前線は夏に多い
- ⑤ 沿岸前線は850hPaで解析する
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②。地上の風向の不連続と気温差で解析。
- ① 低気圧が離れたから
- ② 降水の蒸発・融解による冷却で地上付近の気温が下がったから
- ③ 日射が強まったから
- ④ 南風が強まったから
- ⑤ 湿度が上がったから
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②。蒸発冷却。降水が強いほど効く。
- ① 低気圧が陸に近いほど関東は雪になりやすい
- ② 低気圧が陸に近すぎると暖気が入って雨、離れすぎると降水域が届かず、ほどよい距離のとき雪になりやすい
- ③ 低気圧が南に離れるほど雪が多い
- ④ 低気圧のコースは関東の雨雪に関係ない
- ⑤ 降水域は低気圧の南側に広がる
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②。降水域は中心の北〜北東側。八丈島付近は目安。
- ① 0℃層が高いほど雪になりやすい
- ② 0℃以上の層(融解層)が薄く、0℃層が地表付近にあるほど雪になりやすい
- ③ 上空に暖気層があり地上付近だけ0℃以下のときは必ず雪
- ④ エマグラムは雨雪判別に使えない
- ⑤ 湿数が大きいほど雪
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②。雪片は0℃以上の層を数百m落ちると融ける。上空暖気・地上寒気は凍雨・雨氷。
- ① 雪
- ② 凍雨または雨氷
- ③ ひょう
- ④ あられ
- ⑤ 霧雨
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②。上空で融けた雨滴が地上付近の寒気で凍る(凍雨)、または過冷却のまま地物に当たって凍る(雨氷)。
- ① どちらも雨
- ② どちらも雪
- ③ 湿度100%は雨またはみぞれ、湿度50%は雪になりやすい
- ④ 湿度100%は雪、湿度50%は雨
- ⑤ 判別できない
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③。湿度100%では湿球温度=気温2℃で融ける。50%では湿球温度が0℃前後まで下がる。
- ① 1.2cm
- ② 6cm
- ③ 12cm
- ④ 24cm
- ⑤ 120cm
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③。降雪量=降水量×雪水比。湿った雪では雪水比は小さく(0.5程度)、乾いた粉雪では大きい(1.5〜2)。
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要素:①850hPa −6℃以下(上空の寒気)②北東風③冷気層が残る。「降水の蒸発による冷却」を加えるとさらによい。
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要素:①風向が南よりに変わる②暖気の流入③地上気温の上昇。
一問一答20問|分野別の成績が出ます
南岸低気圧と雨雪判別(実技) 一問一答20問
基準の数字(−6℃・1300m・1℃・3℃・湿球1℃)を確実に。
この分野でよくある質問
Q. 雨雪判別の基準はどれを優先しますか?
A. 複数の基準を組み合わせます。上空(850hPa −6℃・層厚1300m)で「雪になりうる寒気か」を確認し、地上(気温・湿度・湿球温度・北東風)で「実際に雪として落ちてくるか」を判断します。記述では上空と地上の両方の根拠を書きます。
Q. 850hPaが−6℃より高くても雪になることはありますか?
A. あります。地上付近に強い冷気層があり、降水が強くて蒸発冷却が効くと、850hPa −4℃程度でも平地で雪になることがあります。基準は目安です。
Q. 沿岸前線は必ずできますか?
A. できないこともあります。内陸の高気圧が弱く北東風が続かないと冷気層が壊れて全域で雨になります。実技では風向の時系列で判断します。
Q. 降雪量の予想はどうしますか?
A. 降水量の予想に雪水比をかけます。気温が0℃前後の湿った雪では1mmあたり0.5〜1cm、−5℃以下の乾いた雪では1.5〜2cmが目安です。
Q. この記事の内容は学科とどうつながりますか?
A. 降水過程(氷晶が0℃層で融ける・蒸発冷却)、熱力学(湿球温度・層厚の式)、温帯低気圧(降水域の位置)の応用です。
- 判別基準:850hPa −6℃以下・層厚1300m以下・地上1℃以下は雪/3℃以上は雨・湿球温度約1℃。乾いているほど雪
- 関東の雪は北東風の冷気層+降水の蒸発冷却。沿岸前線の内陸側が雪、海側が雨。南風に変わると雨
- コースは「近すぎると雨、遠すぎると降水なし」。降水域は低気圧の北〜北東側
- エマグラムは0℃層の高さと融解層の厚さ。上空暖気・地上寒気は凍雨・雨氷
- 記述の型:「850hPaの気温が−6℃以下で、地上付近では北東風により冷気層が維持され、降水の蒸発で気温が下がるため」
出典:気象庁「雪の予報について」「予報用語」、気象業務支援センター「気象予報士試験 実技試験 過去の試験問題・解答例」。設問・数値・模範解答は当サイトのオリジナルです。判別の目安は地域・事例で異なります。
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