「自分の住んでいる街は、地震が来やすい場所なのか」。この問いに、国は数字で答えを出しています。今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率——国の地震調査研究推進本部が計算し、防災科研の「J-SHIS」で公開されている、日本でいちばん公式な地震リスクの数字です。
この記事では、その確率を47都道府県(庁舎所在地)と全国1,894市区町村(役場所在地)について同じ条件で調べ、ランキングにしました。1位は茨城県河内町の96.5%、いっぽう島根県の隠岐諸島には0%台の村もあります。同じ日本の中に、これだけの差があります。
ただし先に1つだけ。この数字は「安全な場所ランキング」ではありません。確率が低い場所でこそ大地震が起きてきたのが日本の地震史です。その理由も、数字のカラクリからきちんと解説します。

僕の簡単なプロフィールです。
- 気象予報士
- 家族だんらんが好き
「30年確率」とは何の数字か
正式には「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」。国の地震調査研究推進本部(地震本部)が、全国の活断層と海溝型地震の起きやすさを1つずつ評価し、それをすべて足し合わせて「この地点はどれくらい揺れやすいか」を250mメッシュ単位で計算したものです。防災科研の地震ハザードステーション「J-SHIS」で誰でも無料で見られます。
なぜ「30年」なのか。住宅ローン、子育て、定年までの勤続——人が住まいを考えるときの現実的な時間の長さだからです。そして、なぜ「震度6弱」なのか。震度6弱は、耐震性の低い建物が倒れはじめる境目だからです。立っていることが難しくなり、固定していない家具の多くが移動・転倒します。「30年以内に、家を壊しうる揺れが来る確率」と読み替えてもらって構いません。
このランキングの作り方
- データは防災科研 J-SHIS の確率論的地震動予測地図 2024年版(平均ケース・全地震)を使用しています
- 都道府県は都道府県庁舎の位置、市区町村は市役所・町村役場(政令市は区役所)の位置の250mメッシュの値です。庁舎の座標は国土地理院の地名検索データによります
- つまり「県・市の代表1地点の値」であって、市域全体の値ではありません。同じ市内でも地盤によって数字は変わります
- データ取得日:2026年7月27日。地震本部の評価が更新されると数字は変わります
偏差値の見方
当ブログのランキング共通のものさしとして、47都道府県の平均を偏差値50とした値を付けています。今回の分布は「一部の県だけが極端に高い」形なので、偏差値は60を超えたら明確に高リスク側、45を下回ったら低確率側、と読んでください。ただし繰り返しますが、低確率=安全ではありません(理由は後述)。
【都道府県】今後30年で震度6弱以上の確率ランキング
まず47都道府県(庁舎位置)です。ボタンで震度6弱以上/震度6強以上を切り替えられます。バーの色分けはJ-SHISの地図の区分(3%・6%・26%が節目)に合わせています。
考察① 上位は「南海トラフ」「関東平野」「千島海溝」の3グループ
上位を眺めると、高い県は3つのグループにきれいに分かれます。
1つめは南海トラフ沿い。高知77.7%・徳島77.5%・香川73.6%・和歌山73.1%・静岡72.8%と、上位5県をこのグループが独占します。南海トラフの巨大地震(M8〜9クラス)は今後30年以内の発生確率が80%程度と評価されており、この1つの地震がほほそのまま各県の数字を押し上げています。周期性のある海溝型地震は「次」がある程度読めるため、確率が高く出るのです。
2つめは関東平野。千葉71.2%・埼玉62.4%・茨城48.3%・東京47.4%・神奈川43.4%。こちらは南関東でM7クラスの地震が30年以内に70%程度という評価に加えて、関東平野の地盤の軟らかさが効いています。同じ地震でも、厚い堆積層の上では揺れが増幅されるからです。市区町村ランキングで1位になった茨城県河内町(96.5%)は利根川沿いの低地で、まさにこの「地盤の増幅」が数字に表れた例です。
3つめは、都道府県ランキングには出てこないのに市区町村で突然上位に現れる北海道の道東です。厚岸町83.8%・浜中町83.3%・根室市80.9%。千島海溝沿いの巨大地震の評価が高いためで、北海道が県別で最下位(札幌2.3%)なのに、道東は四国並みという極端な二重構造になっています。
考察② 「確率が低い県」の数字は、こう読んでください
下位には島根4.7%・山形3.8%・長野2.7%・北海道(札幌)2.3%が並びます。では、この県は地震の心配がないのか。ここがこの数字のいちばん誤解されやすいところです。
確率が低く出る理由は単純で、内陸の活断層は動く間隔が1,000年〜数万年と長いからです。30年という窓で切れば、確率は数%以下になる。しかしゼロではなく、順番が来れば起きます。実際に、1995年の阪神・淡路大震災、2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震は、いずれもこの方式の確率では「低い」とされていた場所で起きました。熊本県は今回の集計でも18.2%と全国22位です。
つまりこう読むのが正解です。確率が高い地域=「順番が読めている」地域。確率が低い地域=「順番が読めない」だけの地域。高い地域は備えの優先度が数字で示されており、低い地域は「いつ来るかわからないからこそ、今日備える」。どちらに住んでいても、結論は同じところに落ちます。
【市区町村】全国1,894市区町村の確率ランキング
次に市区町村(役場位置)です。お住まいの市町村を検索できます。都道府県で絞り込むと、県内の順位も見られます。
考察③ 県の順位より「県内の差」のほうが大きい
市区町村まで下りると、都道府県ランキングでは見えなかったことが見えてきます。全国1,894市区町村のうち、26%以上(J-SHISの地図で最も濃い色の区分)が805市区町村と全体の4割強。50%以上が457、70%以上も183あります。中央値は19%です。
そして最大のポイントは、同じ県の中の差が、県同士の差より大きいことです。極端なのが北海道で、根室市80.9%に対して紋別市は0.3%。同じ県内に全国最上位クラスと全国最下位クラスが同居しています。東京都でも、江戸川区89.5%・足立区83.8%に対して多摩地域の西部は大きく下がります。「◯◯県だから安心・危険」という県単位の読み方には、ほとんど意味がありません。調べるべきは自分の市町村、できれば自分の家の地点です。
「過去の回数」と「将来の確率」を重ねて読む
当ブログでは、気象庁の107年分の観測データから地震が多い都道府県・市町村ランキング(過去の観測回数)を公開しています。今回の記事はその対になる「将来の確率」版です。2つを重ねると、面白いズレが見えます。
たとえば鹿児島県は過去の観測回数が全国上位(12,200回)ですが、30年確率は13.8%と中位です——回数の多くが桜島周辺の火山性の小さな地震だからです。逆に千葉県・埼玉県は過去の回数こそ目立ちませんが、確率では全国トップクラス。「よく揺れてきた場所」と「これから大きく揺れる確率が高い場所」は、同じではありません。過去は記録、将来は評価。両方を見て、はじめて自分の街のリスクの形がわかります。
「確率が低い=安全」ではない——この記事のいちばん大事な注意
自分の家の確率を調べる方法(1分でできます)
- J-SHIS(地震ハザードステーション)の「J-SHIS Map」をスマホかパソコンで開く
- 検索窓に自宅の住所を入れる
- 地図の色(黄→橙→赤の順に高い)と、画面に出る「30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」を確認する
- あわせて「表層地盤」タブで自宅の地盤の揺れやすさも見ておく
この記事の数字は役場位置の値なので、ご自宅の地点では上下します。特に川沿い・埋立地・旧水田の上は数字が上がりやすいので、一度は自宅の住所で確認しておくことをおすすめします。
まとめ
- 今後30年で震度6弱以上の確率、都道府県1位は高知県77.7%(徳島・香川・和歌山・静岡と南海トラフ勢が上位独占)、最下位は北海道〈札幌〉2.3%
- 市区町村1位は茨城県河内町96.5%。関東平野の軟らかい地盤と首都圏の地震評価の重なりが理由
- 全国1,894市区町村の4割強が26%以上(J-SHIS最上位区分)。中央値は19%
- 県内の差は県同士の差より大きい(根室80.9% vs 紋別0.3%)。県ではなく自分の市町村・自宅で確認を
- そして確率が低い=安全ではない。阪神・淡路も熊本も能登も低確率地域で起きた。数字は備えの優先順位であって、免除証明ではない
よくある質問
Q. 30年確率が80%というのは「30年後に来る」という意味ですか?
いいえ。「今後30年のあいだのどこかで起きる確率が80%」という意味で、明日かもしれず、29年後かもしれません。発生時期の予知ではありません。
Q. 6%とか13%という数字は「低い」と考えていいですか?
比較の目安として、30年間で火災に遭う確率や空き巣に入られる確率は1〜3%程度とされます。地震の6%はそれより高く、J-SHISの区分でも6%以上は上から2番目の色です。「日常のリスクと比べれば十分高い」が正しい読み方です。
Q. 賃貸や引っ越しの参考にしていいですか?
参考にはなりますが、この数字より効くのは建物の耐震性(1981年6月以降の新耐震基準か、2000年基準か)と地盤です。確率の高い地域の新しい建物のほうが、低い地域の古い建物より安全、ということは普通にあります。
Q. 数字は変わりますか?
変わります。地震本部の長期評価が更新されるたび、また大きな地震が起きるたびに再計算されます。この記事の数字は2024年版(2026年7月取得)です。年1回程度、最新版での見直しをおすすめします。
Q. 震度7の確率はないのですか?
震度7だけを取り出した確率マップは公開されていません。震度7は観測史上7回しかない極端な現象で、30年確率にするとほぼ全地点で1%未満になり、地図として意味をなさないためです。ただし「震度6強以上」の数字には、震度7になる可能性も含まれています(震度階級は7が最上位で、6.5以上の揺れをすべて含みます)。なお備えの内容は、6強でも7でも変わりません——6弱で耐震性の低い建物が倒れはじめ、6強で耐震性の高い建物にも被害が出ます。この記事の数字で判断して問題ありません。
データ出典・注記
- 確率データ:国立研究開発法人防災科学技術研究所「J-SHIS 地震ハザードステーション」確率論的地震動予測地図(2024年版・平均ケース・全地震)。地震本部(地震調査研究推進本部)の長期評価にもとづく計算値です
- 庁舎・役場の座標:国土地理院 地名検索サービス
- 値は各庁舎・役場所在地点(250mメッシュ)の「今後30年以内に震度6弱以上/6強以上の揺れに見舞われる確率」。市域・県域の平均ではありません
- 取得日:2026年7月27日。最新の値は必ずJ-SHISでご確認ください

