「南海トラフ地震は30年以内に80%程度」「首都直下地震は70%程度」——ニュースで必ず出てくるこの数字、どれくらい高いのか、ピンと来る人は少ないと思います。「今年起きる確率が80%」と誤解している人もいれば、「30年もあるなら先の話」と受け流す人もいます。
この記事では、地震の発生確率の意味と読み方、他の出来事の確率との比べ方、そして「確率が低い場所が安全ではない」理由を、令和8年熊本地震(2026年7月)や能登半島地震(2024年)の例をまじえて気象予報士が解説します。

私は気象庁で働いていた気象予報士です。「30年以内に80%」は、ざっくり言えば「住宅ローンを払い終えるまでに、8割がた来る」という意味。今日来る確率ではありませんが、遠い未来の話でもありません。
「30年以内に70%」を別の期間に直すと
地震の確率は「その期間内に1回以上起きる確率」です。同じ地震を短い期間・長い期間で言い換えると次のようになります(発生が時間的にランダムだと仮定した換算)。
| 30年以内の確率 | 1年以内 | 10年以内 | 50年以内 | たとえ |
|---|---|---|---|---|
| 80%(南海トラフ) | 約5% | 約41% | 約93% | 1年に1回、20面のサイコロで「1」を出す |
| 70%(首都直下) | 約4% | 約33% | 約87% | 1年に1回、25面のサイコロで「1」を出す |
| 30% | 約1% | 約11% | 約45% | |
| 10% | 約0.4% | 約3.5% | 約16% | |
| 3% | 約0.1% | 約1% | 約5% |
「1年に5%」と聞くと小さく感じますが、毎年5%のくじを30年引き続ければ、8割の人が当たる——それが30年80%です。しかも南海トラフのように「前回から時間が経つほど確率が上がる」タイプの地震は、来年の数字は今年より高くなります。
【ツール】都道府県の地震指標を切り替えて順位を確認
下のツールでは、30年以内に震度6弱以上となる確率・有感地震の回数・表層地盤増幅率・震度6弱以上を観測した市区町村数・地震保険料・台風接近数を切り替えて、47都道府県の順位と偏差値を確認できます(高知県を黄色で強調表示)。
他の出来事と比べると
地震調査研究推進本部は、地震の確率を身近な出来事と比べる資料を出しています。「30年間に遭う確率」で並べると、地震の数字の大きさがわかります。
| 30年間に… | 確率 |
|---|---|
| 交通事故でけがをする | 約24% |
| 火災に遭う | 約1.9% |
| 空き巣に入られる | 約3.4% |
| 台風で被害を受ける | 約0.5% |
| 交通事故で死亡する | 約0.2% |
| 南海トラフ地震が発生する | 80%程度 |
| 南関東でM7クラスの地震が発生する | 70%程度 |
| 高知市で震度6弱以上の揺れに見舞われる | 77.7% |
「交通事故でけがをする24%」を、私たちは十分高いと考えて保険に入り、シートベルトをします。南海トラフ地震の80%はその3倍以上。「備えないのは不自然」な水準だとわかります。
停電・断水に備えるなら
台風や地震で最初に困るのは電気と水です。気象庁の警報が出てから買いに走っても店頭にはありません。平時にそろえておくものを3つだけ挙げると、ポータブル電源・水と非常食・非常持ち出しセットです。
2種類の確率を混同しない|「地震が起きる確率」と「揺れに見舞われる確率」
ニュースに出る確率には2種類あります。
- 地震の発生確率(地震調査研究推進本部):特定の断層や海溝で「その地震が起きる」確率。南海トラフ80%、首都直下70%はこちら。場所の揺れは含まない
- 揺れに見舞われる確率(J-SHIS 地震ハザードステーション):ある地点が「震度6弱以上の揺れを受ける」確率。すべての地震と地盤の揺れやすさを足し合わせたもの。当サイトの今後30年以内に震度6弱以上の地震が起きる確率ランキングや地震リスクデータベースはこちら
たとえば南海トラフ地震の発生確率が80%でも、震源から遠い場所の「揺れに見舞われる確率」は低くなります。逆に、大きな地震の発生確率が低い地域でも、地盤が軟らかければ揺れの確率は上がります。自分の家のリスクは、後者で見るのが正解です。
都道府県別「30年以内に震度6弱以上」の確率
| 都道府県(県庁所在地) | 震度6弱以上 | 震度6強以上 | |
|---|---|---|---|
| 1位 | 高知県 | 77.7% | 66.3% |
| 2位 | 徳島県 | 77.5% | 57.7% |
| 3位 | 香川県 | 73.6% | 41.6% |
| 4位 | 和歌山県 | 73.1% | 31.4% |
| 5位 | 静岡県 | 72.8% | 43.8% |
| 6位 | 千葉県 | 71.2% | 21.8% |
| 7位 | 埼玉県 | 62.4% | 15% |
| 8位 | 岐阜県 | 61.9% | 19.8% |
| … | |||
| 47位 | 北海道 | 2.3% | 0.2% |
| 46位 | 長野県 | 2.7% | 0.3% |
| 45位 | 山形県 | 3.8% | 0.4% |
| 44位 | 島根県 | 4.7% | 1.3% |
| 43位 | 山口県 | 5.5% | 1.1% |
確率が低い場所で大地震が起きた3つの例
確率は「起きやすさの相対的な目安」であって、「起きない保証」ではありません。むしろ日本で起きた内陸の大地震の多くは、確率が低いとされた場所で起きています。
- 阪神・淡路大震災(1995年):兵庫県の30年確率は現在でも7.6%(全国下位)。活断層の地震は数千年に1回なので、30年確率にすると必ず小さくなります。
- 熊本地震(2016年)と令和8年熊本地震(2026年7月28日、M7.1・震度7):熊本県の30年確率は18.2%。10年で2回、震度7を観測しました。
- 能登半島地震(2024年):石川県の30年確率は12.6%。志賀町・輪島市で震度7、その後も群発地震が続いています。
活断層の地震は「1回あたりの間隔が長い」ため確率は数%と出ますが、日本には約2,000の活断層があり、どこかで起きる確率はほぼ100%です。「うちの県は確率が低いから大丈夫」は、この確率の性質を誤解した読み方です。地震回数が少ない県の注意点は地震が少ない県は本当に安全かで詳しく解説しています。

確率が高い場所は「いつ来てもおかしくない」、低い場所は「来ないとは言えない」。どちらも備える理由になる、というのが地震の確率の正しい使い方です。
確率をどう使うか|3つの実用的な読み方
- 住まいを選ぶ:同じ市内でも地盤で揺れの確率は変わる。揺れやすい地盤ランキング 全国1,756市区町村・東京23区 揺れやすい区・地盤が強い区ランキングで自分の街を確認
- 保険を決める:地震保険の料率は確率とおおむね連動している。地震保険料が高い県・安い県ランキング
- 備えの優先順位:確率が高い海溝型(南海トラフ・千島海溝・首都直下)の地域は津波・広域停電への備え、活断層地域は建物の耐震化が優先
過去の震度の記録は震度7を観測した地震の一覧・震度6強以上を観測したことがある市町村一覧、災害全体の少なさで県を比べた記事は災害が少ない県ランキングをご覧ください。
都道府県で見る「30年確率」と、その他の地震指標
「30年以内に70〜80%」を実感するために、確率が最も高い高知県を例に、確率・回数・地盤・保険料の47都道府県ランキングを並べます。確率が高い県ほど「普段の地震が多い」わけではないことに注目してください。
30年以内に震度6弱以上となる確率の高さ:高知は1位
| 順位 | 都道府県 | 30年以内に震度6弱以上の確率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 高知県 | 77.7% | 69.9 |
| 2位 | 徳島県 | 77.5% | 69.8 |
| 3位 | 香川県 | 73.6% | 68.2 |
| 4位 | 和歌山県 | 73.1% | 68.0 |
| 5位 | 静岡県 | 72.8% | 67.9 |
| 6位 | 千葉県 | 71.2% | 67.3 |
| 7位 | 埼玉県 | 62.4% | 63.7 |
| 8位 | 岐阜県 | 61.9% | 63.5 |
| 9位 | 大分県 | 57.4% | 61.6 |
| 10位 | 三重県 | 48.9% | 58.2 |
高知県は1位(77.7%、偏差値69.9)。1位は高知県(77.7%)、47位は北海道(2.3%)、全国平均は28.8%です。比較:徳島2位・静岡5位・東京13位・北海47位。詳しくは今後30年以内に震度6弱以上の地震が起きる確率ランキングをご覧ください。
有感地震の年間回数の多さ:高知は36位
| 順位 | 都道府県 | 有感地震の年間回数 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 長野県 | 650回 | 107.1 |
| 2位 | 東京都 | 286回 | 71.4 |
| 3位 | 茨城県 | 182回 | 61.2 |
| 4位 | 北海道 | 153回 | 58.3 |
| 5位 | 福島県 | 139回 | 57.0 |
| 6位 | 岩手県 | 132回 | 56.3 |
| 7位 | 宮城県 | 118回 | 54.9 |
| 8位 | 鹿児島県 | 114回 | 54.5 |
| 9位 | 栃木県 | 114回 | 54.5 |
| 10位 | 千葉県 | 95回 | 52.6 |
| 36位 | 高知県 | 17回 | 45.0 |
高知県は36位(17回、偏差値45.0)。1位は長野県(650回)、47位は佐賀県(8回)、全国平均は68回です。比較:徳島40位・静岡12位・東京2位・北海4位。高知は確率1位なのに回数は36位。南海トラフ地震は100〜150年周期のため、普段は静かなのです。詳しくは地震が多い都道府県・市町村ランキングをご覧ください。
表層地盤増幅率の大きさ(県内平均):高知は43位
| 順位 | 都道府県 | 表層地盤増幅率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 石川県 | 1.60倍 | 68.6 |
| 2位 | 千葉県 | 1.55倍 | 65.2 |
| 3位 | 茨城県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 4位 | 埼玉県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 5位 | 新潟県 | 1.53倍 | 63.8 |
| 6位 | 山口県 | 1.51倍 | 62.4 |
| 7位 | 香川県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 8位 | 佐賀県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 9位 | 富山県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 10位 | 福井県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 43位 | 高知県 | 1.12倍 | 35.9 |
高知県は43位(1.12倍、偏差値35.9)。1位は石川県(1.60倍)、47位は長野県(0.97倍)、全国平均は1.33倍です。比較:徳島16位・静岡26位・東京23位・北海22位。詳しくは揺れやすい地盤ランキングをご覧ください。
地震保険料の高さ:高知は8位
| 順位 | 都道府県 | 地震保険料 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 千葉県 | 27,500円 | 73.8 |
| 2位 | 東京都 | 27,500円 | 73.8 |
| 3位 | 神奈川県 | 27,500円 | 73.8 |
| 4位 | 静岡県 | 27,500円 | 73.8 |
| 5位 | 埼玉県 | 26,500円 | 72.3 |
| 6位 | 茨城県 | 23,000円 | 67.1 |
| 7位 | 徳島県 | 23,000円 | 67.1 |
| 8位 | 高知県 | 23,000円 | 67.1 |
| 9位 | 宮城県 | 11,600円 | 50.2 |
| 10位 | 福島県 | 11,600円 | 50.2 |
高知県は8位(23,000円、偏差値67.1)。1位は千葉県(27,500円)、47位は鹿児島県(7,300円)、全国平均は11,436円です。比較:徳島7位・静岡4位・東京2位・北海20位。保険料は確率とほぼ連動し、高知は3等地グループです。詳しくは地震保険料ランキングをご覧ください。
高知県内の市区町村で見る地震リスク|確率・地盤・回数トップ10
高知県の34市区町村について、当サイトの地震リスクデータベースから「30年以内に震度6弱以上となる確率」「表層地盤増幅率」「年平均の有感地震回数」の上位10を並べました。市区町村名をクリックすると詳細ページ(過去の最大震度・年代別回数・地形分類)が開きます。
30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が高い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 30年確率(6弱以上) |
|---|---|---|
| 1 | 東洋町 | 79.8% |
| 2 | 四万十市 | 79.4% |
| 3 | 田野町 | 79.4% |
| 4 | 奈半利町 | 79.3% |
| 5 | 室戸市 | 78.6% |
| 6 | 高知市 | 77.7% |
| 7 | 安芸市 | 76.5% |
| 8 | 北川村 | 76.1% |
| 9 | 芸西村 | 76.0% |
| 10 | 土佐市 | 75.8% |
地盤が揺れやすい(表層地盤増幅率が大きい)市区町村
| 順位 | 市区町村 | 表層地盤増幅率 |
|---|---|---|
| 1 | 四万十市 | 1.79倍 |
| 2 | 田野町 | 1.78倍 |
| 3 | 高知市 | 1.75倍 |
| 4 | 東洋町 | 1.75倍 |
| 5 | 奈半利町 | 1.75倍 |
| 6 | 室戸市 | 1.42倍 |
| 7 | 土佐市 | 1.40倍 |
| 8 | 安芸市 | 1.37倍 |
| 9 | 芸西村 | 1.35倍 |
| 10 | いの町 | 1.32倍 |
有感地震の回数が多い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 年平均有感地震回数 |
|---|---|---|
| 1 | 宿毛市 | 20.6回 |
| 2 | 黒潮町 | 8.9回 |
| 3 | 高知市 | 8.7回 |
| 4 | 香南市 | 6.8回 |
| 5 | 安芸市 | 6.4回 |
| 6 | 四万十市 | 5.5回 |
| 7 | 香美市 | 5.2回 |
| 8 | 土佐町 | 5.2回 |
| 9 | 四万十町 | 5.0回 |
| 10 | 東洋町 | 4.6回 |
過去に震度6弱以上を観測したことがあるのは1市区町村(宿毛市=6弱)。全国の一覧は震度6強以上を観測したことがある市町村一覧をご覧ください。
水害・台風の備えは保険の見直しから
地震保険は火災保険とセットでしか入れません。風水害・雪害は火災保険の補償範囲なので、ハザードマップで自宅のリスクを確認したら、補償内容が合っているか一度確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 70%と80%、どちらを信じればいい?
地震調査研究推進本部は南海トラフ地震の30年確率を「70〜80%」と幅で示しています。計算モデル(時間予測モデルか単純平均か)の違いによる幅で、どちらも「非常に高い」ことに変わりはありません。
Q. 確率が低い県は安全?
いいえ。2024年能登半島地震の志賀町は30年確率6.5%、2016年熊本地震の益城町も10%台でした。活断層の地震は数千年に1回のため確率が小さく見えるだけです。地震が少ない県は本当に安全かで詳しく解説しています。
Q. 確率は年々変わる?
南海トラフのような海溝型は、前回の地震から時間が経つほど確率が上がる計算のため、毎年少しずつ上昇します。J-SHISの地図は毎年更新され、当サイトのデータも2024年版に基づいています。
Q. 自宅の確率はどこで調べられる?
防災科研のJ-SHISで住所検索するか、当サイトの地震リスクデータベースで市区町村を選ぶと、役所付近の値と地盤増幅率・過去の最大震度がまとめて見られます。
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- 地震が少ない県・市町村ランキング
- 揺れやすい地盤ランキング
- 地震保険料ランキング
- 地震が少ない県は本当に安全か
- 震度7を観測した地震の一覧
- ハザードマップの見方
- 「30年以内に80%」は1年あたり約5%、10年で約41%。住宅ローンの期間に8割がた来るという意味
- 交通事故でけがをする30年確率(約24%)の3倍以上。備えないほうが不自然な水準
- 「地震の発生確率」(断層・海溝ごと)と「揺れに見舞われる確率」(地点ごと・J-SHIS)は別物。自宅のリスクは後者で
- 確率が低い場所でも大地震は起きる。阪神(兵庫7.6%)・熊本(18.2%)・能登(12.6%)はいずれも下位〜中位の県
- 確率は「備えの優先順位」を決める道具。高くても低くても備える理由になる
出典:気象庁 震度データベース(1919年1月〜)、防災科学技術研究所 J-SHIS 地震ハザードステーション(2024年版、役所付近の250mメッシュ値)、地震調査研究推進本部「地震発生確率」「他の事象との比較」、気象庁「令和8年熊本地震について」。当サイトは独自の地震予測を行っていません。偏差値・順位は当サイトの地震リスクデータベース(1,756市区町村)から集計しています。
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