海外の地震で日本に津波は来る?チリから約23時間、カムチャツカから約2時間|震源別の到達時間ツールつき

気象

こんにちは!気象予報士ののぶやんです。

先に答えを書くと、海外の大きな地震でも日本に津波が来ることはあります。しかも遠くから来る津波(遠地津波)は、日本では揺れをまったく感じないのにやって来ます。太平洋の平均的な深さ(約4,000m)では津波は時速約700kmで進むので、南米チリからは約22〜23時間、カムチャツカ半島からは約2時間、ニューギニア付近からは約4時間で届きます。南太平洋のローヤリティー諸島からなら、計算上は約9時間29分です。けさ(9月26日)の南太平洋ローヤリティー諸島のM7.0の地震については、気象庁が「日本への津波の影響はありません」と発表しています。避難するかどうかは、この記事の目安ではなく、必ず気象庁の津波警報・注意報で判断してください。

けさ06時23分ごろ、南太平洋のローヤリティー諸島(南緯21.2度・東経168.5度)でマグニチュード(M)7.0の地震がありました(震源・規模はPTWCによる)。気象庁は「遠地地震に関する情報」を出し、津波については「震源の近傍で津波発生の可能性があります。この地震による日本への津波の影響はありません。」とコメントしています。あわせて、太平洋の津波情報を担う米国の太平洋津波警報センター(PTWC)が26日06時30分に津波情報を発表したことも伝えています。

ニュースを見て「南太平洋?日本は大丈夫なの?」と思った人もいるでしょう。日本で揺れを感じていないのに、なぜ気象庁が情報を出すのでしょうか。それは、海外の地震でも、津波は太平洋を渡って日本まで届くことがあるからです。

このように、日本から遠く離れた場所で起きた地震による津波を「遠地津波」と呼びます。1960年のチリ地震では、地震から約23時間後、日本で揺れを感じた人がいないなかで津波が三陸などの沿岸を襲いました。この記事では、震源を選ぶだけで日本の11地点までの距離と津波の到達時間の目安を計算するツールをつくり、過去の遠地津波の実際の到達時間と比べて、目安がどれくらい当たるのかを検証します。

最終更新:2026年9月26日(気象庁の地震情報・報道発表資料、内閣府資料に基づく)

この記事の結論(30秒で読める版)
  1. けさの南太平洋の地震(M7.0)は「日本への津波の影響なし」。気象庁が「遠地地震に関する情報」で発表しています。震源から、この記事で使う日本の代表点のうちもっとも近い八丈島までは約6,763kmあります。
  2. 海外の地震でも日本に津波は来る。揺れを感じないのに来るのが遠地津波のこわいところです。1960年のチリ地震津波では、地震から約23時間後に日本を襲い、津波警報は間に合いませんでした。
  3. 速さは海の深さで決まる。水深4,000mで時速約713km、5,000mで約797km。浅くなるほど遅く、高くなります。
  4. 到達時間は、チリから約22〜23時間、カムチャツカから約2時間、ニューギニア付近から約4時間(過去の実例)。南太平洋(ローヤリティー諸島)からは計算上約9時間29分。距離を時速約713km(水深4,000m)で割った目安は、2015年チリ地震(久慈港まで22時間27分)で+5.4%、2025年カムチャツカ(花咲まで1時間52分)で+12.5%のずれでした(目安のほうが遅め)。
  5. 第1波が最大とは限らず、長く続く。2025年は仙台港の最大の波が地震から約15時間後。避難の判断は、計算の目安ではなく必ず気象庁の津波警報・注意報で。

【ツール】海外の地震の津波は日本まで何時間?震源を選んで到達時間の目安を計算

震源を選ぶと、日本の太平洋側を中心とした11の代表点それぞれまでの距離(地球の表面にそった最短距離=大円距離)と、津波がその距離を進むのにかかる時間の目安を表示します。速さは「平均の水深」から計算します(3,000m・4,000m・5,000mから選べます)。いちばん早く届く地点は黄色で示し、過去に実際の到達時刻がわかっている事例では、目安との差も表示します。地震の発生時刻(日本時間)を入れると、各地点の到達予想時刻も出ます。最初はけさのローヤリティー諸島の地震を表示しています。

遠地津波の到達時間の目安(震源から日本の11地点まで)
距離は震源と各地点の代表点(おおよその座標)を結ぶ大円距離、速さは長波の式(速さ=√(重力加速度×水深))で計算した目安です。
震源 日本の代表点 もっとも早く届く地点 大円(最短距離の線) ほかの震源
実際の津波は海底の地形で曲がったり遅れたりし、大円は陸地の上を通ることもあるため、時間はあくまで目安です。第1波が最大とは限りません。津波の高さは距離だけでは決まりません。避難の判断は必ず気象庁の津波警報・注意報で行ってください。

けさの地震を選ぶと、いちばん近い代表点は八丈島で、距離は約6,763km。水深4,000mの速さ(時速約713km)で割ると約9時間29分です。06時23分の発生なら、もし津波が太平洋を渡ってきたとしても計算上は15時52分ごろになります。今回は気象庁が「日本への津波の影響はありません」と発表しているので、この時刻に何かが来るという意味ではありません。「もし大きな津波が起きていたら、日本にはどのくらいの時間の余裕があったのか」を考える数字です。

過去の事例では、2015年のチリ中部沿岸の地震を選ぶと、久慈港までの目安は23時間40分。実際には22時間27分後に第1波が来ていて、目安は実際より1時間13分遅い(+5.4%)結果でした。2025年のカムチャツカ半島付近の地震では、根室市花咲までの目安が2時間06分に対し、実際は1時間52分(+12.5%)。どちらも目安のほうが少し遅く、実際の津波はやや速く届いたことになります。水深を5,000mにすると、チリからの目安は21時間10分、カムチャツカからは1時間53分まで縮みます。

「もしもの震源」には、アリューシャン列島やペルー沖など、過去に大きな地震が起きた海域の代表点を入れてあります。発生時刻の欄に「いまの時刻」を入れると、いま地震が起きたら何時ごろ届く計算になるのかがわかります。海外の現地時刻と日本時間の差は世界の首都 時差一覧で確かめられます。

震源もっとも早い地点距離水深3,000m水深4,000m水深5,000m
ローヤリティー諸島(けさの地震)八丈島6,763km10時間57分9時間29分8時間29分
カムチャツカ半島付近(2025年)根室市花咲1,497km2時間26分2時間06分1時間53分
チリ中部沿岸(2015年)根室市花咲16,513km26時間45分23時間10分20時間43分
チリ中部沿岸(2010年)根室市花咲16,684km27時間02分23時間24分20時間56分
チリ(1960年)根室市花咲16,678km27時間01分23時間24分20時間56分
ニューギニア沖(1996年)石垣島3,129km5時間04分4時間23分3時間56分
トンガの火山噴火(2022年)八丈島7,624km12時間21分10時間42分9時間34分
アリューシャン列島根室市花咲3,064km4時間58分4時間18分3時間51分
アラスカ湾根室市花咲4,625km7時間30分6時間29分5時間48分
カスケード(米国北西沖)根室市花咲6,746km10時間56分9時間28分8時間28分
ペルー沖根室市花咲14,820km24時間01分20時間48分18時間36分
ソロモン諸島八丈島5,103km8時間16分7時間10分6時間24分
バヌアツ八丈島6,202km10時間03分8時間42分7時間47分
ケルマデック諸島八丈島8,331km13時間30分11時間41分10時間27分
フィリピン海溝(ミンダナオ沖)石垣島1,841km2時間59分2時間35分2時間19分
千島列島中部根室市花咲714km1時間09分1時間00分54分
表1:震源別に、日本の11の代表点のうちもっとも早く届く地点と到達の目安。距離は大円距離、速さは√(g×水深)。筆者計算(震源・地点の座標はおおよその代表点)。トンガ(2022年)は噴火による潮位変化で、実際にはこの目安より早く始まりました

ツールの全震源をまとめると表1のとおりです。もっとも近いのは千島列島中部(根室市花咲、約714km、目安1時間00分)、もっとも遠いのはチリ中部沿岸(2010年)(根室市花咲、約16,684km、目安23時間24分)です。11の代表点のなかでは、南米やアラスカ方面からは北海道の根室市花咲、南太平洋からは八丈島、フィリピンやニューギニア方面からは石垣島がもっとも近くなります(計算上)。

なぜ遠くから津波が来る?深い海では速く、浅い海で高くなる仕組み

津波は、海底が地震で持ち上がったり沈んだりして、その上の海水全体が動くことで起きます。風でできる波は海面近くの水だけが動きますが、津波は海面から海底までの水がまるごと動くため、とても長い波(長波)になります。長波の速さは、水深をh、重力加速度をg(9.8m/s²)とすると、速さ=√(g×h)で表されます。つまり速さは海の深さだけで決まります。

この式で計算すると、水深4,000mでは秒速約198m=時速約713km、5,000mでは時速約797kmです。気象庁も「沖合ではジェット機に匹敵する速さ」と説明しています。ところが水深100mでは時速約113km、水深10mでは時速約36kmまで遅くなります。遅くなると、後ろから来る波が前の波に追いついて、波が高くなります。気象庁は「浅いところでも人が走って逃げ切れる速さではない」とも注意しています。

陸水深4,000m時速約713km水深1,000m時速約356km水深100m時速約113km沖合:速く、波は低い沿岸:遅く、波は高い後ろの波が追いつき、詰まって高くなる →
図1:深い海では速く低く、浅くなると遅く高くなる津波の模式図。速さは√(g×水深)で筆者計算(波の形は模式的なもので、縦横の比率は実際と異なります)

図1のように、同じ津波でも沖合と沿岸では姿が大きく変わります。たとえば周期20分の波だと仮定すると、1波長の長さは水深4,000mで約238km、水深100mでは約38kmまで縮みます(速さ×周期で筆者計算)。沖合では200km以上にわたってゆるやかに海面が持ち上がるだけなので、船の上でも気づかないことがあります。それが陸に近づくと波長が縮み、そのぶん高さが増していきます。

遠地津波が日本まで来られるのは、この長い波がエネルギーを失いにくく、太平洋の深い海を高速で渡ってくるからです。図2は、震源から日本の代表点までの距離と、水深4,000mで進んだときの時間の目安を同じ目盛りで並べたものです。チリからの約1万7,000kmは、カムチャツカからの約1,500kmの10倍以上の距離があります。

0時間4時間8時間12時間16時間20時間24時間目盛り=水深4,000m(時速約713km)で進む時間カムチャツカ(2025) → 根室市花咲約1,497km・2時間06分ニューギニア沖(1996) → 石垣島約3,129km・4時間23分ローヤリティー諸島(けさ) → 八丈島約6,763km・9時間29分チリ中部(2015) → 久慈港約16,871km・23時間40分
図2:遠地津波が太平洋を渡る時間の目安(震源から日本の代表点までの大円距離を、水深4,000mの速さで割った値。2015年チリは第1波を観測した久慈港まで)。筆者計算

ただし、津波はまっすぐ一本の線で進むわけではありません。気象庁は、2007年8月16日のペルー地震の津波が太平洋を横断し、20時間以上かけて日本に到達したこと、その途中でハワイなどで反射・散乱し、後続の波が次々と来襲したことを紹介しています。遠地津波では、島や海山、海底の地形にぶつかって向きを変えた波が、時間差でいくつも届くのです。これが、遠地津波が長く続く理由のひとつです。

データで検証:過去の遠地津波は何時間で届いた?

ここからは、気象庁と内閣府の資料にある過去の遠地津波の記録を並べ、ツールの目安と比べていきます。まずは主な事例の一覧です。

発生日時(日本時間)震源規模日本での最大日本への到達警報など
1960年5月23日 4時15分ごろチリMw9.58.1m(岩手県野田村、現地調査)約23時間津波の初動までに間に合った地域は皆無
1996年2月17日 14時59分ニューギニア沖M8.11.0m(石垣島)約4時間津波警報・注意報
2010年2月27日 15時34分ごろチリ中部沿岸Mw8.8(気象庁第1報はM8.6)-約22時間大津波警報(青森県太平洋沿岸・岩手県・宮城県)、津波警報・注意報
2015年9月17日 7時54分チリ中部沿岸Mw8.378cm(岩手県久慈港)22時間27分(久慈港)津波注意報
2022年1月15日 13時ごろフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山(噴火)-134cm(奄美市小湊の潮位変化)-(通常の津波より早く潮位変化)津波警報等の仕組みで呼びかけ
2025年7月30日 8時25分ごろカムチャツカ半島付近M8.71.3m(岩手県久慈港)1時間52分(根室市花咲)津波警報
2026年9月26日 6時23分ごろローヤリティー諸島M7.0--なし(日本への津波の影響はありません)
表2:主な遠地津波と日本への影響。出典:内閣府「過去の遠地地震の事例」「1960チリ地震津波 報告書」、気象庁 地震・火山月報(防災編)2015年9月・2022年1月 特集、気象庁報道発表資料(2010年2月27日、2025年7月31日)、気象庁「遠地地震に関する情報」(2026年9月26日)

一覧からわかるのは、M8前後以上の地震では、太平洋の反対側からでも日本に津波が届いていることです。一方で、けさのM7.0の地震のように、日本への影響がない場合もあります。気象庁は「遠地地震に関する情報」を、国外で発生したM7.0以上の地震などについて、地震発生から概ね30分以内に発表し、日本への津波の影響についても記述しています。この1か月(8月27日〜9月26日)の気象庁の地震情報214件のうち、「遠地地震に関する情報」は2件で、けさの地震と9月5日のスンダ海峡の地震でした。どちらも日本への津波の影響はありませんでした。

ツールの目安と実際の到達時間の比較

事例比べた地点大円距離目安(水深4,000m)実際の到達誤差実際に合う平均水深
カムチャツカ半島付近(2025年)根室市花咲1,497km2時間06分1時間52分+12.5%約5,100m
チリ中部沿岸(2015年)久慈港16,871km23時間40分22時間27分+5.4%約4,400m
チリ中部沿岸(2010年)根室市花咲(目安最短の地点)16,684km23時間24分約22時間+6.4%約4,500m
チリ(1960年)根室市花咲(目安最短の地点)16,678km23時間24分約23時間+1.7%約4,100m
ニューギニア沖(1996年)石垣島(目安最短の地点)3,129km4時間23分約4時間+9.8%約4,800m
表3:大円距離と到達の目安、実際の到達時間の比較。誤差=(目安-実際)÷実際。「実際に合う平均水深」は実際の時間で距離を割った速さから逆算した値。地点が特定できない事例は、もっとも早い地点の目安と比較。筆者計算

5つの事例で、目安と実際の差は1.7〜12.5%に収まりました。すべての事例で目安のほうが実際より遅めに出ています。いちばん差が大きかったのはカムチャツカ(+12.5%)で、目安2時間06分に対し実際は1時間52分でした。

目安が遅めに出る理由として考えられるのは、次の3つです。1つ目は、震源の「点」と津波の出どころのずれです。大きな地震では断層が数百kmにわたってずれるので、津波は震源の点よりも日本に近い場所からも出発します。カムチャツカのような近い事例ほど、この影響が相対的に大きくなります。2つ目は、通り道の深さです。チリから日本への経路には水深4,000mより深い海も多く、実際の時間から逆算した平均水深は2015年で約4,400m、カムチャツカで約5,100mでした。3つ目は、観測点の位置です。この記事の代表点は港の正確な位置ではなく、おおよその座標です。

逆に言えば、「距離÷時速約700km」という簡単な計算でも、太平洋を渡る津波の到達時間は1割程度の誤差でつかめるということです。ただし、これは「だいたい何時間の余裕があるか」を知るための数字で、実際の到達予想時刻は気象庁が海底地形をふまえたシミュレーションなどで発表します。

水深別の津波の速さ

水深秒速時速1,000km進むのにかかる時間
10m秒速約10m時速約36km28時間04分
100m秒速約31m時速約113km8時間52分
500m秒速約70m時速約252km3時間58分
1,000m秒速約99m時速約356km2時間48分
2,000m秒速約140m時速約504km1時間59分
3,000m秒速約171m時速約617km1時間37分
4,000m秒速約198m時速約713km1時間24分
5,000m秒速約221m時速約797km1時間15分
表4:水深別の津波(長波)の速さ。速さ=√(9.8×水深)で筆者計算

表4のとおり、水深が4分の1になると速さは半分になります。太平洋の深い海では1,000kmを約1時間24分で進みますが、水深100mの大陸棚では同じ距離に約9時間かかる計算です。ただし水深10mでも時速約36km。岸の近くで津波を見てから走って逃げるのは、とても間に合いません。

チリ中部沿岸の地震と日本の津波

発生日規模日本で観測された津波
1960年5月23日Mw9.5太平洋沿岸で1m〜4m程度
1985年3月4日Mw7.918cm(八丈島)
1995年7月30日Mw8.029cm(八戸)
2001年6月24日Mw8.428cm(根室市花咲)
2007年8月16日Mw8.015cm(根室市花咲、八戸、宮古、石垣島石垣港)
表5:チリ中部沿岸付近で過去に発生した地震による日本の津波。出典:気象庁報道発表資料(2010年2月27日)

表5は、2010年のチリ地震の直後に気象庁が報道発表資料に載せた過去の記録です。同じチリ中部沿岸の地震でも、Mw8前後なら日本では数十cm以下、Mw9.5の1960年は1m〜4m程度と、地震の規模によって日本での高さは大きく違います。到達時間は距離でほぼ決まりますが、高さは距離だけでは決まりません。地震の規模、断層の向き(津波がどちらへ強く出るか)、そして湾の形などで、同じ地震でも場所によって高さが大きく変わります。

最新の地震情報

国内外の最新の地震情報は、次の表で確認できます。気象庁が発表した地震情報をもとに、発生時刻・震源・規模・最大震度などを一覧にしています。海外の大きな地震のあとは、ここで「遠地地震に関する情報」が出ていないか、日本への津波の影響がどう書かれているかを見てみてください。

日本国内の地震の回数や震度の観測点を地図で見たいときは地震速報リアルタイム地図が便利です。最近の地震の多さが気になる人は最近地震が多いのはなぜ?2026年もどうぞ。

実例:日本を襲った遠地津波

1960年チリ地震津波:揺れのない朝、警報は間に合わなかった

1960年5月23日4時15分ごろ(日本時間)、南米チリでMw9.5の地震が起きました。観測史上最大の地震です。津波は太平洋を渡り、約23時間後の5月24日早朝に日本へ来襲しました。内閣府の災害対応資料では、岩手県沿岸への到達は24日4時50分ごろとされています(到達時刻は地域や資料によって幅があります)。

内閣府の報告書によると、津波の高さは北海道・東北で2m程度、場所によっては4〜6m、沖縄でも4mに達した所がありました。気象庁の資料では、日本での最大の津波の高さは岩手県野田村の8.1m(現地調査による)です。そして報告書は、「4時59分の予報が最も早かったが、津波到達後であった。津波の初動時刻までに津波警報が間に合った地域は皆無」と記しています。岩手県沿岸への到達(4時50分ごろ)から見ると、予報は約9分遅れたことになります。

住家の被害は全壊465戸、流失497戸、半壊1,209戸、床上浸水2,990戸、床下浸水1,517戸。北海道・青森・岩手・宮城・三重だけでも被害額は358億円(当時)にのぼり、多数の犠牲者が出ました。気象庁はこの現象を「チリ地震津波」と名付けています。日本で揺れを感じなかったために、多くの人が津波が来るとは思っていなかったことが、遠地津波のもっとも大きな教訓です。

2010年チリ地震:大津波警報が出た遠地津波

2010年2月27日15時34分ごろ、チリ中部沿岸(南緯36.1度、西経72.6度、深さ約60km)で大きな地震が起きました。気象庁の第1報ではM8.6、のちにMw8.8とされています。津波は約22時間後に日本に届き、気象庁は津波警報・注意報を発表、翌28日には青森県太平洋沿岸・岩手県・宮城県に大津波警報を出しました。日本では揺れを感じない遠い国の地震で、大津波警報まで出た事例です。

2022年トンガ噴火:地震ではないのに潮位が変わった

2022年1月15日13時ごろ、南太平洋のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山で大規模な噴火が起きました。日本では潮位の変化が観測され、最大は鹿児島県奄美市小湊の134cm、次いで岩手県久慈港の107cmでした。通常の津波とは違い、噴火による気圧の変化(空気の波)が関係したと考えられており、予想より早く潮位の変化が始まりました。気象庁は津波警報等の仕組みを使って防災対応を呼びかけました。ツールでトンガを選ぶと出る目安の時間は「海の波として進んだ場合」の計算で、この事例には当てはまらないことに注意してください。

2025年カムチャツカ:1時間52分で到達、最大はあとから

2025年7月30日8時25分ごろ、カムチャツカ半島付近でM8.7の地震が起き、気象庁は津波警報を発表しました。第1波は10時17分に根室市花咲で最初に観測され、地震から1時間52分後でした。「遠地津波」といっても、カムチャツカからなら2時間もかからずに届くのです(ツールでは千島列島中部からは計算上約1時間)。

注目したいのは最大の波の時刻です。最大は岩手県久慈港の1.3m(13時52分、地震から約5時間27分後)。仙台港では0.9mの波が23時20分に観測されていて、これは地震から約14時間55分後です。根室市花咲の0.8mは14時57分、八戸港の0.8mは19時16分、茨城県神栖市鹿島港の0.8mは20時47分でした。31日10時45分の時点でも北海道太平洋沿岸東部から種子島・屋久島地方に津波注意報が続き、気象庁は「少なくとも1日程度は現在と同程度の状態が継続する見込み」としていました。

地点観測時刻(7月30日)地震からの時間
根室市花咲10時17分(第1波)1時間52分
岩手県久慈港13時52分(最大1.3m)5時間27分
根室市花咲14時57分(0.8m)6時間32分
八戸港19時16分(0.8m)10時間51分
茨城県神栖市鹿島港20時47分(0.8m)12時間22分
仙台港23時20分(0.9m)14時間55分
表6:2025年7月30日カムチャツカ半島付近の地震による津波の観測。出典:気象庁報道発表資料(2025年7月31日、第4報)。地震からの時間は筆者計算

表6を見ると、第1波から高い波が観測されるまで数時間から十数時間あいています。「第1波が小さかったからもう大丈夫」ではないことが、はっきりわかります。

南太平洋の地震と南海トラフは関係ある?

「遠くで大きな地震があると、日本の大地震の前ぶれでは?」と心配する人もいるかもしれません。結論から言うと、南太平洋の地震と南海トラフ地震を直接結びつける根拠は示されていません。けさの地震について気象庁が発表したのは、「日本への津波の影響はありません」という津波についての情報です。

南海トラフは、日本の南の海底で海のプレートが陸のプレートの下に沈み込んでいる場所です。一方、けさのローヤリティー諸島は南半球の南太平洋にあり、本州の南の八丈島(代表点)からでも約6,763km離れた、別の場所のプレート境界です。M7クラスの地震は世界のどこかでたびたび起きています。遠くの地震のニュースをきっかけに備えを見直すのはとても良いことですが、「南太平洋で地震があったから南海トラフが近い」と心配しすぎる必要はありません。ただし、南海トラフ地震への備えは、今回の地震とは関係なく日ごろから続けておくことが大切です。

南海トラフ地震の発生確率の意味は「30年以内に70〜80%」はどれくらい高い?、地域ごとの揺れの確率は30年以内に震度6弱以上の確率ランキングでくわしく解説しています。「地震が少ない県なら安心?」という疑問には地震が少ない県は本当に安全か?で答えています。

遠地津波の注意点と備え

遠地津波は「時間の余裕がある」ぶん、油断もしやすい津波です。次の点を覚えておいてください。

  • 揺れがなくても、津波警報・注意報が出たら海岸から離れる。1960年は日本で揺れを感じないまま津波が来ました。海外の地震のあと気象庁が津波警報・注意報を出したら、国内の地震と同じように行動してください。
  • 津波は何時間も続く。第1波が最大とは限らない。2025年は最大の波が地震から約15時間後(仙台港)。2015年も津波注意報は第1波から10時間19分たった16時40分まで続きました。警報・注意報が解除されるまでは海に近づかないでください。
  • 「到達予想時刻」を過ぎても安心しない。予想時刻は第1波の目安で、場所によっては予想より早く来ることもあります。2022年のトンガの噴火では、予想より早く潮位の変化が始まりました。
  • 高さは距離では決まらない。同じチリの地震でも日本での高さは十数cmから数mまで違います(表5)。湾の奥では波が高くなりやすいことも知っておきましょう。
  • 海外の地震の情報は「遠地地震に関する情報」をチェック。気象庁は国外のM7.0以上の地震などについて、概ね30分以内に日本への津波の影響を発表します。
  • ハザードマップと避難場所を事前に確認。時間の余裕があるときこそ、落ち着いて避難先と経路を確かめておきましょう。

自宅や職場の津波浸水想定は、自治体のハザードマップで確認できます。見方のポイントはハザードマップの見方にまとめています。住んでいる市区町村で過去にどんな災害があったかは市区町村別 災害履歴データベース、わが家の地震リスクは防災ツールひろば(わが家の地震リスク診断)で調べられます。ツールで震源にもっとも近い地点になりやすい北海道東部や沖縄・先島諸島の人は、北海道の市区町村別 地震リスクデータベースや沖縄県の市区町村別 地震リスクデータベースもあわせて見てください。

2015年のチリ地震では、津波注意報が発表されたのは18日03時00分で、久慈港に第1波が届く約3時間21分も前でした。遠地津波では、このように夜中や早朝に警報・注意報が出ることもあります。スマートフォンの緊急速報や防災アプリの通知をオンにしておくと安心です。子どもを預けている家庭は、災害時の園の対応を台風・大雪・地震のとき保育園は休み?で確認しておくとよいでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 今日(9月26日)の南太平洋の地震で日本に津波は来ますか?

気象庁によると、日本への津波の影響はありません。2026年9月26日6時23分ごろのローヤリティー諸島の地震(M7.0)について、気象庁は「遠地地震に関する情報」で「震源の近傍で津波発生の可能性があります。この地震による日本への津波の影響はありません。」と発表しています。

Q2. 海外の地震で日本に津波は来ますか?

来ることがあります。1960年のチリ地震(Mw9.5)では約23時間後に日本を津波が襲い、2025年のカムチャツカ半島付近の地震(M8.7)では1時間52分後に根室市花咲で第1波が観測されました。ただし海外の地震のすべてで津波が来るわけではなく、日本への影響は気象庁が発表します。

Q3. チリから日本まで津波は何時間で来ますか?

おおよそ22時間から23時間です。1960年は約23時間後、2010年は約22時間後、2015年は久慈港に22時間27分後に第1波が届きました。2015年の震源から久慈港までは約16,871kmあり、水深4,000mの速さ(時速約713km)で割ると約23時間40分になります。

Q4. 遠地地震に関する情報とは何ですか?

気象庁が国外で発生した地震について出す情報です。マグニチュード7.0以上の地震や、都市部など著しい被害が発生する可能性がある地域で規模の大きな地震が起きた場合に、発生時刻、震源、規模を地震発生から概ね30分以内に発表し、日本や国外への津波の影響についても記述します。

Q5. 南太平洋の地震と南海トラフ地震は関係ありますか?

南太平洋の地震と南海トラフ地震を直接結びつける根拠は示されていません。南海トラフは日本の南の海底にあるプレート境界で、南太平洋の地震はそこから数千km以上離れた別の場所のプレート境界で起きています。

Q6. 遠地津波の揺れは日本で感じますか?

感じないことがほとんどです。1960年のチリ地震津波では日本で揺れを感じないまま津波が来襲し、津波の初動時刻までに津波警報が間に合った地域はありませんでした。揺れがなくても、津波警報・注意報が出たら海岸から離れてください。

Q7. 津波の速さはどれくらいですか?

海の深さで決まり、速さは重力加速度と水深をかけたものの平方根です。水深4,000mで時速約713km、5,000mで約797kmとジェット機並みですが、水深100mでは約113km、水深10mでも約36kmあり、人が走って逃げ切れる速さではありません。

Q8. 遠地津波は第1波が一番大きいのですか?

そうとは限りません。2025年のカムチャツカ半島付近の地震では第1波が地震から1時間52分後でしたが、仙台港では約15時間後に0.9mの波が観測されました。津波は反射や散乱で何度も押し寄せるので、警報・注意報が解除されるまで海に近づかないでください。

まとめ
  • けさ(9月26日6時23分ごろ)のローヤリティー諸島M7.0は、日本への津波の影響なし(気象庁「遠地地震に関する情報」)。
  • 海外の地震でも日本に津波は来る。揺れを感じないのに来るのが遠地津波。1960年チリ地震津波では警報が間に合わなかった。
  • 速さは√(g×水深)。水深4,000mで時速約713km。チリから約22〜23時間、カムチャツカから約2時間、ニューギニア付近から約4時間。
  • 「距離÷時速約713km」の目安は、実際より1.7〜12.5%遅めだった(5事例、筆者計算)。
  • 第1波が最大とは限らず、長く続く。高さは距離だけでは決まらない。避難の判断は必ず気象庁の津波警報・注意報で。

出典:気象庁「遠地地震に関する情報」(2026年9月26日)、気象庁「地震情報について」「津波発生と伝播のしくみ」、気象庁報道発表資料(2010年2月27日、2025年7月31日〔第4報〕)、気象庁 地震・火山月報(防災編)2015年9月・2022年1月 特集、内閣府「過去の遠地地震の事例」「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 1960チリ地震津波」、内閣府 災害対応資料(1960年チリ地震津波)。距離・到達時間の計算は筆者。

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