こんにちは!気象予報士ののぶやんです。
10月16日のお昼に出た緊急地震速報は、「千島列島でマグニチュード(M)9.9」という内容でした。実際の地震はM6.9で、速報は取り消されましたが、「M9.9ってどのくらいなの?」「東日本大震災より大きいの?」と気になって調べた方も多いと思います(速報の経緯は緊急地震速報の誤報はなぜ?42報リプレイで詳しく検証しています)。
マグニチュードは「1違うとエネルギーが約32倍」という、ちょっとクセのある物差しです。この記事では、好きな2つの地震を選ぶとエネルギーが何倍違うか・震源域がどれくらいの広さかを計算する「マグニチュード比較電卓」と、世界の巨大地震ランキングに入れると何位になるかを調べるツールを作りました。M9.9がいかに「ありえない数字」だったかも、数字で確かめてみましょう。
- マグニチュードは1大きいとエネルギーが約32倍、2大きいと1000倍。0.2違うだけでも約2倍になります。
- M9.9は東日本大震災(M9.0)の約22倍、観測史上最大の1960年チリ地震(M9.5)の約4倍のエネルギー。人類が観測したことのない規模です。
- 10月16日の実際の地震(M6.9)と比べると、M9.9は約3万2千倍。速報はそれだけ大きく見積もっていました。
- 震源域(断層がずれる範囲)の広さの目安は、M6.9で約800km²(20km×40km程度)、M9.0で約10万km²(220km×450km程度)、M9.9では約80万km²(630km×1,260km程度)。本州の長さに近い範囲が一度にずれる計算です。
- マグニチュードは「地震そのものの大きさ」、震度は「その場所の揺れの強さ」。M9.9でも遠くて深ければ揺れは小さく、M6台でも直下なら震度7になることがあります。
【ツール】マグニチュード比較電卓(エネルギーと震源域の広さ)
AとBの地震を選ぶか、Mの数字を直接入れてください。エネルギーが何倍違うかと、震源域の広さの目安を計算し、震源域の大きさを図で並べます。最初は「速報のM9.9」と「実際のM6.9」を比べています。
初期表示の「M9.9とM6.9」では、エネルギーの差は約3万2千倍。M6.9の地震が3万回以上起きてやっとM9.9の1回分です。震源域も、20km×40km程度と630km×1,260km程度で、面積では1,000倍違います。10月16日の速報は、実際の地震をこれだけ大きく見積もっていたことになります。
電卓の使い方の例をいくつか挙げておきます。
- A=東日本大震災(M9.0)、B=阪神・淡路大震災(M7.3):約350倍。震源域は約10万km²と約2,000km²で、面積でも約50倍違います。
- A=能登半島地震(M7.6)、B=令和8年熊本地震(M7.1):約5.6倍。0.5の差でも、エネルギーは5倍以上になります。
- A=2025年7月のカムチャツカ半島付近の地震(M8.8)、B=今回の実際の地震(M6.9):約710倍。同じカムチャツカ周辺でも、去年の地震は今回のおよそ710回分のエネルギーでした。
- ニュースで「M5.5」「M6.2」と聞いたら:電卓の数字欄に入れるだけで、何倍違うかがすぐわかります。0.1刻みで入力できます。
M9.9はどれくらい?主な地震と比べると
| 比べる地震 | M | M9.9はその何倍のエネルギー? |
|---|---|---|
| 10月16日の実際の地震(カムチャツカ半島付近) | M6.9 | 約3.2万倍 |
| 令和8年熊本地震(2026年) | M7.1 | 約1.6万倍 |
| 阪神・淡路大震災(1995年、兵庫県南部地震) | M7.3 | 約7,900倍 |
| 能登半島地震(2024年) | M7.6 | 約2,800倍 |
| 関東大震災(1923年、関東地震) | M7.9 | 約1,000倍 |
| 2025年7月のカムチャツカ半島付近の地震 | M8.8 | 約45倍 |
| 東日本大震災(2011年、東北地方太平洋沖地震) | M9.0 | 約22倍 |
| 1960年チリ地震(観測史上最大) | M9.5 | 約4.0倍 |
M9.9は、東日本大震災(M9.0)の約22倍、観測史上最大の1960年チリ地震(M9.5)の約4倍です。阪神・淡路大震災(M7.3)と比べると約8千倍、関東大震災(M7.9)とでも1,000倍になります。数字だけ見れば、驚いた人が多かったのもうなずける規模です。
マグニチュードが「1違うと32倍」になるしくみ
マグニチュードは、地震が出したエネルギーを「対数」で表した数字です。エネルギーとの関係は、おおよそ次の式で表されます(グーテンベルク・リヒターの式)。
Mが1増えると、log Eが1.5増える=エネルギーは10の1.5乗倍(約31.6倍)になります。これが「1違うと約32倍」の正体です。2違えば32×32で約1,000倍、0.2違うだけでも約2倍になります。
| Mの差 | エネルギーの倍率 | たとえば |
|---|---|---|
| 0.1 | 約1.4倍 | 東北地方太平洋沖地震 M9.0(気象庁)とMw9.1(USGS) |
| 0.2 | 約2倍 | M7.1とM7.3 |
| 0.5 | 約5.6倍 | M9.0とM9.5 |
| 0.9 | 約22倍 | M9.0とM9.9 |
| 1 | 約32倍 | M6とM7 |
| 2 | 1,000倍 | M7とM9 |
| 3 | 約3万2千倍 | M6.9とM9.9(10月16日の実際の地震と速報) |
なお、同じ地震でも機関によってMが少し違うことがあります。気象庁が地震情報で使う「気象庁マグニチュード」と、断層のずれの大きさから求める「モーメントマグニチュード(Mw)」は計算方法が違うためです。2011年の東北地方太平洋沖地震は、気象庁ではM9.0、米国地質調査所(USGS)の一覧ではM9.1になっています。
マグニチュードにはいくつか種類がある
- 気象庁マグニチュード(Mj):地震計で記録した揺れの大きさ(振幅)から計算する、日本の地震情報でふだん使われる値。すぐに計算できるのが長所。
- モーメントマグニチュード(Mw):断層がずれた面積とずれの量、岩盤のかたさから求める値。巨大地震でも頭打ちになりにくく、世界の巨大地震ランキングはこちらで比べるのが一般的。計算に時間がかかる。
- M8を超えるような巨大地震では、振幅から求めるMは実際より小さめに出やすい(頭打ち・飽和)ため、気象庁は巨大地震ではMwの値も使って発表します。2011年の地震の「M9.0」もMwの値です。
マグニチュードと震度の違い(図解)
よく電球にたとえられます。マグニチュードは電球のワット数(地震そのものの大きさ)で、1つの地震に1つの値です。震度は、ある場所がどれだけ明るいか(その場所の揺れの強さ)で、震源からの距離・震源の深さ・地盤のやわらかさで変わります。
10月16日の実際の地震はM6.9とそれなりに大きな地震でしたが、震源がカムチャツカ半島付近で遠く、深さも約160kmあったため、国内の最大震度は函館市の1でした。逆に、2018年の北海道胆振東部地震はM6.7でしたが、震源が浅く陸の直下だったため震度7を観測しています(震度7の地震は震度7を観測した地震の一覧にまとめています)。お住まいの地盤の揺れやすさは揺れやすい地盤ランキングで確認できます。
【ツール】そのMは世界の巨大地震ランキングで何位?
Mを入れると、米国地質調査所(USGS)の「世界の巨大地震」一覧(1900年以降の上位20)に2025年7月のカムチャツカ半島付近の地震(M8.8)を加えた21の地震の中で、何位に入るかを表示します。M9.9なら……試してみてください。
| 順位 | 発生日(世界時) | 場所 | M | 入力したMとのエネルギー比 |
|---|
M9.9を入れると、もちろん1位。2位のチリ地震(M9.5)の約4倍、カムチャツカ半島の地震として最大の1952年(M9.0)の約22倍です。上位21の地震はすべてM8.4以上で、ほとんどが海のプレートが陸のプレートの下に沈み込む場所で起きています(例外は、大陸どうしがぶつかる場所で起きた1950年のチベット・インド国境の地震や、海のプレートの内部で起きた2012年のスマトラ島沖の地震など)。日本の周り(本州東方沖、千島列島、カムチャツカ)からも6つ入っています。
日本の主な地震のマグニチュード
| 発生日 | 地震 | M(気象庁) | 東日本大震災(M9.0)との比 |
|---|---|---|---|
| 1923年9月1日 | 関東地震(関東大震災) | M7.9 | 約1/45 |
| 1933年3月3日 | 昭和三陸地震 | M8.1 | 約1/22 |
| 1944年12月7日 | 昭和東南海地震 | M7.9 | 約1/45 |
| 1946年12月21日 | 昭和南海地震 | M8.0 | 約1/32 |
| 1952年3月4日 | 十勝沖地震 | M8.2 | 約1/16 |
| 1995年1月17日 | 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) | M7.3 | 約1/350 |
| 2003年9月26日 | 十勝沖地震 | M8.0 | 約1/32 |
| 2004年10月23日 | 新潟県中越地震 | M6.8 | 約1/2,000 |
| 2011年3月11日 | 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災) | M9.0 | (同じ) |
| 2016年4月16日 | 熊本地震(本震) | M7.3 | 約1/350 |
| 2018年9月6日 | 北海道胆振東部地震 | M6.7 | 約1/2,800 |
| 2024年1月1日 | 能登半島地震 | M7.6 | 約1/130 |
| 2026年4月20日 | 三陸沖の地震 | M7.7 | 約1/89 |
| 2026年7月28日 | 令和8年熊本地震 | M7.1 | 約1/710 |
| 2026年10月16日 | カムチャツカ半島付近の地震(今回) | M6.9 | 約1/1,400 |
こうして並べると、M9.0の東北地方太平洋沖地震がいかに飛び抜けていたかがわかります。関東大震災(M7.9)の約45倍、阪神・淡路大震災(M7.3)の約350倍です。2026年に入ってからも、4月の三陸沖(M7.7)、7月の令和8年熊本地震(M7.1)と大きな地震が続いています(最近地震が多いのはなぜ?、熊本地震の余震はいつまで)。
大きい地震ほど少ない:Mごとの1年あたりの回数
エネルギーが32倍になる一方で、地震の数はMが1大きくなるとおよそ10分の1に減ります(グーテンベルク・リヒターの関係)。米国地質調査所(USGS)がまとめている世界の地震の年間回数の目安は次のとおりです。
| マグニチュード | 世界で1年に起きる回数の目安 | ひとことで |
|---|---|---|
| M8以上 | 約1回 | 巨大地震。毎年どこかで1回ほど |
| M7〜7.9 | 約15回 | 大地震。月1回強 |
| M6〜6.9 | 約130回 | 10月16日の地震(M6.9)はこのクラス |
M6台の地震は世界で週に2〜3回起きている「よくある大きさ」ですが、M9以上は1900年以降で5回しかありません。速報がM6.9をM9.9と見誤ったのは、「週に何回も起きる地震」を「人類が観測したことのない地震」と取り違えたようなものです。
日本で想定されている最大級の地震のM
政府の地震調査研究推進本部は、日本の周りで将来起こりうる大地震の規模を評価しています。たとえば南海トラフ地震はM8〜9クラス、北海道の東の千島海溝沿いの超巨大地震はM8.8程度以上とされています。どちらもM9.9には届きませんが、東北地方太平洋沖地震(M9.0)と同じクラスの地震が想定されていることになります。
ニュースで伝えられるMは、地震の直後は「速報値」で、その後の解析で0.1〜0.3ほど変わることがあります。2011年の東北地方太平洋沖地震も、地震直後に気象庁が発表したM7.9から、M8.4、M8.8と修正され、2日後にM9.0となりました。最初の数字だけで規模を判断せず、続報を確認するのが大切です。
M10の地震は起こりうる?
宇津・関の式で計算すると、M10の震源域はおよそ100万km²。長さが幅の2倍なら約700km×1,400kmの範囲が一度にずれる必要があります。東北地方太平洋沖地震(M9.0)の震源域が長さ400〜500km・幅約200kmだったことを考えると、およそ10倍の面積です。
そのためには、非常に長いプレート境界が一度にまとめてずれる必要があります。1900年以降の観測で最大は1960年チリ地震のM9.5で、M10の地震は観測されていません。M9.9という数字は、観測の記録に照らすと極めて考えにくい値だったことがわかります。
マグニチュードのよくある勘違い
- 「M8はM4の2倍」ではない:Mの差は4なので、エネルギーは10の6乗倍=100万倍です。
- 「M7.3とM7.1はほぼ同じ」でもない:0.2の差でエネルギーは約2倍。1995年の兵庫県南部地震(M7.3)は、2026年の令和8年熊本地震(M7.1)の約2倍のエネルギーでした。
- 「Mが大きい=自分の家が強く揺れる」ではない:揺れ(震度)は距離・深さ・地盤しだい。M6台でも真下なら震度7、M9台でも遠ければ震度1以下になりえます。
- 「震度8」や「震度10」はない:日本の震度は0〜7の10階級(5と6は弱・強に分かれる)で、7が最大。Mには上限の決まりはありませんが、観測の最大は9.5です。
巨大地震と津波:遠くの地震でも注意が必要なことがある
マグニチュードが大きい地震では、震度が小さくても津波に注意が必要です。2025年7月30日のカムチャツカ半島付近の地震(M8.8)では、日本で強い揺れはほとんどなかったものの、北海道から近畿地方の太平洋沿岸などに津波警報が出され、岩手県の久慈港で1.3m(141cm)の津波を観測しました(総務省消防庁「消防白書」)。海外の地震から日本に津波が届くまでの時間は海外の地震で日本に津波は来る?で計算しています。
今日の日本の地震の回数と震度は地震速報リアルタイム地図で、都道府県ごとの地震の多さは次のツールで確認できます。
市区町村ごとの過去の震度や30年確率は今後30年以内に震度6弱以上の地震が起きる確率ランキングや防災ツールひろばで調べられます。「30年以内に70〜80%」の意味は地震発生確率の読み方で解説しています。
よくある質問
Q. M9.9はどれくらいの規模ですか?
マグニチュードは1大きいとエネルギーが約32倍になるため、M9.9は東日本大震災(M9.0)の約22倍、観測史上最大の1960年チリ地震(M9.5)の約4倍のエネルギーです。1900年以降、M9.9の地震は観測されていません。
Q. 10月16日の地震は本当にM9.9だったのですか?
いいえ。実際の地震はカムチャツカ半島付近、深さ約160kmのM6.9で、国内の最大震度は函館市の1でした。緊急地震速報が規模をM9.9と過大に推定したもので、気象庁は速報を取り消し、原因を調査しています。
Q. マグニチュードが1違うとエネルギーは何倍ですか?
約32倍(10の1.5乗=約31.6倍)です。2違うと約1,000倍、0.2違うと約2倍になります。エネルギーとマグニチュードの関係はlog E=4.8+1.5M(Eの単位はジュール)で表されます。
Q. マグニチュードと震度の違いは何ですか?
マグニチュードは地震そのものの大きさで、1つの地震に1つの値です。震度はそれぞれの場所での揺れの強さで、震源からの距離や深さ、地盤によって変わります。電球のワット数(マグニチュード)と、ある場所の明るさ(震度)にたとえられます。
Q. 世界最大の地震はどれですか?
1900年以降の観測で最大は、1960年5月22日(世界時)のチリ地震でM9.5です(米国地質調査所)。2位は1964年のアラスカ地震(M9.2)、3位は2004年のスマトラ島沖地震と2011年の東北地方太平洋沖地震(ともにM9.1)です。
Q. 東日本大震災のマグニチュードは9.0と9.1のどちらですか?
気象庁の値はM9.0(モーメントマグニチュード)で、米国地質調査所(USGS)の一覧ではM9.1です。計算に使うデータや方法の違いによるもので、エネルギーにすると約1.4倍の差です。
Q. M10の地震は起こりますか?
M10の震源域の目安は約100万km²(約700km×1,400km)で、東北地方太平洋沖地震のおよそ10倍の広さが一度にずれる必要があります。1900年以降の観測で最大はM9.5で、M10の地震は観測されていません。
Q. Mが大きくても揺れが小さいことはありますか?
あります。震源が遠い場合や深い場合は、Mが大きくても揺れは小さくなります。10月16日のM6.9の地震は深さ約160kmで遠かったため、国内の最大震度は1でした。ただし巨大地震では、揺れが小さくても津波が来ることがあるので注意が必要です。
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- マグニチュードは地震そのものの大きさ、震度は場所ごとの揺れ。遠くて深い地震は、Mが大きくても震度は小さくなる
- 巨大地震は揺れが小さくても津波に注意。比較電卓とランキングツールで、ニュースのMを自分で比べてみてください
出典・データについて
- 米国地質調査所(USGS)「20 Largest Earthquakes in the World」
- 気象庁「震源・震度情報」「緊急地震速報(警報)発表状況」(2026年10月16日の地震、2026年の主な地震)、気象庁「地震について」(マグニチュードと震度)
- 総務省消防庁「令和7年版 消防白書」(2025年7月30日のカムチャツカ半島付近の地震と津波)
- エネルギーはグーテンベルク・リヒターの式(log E=4.8+1.5M)、震源域の広さは宇津・関の式(log S=M−4.0)による目安で、当ブログで計算
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