「川崎市で地震に強い区・弱い区はどこ?」——防災科学技術研究所のJ-SHIS(地震ハザードステーション、2024年版)が公表している「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」を、川崎市7区の区役所付近の250mメッシュ値で比べると、最も高い幸区の70.7%から最も低い麻生区の23.7%まで、同じ市内で3.0倍の差があります。
この記事では川崎市7区の確率を一覧にし、区によって数字が違う理由(地盤と活断層の位置)、川崎市で想定される地震、神奈川県全体の中での位置づけ、そして区の数字の読み方を気象予報士がまとめます。

川崎市は多摩川沿いの低地(幸区・中原区・川崎区・高津区)が60〜70%、多摩丘陵の麻生区・多摩区が20〜35%と、細長い市の形そのままに「海側で高く、山側で低い」構図です。差は3倍にもなります。
川崎市7区 今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率ランキング
確率が高い順に並べています。「全国偏差値」は当サイトが集計した全国1,894市区町村(政令市は区単位)の30年確率(6弱以上)の分布に対する偏差値(平均28.1%)です。
| 順位 | 区 | 6弱以上 | 6強以上 | 全国偏差値 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 幸区 | 70.7% | 20.9% | 66.7 |
| 2 | 中原区 | 69.2% | 19.9% | 66.2 |
| 3 | 川崎区 | 68.4% | 19.2% | 65.8 |
| 4 | 高津区 | 63.3% | 16.4% | 63.8 |
| 5 | 宮前区 | 56.7% | 13% | 61.2 |
| 6 | 多摩区 | 35% | 5.1% | 52.7 |
| 7 | 麻生区 | 23.7% | 2.5% | 48.3 |
川崎市7区の平均は55.3%。神奈川県の代表値(県庁所在地付近のメッシュ)は43.4%で都道府県ランキングでは16位、全国の市区町村平均は28.1%です。平均より高い幸区・中原区・川崎区・高津区・宮前区と、低い多摩区・麻生区では、同じ市でも数字の意味が変わります。
【ツール】都道府県の地震指標を切り替えて順位を確認
下のツールでは、30年以内に震度6弱以上となる確率・有感地震の回数・表層地盤増幅率・震度6弱以上を観測した市区町村数・地震保険料を切り替えて、47都道府県の順位と偏差値を確認できます(神奈川県を強調表示)。区の表は見出しをクリックすると並べ替えられます。
なぜ区によって確率がこれほど違うのか
多摩川低地の区は高い。幸区70.7%・中原区69.2%・川崎区68.4%・高津区63.3%は多摩川がつくった沖積低地の上です。川崎区は江戸時代以降の新田開発と近代の埋立でできた土地で、東京湾岸の埋立地は液状化と津波の両方のリスクを抱えています。
多摩丘陵の区は低い。麻生区23.7%・多摩区35%は多摩丘陵の上にあり、市内で最も低いグループです。硬い地盤のため揺れの増幅が小さい一方、丘陵地の造成宅地では盛土部分の崩れに注意が必要です。宮前区56.7%は下末吉台地と谷戸が入り組む中間的な値です。
同じ区でも台地と低地で違う。高津区や中原区は多摩川低地と台地の境目にあり、区役所の位置で数字が変わります。J-SHISの地図で自宅の値を確認すると、同じ区内で20ポイント以上違うことがあります。
停電・断水に備えるなら
台風や地震で最初に困るのは電気と水です。気象庁の警報が出てから買いに走っても店頭にはありません。平時にそろえておくものを3つだけ挙げると、ポータブル電源・水と非常食・非常持ち出しセットです。
川崎市で想定される地震
首都直下地震:川崎市を含む南関東ではM7クラスの直下地震が30年以内に70%程度とされています。政府の被害想定「都心南部直下地震」では川崎区・幸区・中原区の広い範囲で震度6強が想定され、木造密集地域の火災延焼も課題です。
相模トラフ(関東地震型):1923年の関東地震(M7.9)では川崎で震度6相当の揺れがあり、多摩川沿いで大きな被害が出ました。同型のM8クラスは30年以内にほぼ0〜6%ですが、発生すれば市内全域で震度6強〜7と想定されています。
過去の地震:2011年の東北地方太平洋沖地震では川崎市で震度5弱〜5強を観測し、川崎区の埋立地で液状化が確認されました。神奈川県の被害想定では、川崎区の臨海部で最大2〜3mの津波も想定されています。
川崎市全体の地震リスク(データベースより)
| 指標 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 年平均有感地震回数 | 37.7回 | 1919年以降の気象庁震度データベース(役所付近の観測点) |
| 総観測回数 | 1,002回 | 同上 |
| 過去最大震度 | 5強 | 市役所付近の観測点の値。2011年東北地方太平洋沖地震で震度5強(川崎区) |
| 30年確率(6弱以上) | 68.4% | 市役所付近メッシュ |
| 30年確率(5強以上) | 98% | 同上 |
| 表層地盤増幅率 | 1.79 | 1.6以上で「揺れやすい」とされる |
| 役所付近の地形分類 | 三角州・海岸低地 | 国土地理院 地形分類 |
川崎市の年平均有感地震回数は37.7回(神奈川県は都道府県で17位)、表層地盤増幅率は1.79で「揺れやすい」地盤に分類されます。30年確率は全国平均を上回り、地震が少ない市町村ランキングと「地震が少ない県は本当に安全か」で解説しているように、回数の少なさと揺れの大きさは別の指標です。
区の確率をどう読むか——3つの注意点
- 「区役所付近の250mメッシュ」の値です。同じ区でも台地の上と川沿いの低地では確率が大きく変わります。自宅の値はJ-SHISの地図で住所検索して確認してください。
- 確率は「揺れる確率」であって「被害を受ける確率」ではありません。被害は建物の耐震性・家具固定・液状化しやすい地盤かどうかで決まります。
- 低い区も安全ではありません。「30年以内に○%」の意味の記事で解説しているように、確率が低く見える地域でも直下型地震は起こりえます。
備えのチェックリスト
- 自宅の建築年を確認(1981年6月以降=新耐震、2000年6月以降=現行基準)
- 市のハザードマップで揺れやすさ・液状化・津波の3つを重ねて確認(ハザードマップの見方)
- 家具固定・寝室の安全確保・備蓄(最低3日分、できれば1週間分)
- 火災保険と地震保険の加入状況を確認(神奈川県のイ構造・保険金額1,000万円あたりの年額は27,500円、47都道府県で3番目に高い)
都道府県で見る神奈川の地震リスク|確率・地盤・回数・観測市町村数
川崎市の区ごとの比較に加えて、神奈川県全体が47都道府県の中でどの位置にあるかを確認します。
30年以内に震度6弱以上となる確率の高さ:神奈川は16位
| 順位 | 都道府県 | 30年以内に震度6弱以上の確率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 高知県 | 77.7% | 69.9 |
| 2位 | 徳島県 | 77.5% | 69.8 |
| 3位 | 香川県 | 73.6% | 68.2 |
| 4位 | 和歌山県 | 73.1% | 68.0 |
| 5位 | 静岡県 | 72.8% | 67.9 |
| 6位 | 千葉県 | 71.2% | 67.3 |
| 7位 | 埼玉県 | 62.4% | 63.7 |
| 8位 | 岐阜県 | 61.9% | 63.5 |
| 9位 | 大分県 | 57.4% | 61.6 |
| 10位 | 三重県 | 48.9% | 58.2 |
| 16位 | 神奈川県 | 43.4% | 55.9 |
神奈川県は16位(43.4%、偏差値55.9)。1位は高知県(77.7%)、全国平均は28.8%です。全47都道府県の順位は30年以内に震度6弱以上の確率ランキングで確認できます。
表層地盤増幅率の大きさ(県内平均):神奈川は15位
| 順位 | 都道府県 | 表層地盤増幅率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 石川県 | 1.60倍 | 68.6 |
| 2位 | 千葉県 | 1.55倍 | 65.2 |
| 3位 | 茨城県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 4位 | 埼玉県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 5位 | 新潟県 | 1.53倍 | 63.8 |
| 6位 | 山口県 | 1.51倍 | 62.4 |
| 7位 | 香川県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 8位 | 佐賀県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 9位 | 富山県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 10位 | 福井県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 15位 | 神奈川県 | 1.40倍 | 55.0 |
神奈川県は15位(1.40倍、偏差値55.0)。1位は石川県(1.60倍)、全国平均は1.33倍です。全47都道府県の順位は表層地盤増幅率ランキングで確認できます。
有感地震の年間回数の多さ:神奈川は17位
| 順位 | 都道府県 | 有感地震の年間回数 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 長野県 | 650回 | 107.1 |
| 2位 | 東京都 | 286回 | 71.4 |
| 3位 | 茨城県 | 182回 | 61.2 |
| 4位 | 北海道 | 153回 | 58.3 |
| 5位 | 福島県 | 139回 | 57.0 |
| 6位 | 岩手県 | 132回 | 56.3 |
| 7位 | 宮城県 | 118回 | 54.9 |
| 8位 | 鹿児島県 | 114回 | 54.5 |
| 9位 | 栃木県 | 114回 | 54.5 |
| 10位 | 千葉県 | 95回 | 52.6 |
| 17位 | 神奈川県 | 50回 | 48.3 |
神奈川県は17位(50回、偏差値48.3)。1位は長野県(650回)、全国平均は68回です。全47都道府県の順位は有感地震の年間回数ランキングで確認できます。
震度6弱以上を観測した市区町村数の多さ:神奈川は25位
| 順位 | 都道府県 | 震度6弱以上を観測した市区町村数 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 福島県 | 34 | 85.9 |
| 2位 | 茨城県 | 30 | 81.0 |
| 3位 | 宮城県 | 27 | 77.3 |
| 4位 | 熊本県 | 23 | 72.3 |
| 5位 | 北海道 | 16 | 63.7 |
| 6位 | 新潟県 | 11 | 57.5 |
| 7位 | 岩手県 | 10 | 56.3 |
| 8位 | 栃木県 | 10 | 56.3 |
| 9位 | 鳥取県 | 10 | 56.3 |
| 10位 | 石川県 | 7 | 52.6 |
| 25位 | 神奈川県 | 1 | 45.2 |
神奈川県は25位(1、偏差値45.2)。1位は福島県(34)、全国平均は5です。全47都道府県の順位は震度6弱以上を観測した市区町村数ランキングで確認できます。
神奈川県内の市区町村で見る地震リスク|確率・地盤・回数トップ10
神奈川県の33市区町村について、当サイトの地震リスクデータベースから「30年以内に震度6弱以上となる確率」「表層地盤増幅率」「年平均の有感地震回数」の上位10を並べました。市区町村名をクリックすると詳細ページ(過去の最大震度・年代別回数・地形分類)が開きます。
30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が高い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 30年確率(6弱以上) |
|---|---|---|
| 1 | 海老名市 | 77.8% |
| 2 | 小田原市 | 75.8% |
| 3 | 伊勢原市 | 74% |
| 4 | 逗子市 | 70.5% |
| 5 | 厚木市 | 69.4% |
| 6 | 大井町 | 69.1% |
| 7 | 川崎市 | 68.4% |
| 8 | 横浜市 | 67.3% |
| 9 | 茅ヶ崎市 | 66.6% |
| 10 | 寒川町 | 66% |
地盤が揺れやすい(表層地盤増幅率が大きい)市区町村
| 順位 | 市区町村 | 表層地盤増幅率 | 地形分類 |
|---|---|---|---|
| 1 | 海老名市 | 2.05 | 後背湿地 |
| 2 | 伊勢原市 | 1.89 | 後背湿地 |
| 3 | 小田原市 | 1.82 | 後背湿地 |
| 4 | 厚木市 | 1.8 | 後背湿地 |
| 5 | 川崎市 | 1.79 | 三角州・海岸低地 |
| 6 | 横浜市 | 1.77 | 三角州・海岸低地 |
| 7 | 逗子市 | 1.76 | 砂州・砂礫州 |
| 8 | 茅ヶ崎市 | 1.68 | 砂州・砂礫州 |
| 9 | 寒川町 | 1.67 | 旧河道・旧池沼 |
| 10 | 大井町 | 1.65 | 扇状地 |
有感地震の回数が多い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 年平均有感地震回数 | 過去最大震度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 川崎市 | 37.7回 | 5強 |
| 2 | 茅ヶ崎市 | 36.1回 | 5弱 |
| 3 | 三浦市 | 34.7回 | 4 |
| 4 | 相模原市 | 34回 | 5弱 |
| 5 | 横須賀市 | 31.4回 | 6弱 |
| 6 | 横浜市 | 30.9回 | 5弱 |
| 7 | 秦野市 | 27.1回 | 4 |
| 8 | 清川村 | 26.2回 | 5弱 |
| 9 | 中井町 | 25.4回 | 5弱 |
| 10 | 綾瀬市 | 24.9回 | 5弱 |
過去に震度6弱以上を観測したことがあるのは1市区町村(横須賀市=6弱)。全国の一覧は震度6強以上を観測したことがある市町村一覧をご覧ください。
水害・台風の備えは保険の見直しから
地震保険は火災保険とセットでしか入れません。風水害・雪害は火災保険の補償範囲なので、ハザードマップで自宅のリスクを確認したら、補償内容が合っているか一度確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 川崎市で最も地盤が良い区は?
麻生区(23.7%)と多摩区(35%)です。多摩丘陵の硬い地盤の上にあります。ただし丘陵地の造成宅地は盛土部分の被害に注意が必要です。
Q. 幸区・中原区が高いのはなぜ?
多摩川の沖積低地で、軟らかい地盤が揺れを増幅するためです。加えて首都直下地震の想定震源に近く、震度6強の想定区域に含まれています。
Q. 川崎区は液状化する?
川崎区の臨海部は埋立地で、2011年にも液状化が確認されています。津波(最大2〜3m想定)のリスクもあるため、市のハザードマップで避難場所を確認してください。
Q. 川崎市で想定される最大の地震は?
首都直下地震(都心南部直下 M7.3)で川崎区・幸区・中原区に震度6強、相模トラフのM8クラス地震では市内全域で震度6強〜7が想定されています。
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- 確率が低い区も安全ではない。耐震・家具固定・液状化と津波のハザードマップ・地震保険の4点で備える
出典:防災科学技術研究所 J-SHIS 地震ハザードステーション(2024年版、今後30年以内に震度6弱以上/6強以上の揺れに見舞われる確率、平均ケース、区役所・市役所付近の250mメッシュ)、地震調査研究推進本部の長期評価、気象庁 震度データベース(1919年〜)、国土地理院 地形分類。偏差値は当サイトが全国1,894市区町村の分布から算出。
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