「広島市で地震に強い区・弱い区はどこ?」——防災科学技術研究所のJ-SHIS(地震ハザードステーション、2024年版)が公表している「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」を、広島市8区の区役所付近の250mメッシュ値で比べると、最も高い安佐南区の35%から最も低い安佐北区の10.1%まで、同じ市内で3.5倍の差があります。
この記事では広島市8区の確率を一覧にし、区によって数字が違う理由(地盤と活断層の位置)、広島市で想定される地震、広島県全体の中での位置づけ、そして区の数字の読み方を気象予報士がまとめます。

広島市は安佐南区35.0%・西区31.9%が高く、安佐北区10.1%が最も低いという構図です。太田川の三角州(中区・南区・西区)は軟らかい地盤で表層地盤増幅率1.68、山地の安佐北区は硬い地盤。安佐南区が最も高いのは、太田川低地の上にあり、五日市断層・己斐断層に近いためです。
広島市8区 今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率ランキング
確率が高い順に並べています。「全国偏差値」は当サイトが集計した全国1,894市区町村(政令市は区単位)の30年確率(6弱以上)の分布に対する偏差値(平均28.1%)です。
| 順位 | 区 | 6弱以上 | 6強以上 | 全国偏差値 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 安佐南区 | 35% | 7.5% | 52.7 |
| 2 | 西区 | 31.9% | 6.7% | 51.5 |
| 3 | 中区 | 24.8% | 4.5% | 48.7 |
| 4 | 安芸区 | 23.2% | 3.5% | 48.1 |
| 5 | 南区 | 21.7% | 3.6% | 47.5 |
| 6 | 佐伯区 | 21.5% | 4.3% | 47.4 |
| 7 | 東区 | 21.3% | 3.5% | 47.3 |
| 8 | 安佐北区 | 10.1% | 1.8% | 42.9 |
広島市8区の平均は23.7%。広島県の代表値(県庁所在地付近のメッシュ)は26.5%で都道府県ランキングでは20位、全国の市区町村平均は28.1%です。平均より高い安佐南区・西区・中区と、低い安芸区・南区・佐伯区・東区・安佐北区では、同じ市でも数字の意味が変わります。
【ツール】都道府県の地震指標を切り替えて順位を確認
下のツールでは、30年以内に震度6弱以上となる確率・有感地震の回数・表層地盤増幅率・震度6弱以上を観測した市区町村数・地震保険料を切り替えて、47都道府県の順位と偏差値を確認できます(広島県を強調表示)。区の表は見出しをクリックすると並べ替えられます。
なぜ区によって確率がこれほど違うのか
太田川デルタの区は地盤が軟らかい。西区31.9%・中区24.8%・南区21.7%は太田川が運んだ土砂でできた三角州と、江戸時代以降の干拓地・埋立地の上にあります。広島市役所付近の地形分類は「干拓地」で、表層地盤増幅率は1.68。同じ地震でも震度が上がりやすく、液状化の想定区域も広い地域です。
安佐南区は低地と活断層が重なる。安佐南区35%が市内で最も高いのは、区役所付近が太田川・古川の低地にあることに加え、五日市断層帯や己斐断層に近いためです。2014年の広島土砂災害で知られる安佐南区は、地震時も丘陵地の造成宅地の被害が課題です。
山地の区は低い。安佐北区10.1%は市域の北半分を占める山地で、市内で最も低い値です。安芸区23.2%・佐伯区21.5%・東区21.3%は丘陵と低地が混在する中間的な値です。山地・丘陵の区では、揺れよりも斜面崩壊が地震時の主なリスクになります。
停電・断水に備えるなら
台風や地震で最初に困るのは電気と水です。気象庁の警報が出てから買いに走っても店頭にはありません。平時にそろえておくものを3つだけ挙げると、ポータブル電源・水と非常食・非常持ち出しセットです。
広島市で想定される地震
安芸灘〜伊予灘のプレート内地震(芸予地震):広島市に最も影響してきたのは、瀬戸内海の下に沈み込むフィリピン海プレートの内部で起こるM6.7〜7.4程度の地震です。2001年の芸予地震(M6.7)では広島市で震度5強〜6弱を観測し、建物や港湾に被害が出ました。地震本部の評価では30年以内に40%程度と高い確率です。
五日市断層帯・己斐断層と岩国-五日市断層帯:市の西部を南北に走る活断層で、五日市断層帯はM7.0程度、岩国-五日市断層帯はM7.4程度、30年以内の発生確率はほぼ0〜2%程度です。発生すれば西区・佐伯区・安佐南区で震度6強〜7が想定されています。
南海トラフ巨大地震:30年以内の発生確率は70〜80%。広島市では震度5強〜6弱の長い揺れと、広島湾に最大3〜4mの津波が想定されています。太田川デルタの液状化が最大の課題です。
広島市全体の地震リスク(データベースより)
| 指標 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 年平均有感地震回数 | 7.7回 | 1919年以降の気象庁震度データベース(役所付近の観測点) |
| 総観測回数 | 701回 | 同上 |
| 過去最大震度 | 5弱 | 市役所付近の観測点の値。2001年芸予地震で震度5強〜6弱 |
| 30年確率(6弱以上) | 24.8% | 市役所付近メッシュ |
| 30年確率(5強以上) | 66.6% | 同上 |
| 表層地盤増幅率 | 1.68 | 1.6以上で「揺れやすい」とされる |
| 役所付近の地形分類 | 干拓地 | 国土地理院 地形分類 |
広島市の年平均有感地震回数は7.7回(広島県は都道府県で33位)、表層地盤増幅率は1.68で「揺れやすい」地盤に分類されます。30年確率は全国平均を下回りますが、地震が少ない市町村ランキングと「地震が少ない県は本当に安全か」で解説しているように、回数の少なさと揺れの大きさは別の指標です。
区の確率をどう読むか——3つの注意点
- 「区役所付近の250mメッシュ」の値です。同じ区でも台地の上と川沿いの低地では確率が大きく変わります。自宅の値はJ-SHISの地図で住所検索して確認してください。
- 確率は「揺れる確率」であって「被害を受ける確率」ではありません。被害は建物の耐震性・家具固定・液状化しやすい地盤かどうかで決まります。
- 低い区も安全ではありません。「30年以内に○%」の意味の記事で解説しているように、確率が低く見える地域でも直下型地震は起こりえます。
備えのチェックリスト
- 自宅の建築年を確認(1981年6月以降=新耐震、2000年6月以降=現行基準)
- 市のハザードマップで揺れやすさ・液状化・津波の3つを重ねて確認(ハザードマップの見方)
- 家具固定・寝室の安全確保・備蓄(最低3日分、できれば1週間分)
- 火災保険と地震保険の加入状況を確認(広島県のイ構造・保険金額1,000万円あたりの年額は7,300円、47都道府県で40番目に高い)
都道府県で見る広島の地震リスク|確率・地盤・回数・観測市町村数
広島市の区ごとの比較に加えて、広島県全体が47都道府県の中でどの位置にあるかを確認します。
30年以内に震度6弱以上となる確率の高さ:広島は20位
| 順位 | 都道府県 | 30年以内に震度6弱以上の確率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 高知県 | 77.7% | 69.9 |
| 2位 | 徳島県 | 77.5% | 69.8 |
| 3位 | 香川県 | 73.6% | 68.2 |
| 4位 | 和歌山県 | 73.1% | 68.0 |
| 5位 | 静岡県 | 72.8% | 67.9 |
| 6位 | 千葉県 | 71.2% | 67.3 |
| 7位 | 埼玉県 | 62.4% | 63.7 |
| 8位 | 岐阜県 | 61.9% | 63.5 |
| 9位 | 大分県 | 57.4% | 61.6 |
| 10位 | 三重県 | 48.9% | 58.2 |
| 20位 | 広島県 | 26.5% | 49.0 |
広島県は20位(26.5%、偏差値49.0)。1位は高知県(77.7%)、全国平均は28.8%です。全47都道府県の順位は30年以内に震度6弱以上の確率ランキングで確認できます。
表層地盤増幅率の大きさ(県内平均):広島は25位
| 順位 | 都道府県 | 表層地盤増幅率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 石川県 | 1.60倍 | 68.6 |
| 2位 | 千葉県 | 1.55倍 | 65.2 |
| 3位 | 茨城県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 4位 | 埼玉県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 5位 | 新潟県 | 1.53倍 | 63.8 |
| 6位 | 山口県 | 1.51倍 | 62.4 |
| 7位 | 香川県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 8位 | 佐賀県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 9位 | 富山県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 10位 | 福井県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 25位 | 広島県 | 1.36倍 | 52.2 |
広島県は25位(1.36倍、偏差値52.2)。1位は石川県(1.60倍)、全国平均は1.33倍です。全47都道府県の順位は表層地盤増幅率ランキングで確認できます。
有感地震の年間回数の多さ:広島は33位
| 順位 | 都道府県 | 有感地震の年間回数 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 長野県 | 650回 | 107.1 |
| 2位 | 東京都 | 286回 | 71.4 |
| 3位 | 茨城県 | 182回 | 61.2 |
| 4位 | 北海道 | 153回 | 58.3 |
| 5位 | 福島県 | 139回 | 57.0 |
| 6位 | 岩手県 | 132回 | 56.3 |
| 7位 | 宮城県 | 118回 | 54.9 |
| 8位 | 鹿児島県 | 114回 | 54.5 |
| 9位 | 栃木県 | 114回 | 54.5 |
| 10位 | 千葉県 | 95回 | 52.6 |
| 33位 | 広島県 | 20回 | 45.2 |
広島県は33位(20回、偏差値45.2)。1位は長野県(650回)、全国平均は68回です。全47都道府県の順位は有感地震の年間回数ランキングで確認できます。
震度6弱以上を観測した市区町村数の多さ:広島は18位
| 順位 | 都道府県 | 震度6弱以上を観測した市区町村数 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 福島県 | 34 | 85.9 |
| 2位 | 茨城県 | 30 | 81.0 |
| 3位 | 宮城県 | 27 | 77.3 |
| 4位 | 熊本県 | 23 | 72.3 |
| 5位 | 北海道 | 16 | 63.7 |
| 6位 | 新潟県 | 11 | 57.5 |
| 7位 | 岩手県 | 10 | 56.3 |
| 8位 | 栃木県 | 10 | 56.3 |
| 9位 | 鳥取県 | 10 | 56.3 |
| 10位 | 石川県 | 7 | 52.6 |
| 18位 | 広島県 | 3 | 47.7 |
広島県は18位(3、偏差値47.7)。1位は福島県(34)、全国平均は5です。全47都道府県の順位は震度6弱以上を観測した市区町村数ランキングで確認できます。
広島県内の市区町村で見る地震リスク|確率・地盤・回数トップ10
広島県の23市区町村について、当サイトの地震リスクデータベースから「30年以内に震度6弱以上となる確率」「表層地盤増幅率」「年平均の有感地震回数」の上位10を並べました。市区町村名をクリックすると詳細ページ(過去の最大震度・年代別回数・地形分類)が開きます。
30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が高い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 30年確率(6弱以上) |
|---|---|---|
| 1 | 福山市 | 44.3% |
| 2 | 大崎上島町 | 38.7% |
| 3 | 江田島市 | 38.4% |
| 4 | 東広島市 | 36.5% |
| 5 | 三原市 | 35.4% |
| 6 | 竹原市 | 34.1% |
| 7 | 尾道市 | 32.6% |
| 8 | 呉市 | 29.7% |
| 9 | 府中町 | 27.7% |
| 10 | 広島市 | 24.8% |
地盤が揺れやすい(表層地盤増幅率が大きい)市区町村
| 順位 | 市区町村 | 表層地盤増幅率 | 地形分類 |
|---|---|---|---|
| 1 | 東広島市 | 1.89 | 後背湿地 |
| 2 | 江田島市 | 1.75 | 三角州・海岸低地 |
| 3 | 府中町 | 1.75 | 三角州・海岸低地 |
| 4 | 福山市 | 1.75 | 三角州・海岸低地 |
| 5 | 広島市 | 1.68 | 干拓地 |
| 6 | 坂町 | 1.57 | 干拓地 |
| 7 | 大崎上島町 | 1.57 | 干拓地 |
| 8 | 竹原市 | 1.57 | 干拓地 |
| 9 | 海田町 | 1.57 | 干拓地 |
| 10 | 廿日市市 | 1.57 | 干拓地 |
有感地震の回数が多い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 年平均有感地震回数 | 過去最大震度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 呉市 | 17.4回 | 5強 |
| 2 | 東広島市 | 12.4回 | 6弱 |
| 3 | 江田島市 | 12.3回 | 5強 |
| 4 | 庄原市 | 12.1回 | 5弱 |
| 5 | 三原市 | 11.1回 | 5強 |
| 6 | 大崎上島町 | 10.5回 | 6弱 |
| 7 | 安芸高田市 | 10.5回 | 5弱 |
| 8 | 尾道市 | 10.4回 | 5強 |
| 9 | 福山市 | 9.7回 | 5弱 |
| 10 | 廿日市市 | 9.6回 | 5強 |
過去に震度6弱以上を観測したことがあるのは3市区町村(大崎上島町=6弱、熊野町=6弱、東広島市=6弱)。全国の一覧は震度6強以上を観測したことがある市町村一覧をご覧ください。
水害・台風の備えは保険の見直しから
地震保険は火災保険とセットでしか入れません。風水害・雪害は火災保険の補償範囲なので、ハザードマップで自宅のリスクを確認したら、補償内容が合っているか一度確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 広島市で最も地盤が良い区は?
安佐北区(10.1%)です。市の北半分を占める山地で、硬い地盤の上にあります。ただし地震時は斜面崩壊のリスクがあります。
Q. 安佐南区が高いのはなぜ?
区役所付近が太田川の低地にあり、さらに五日市断層帯・己斐断層に近いためです。地盤と活断層の両方の条件が重なっています。
Q. 広島市に津波は来る?
南海トラフ巨大地震で広島湾に最大3〜4mの津波が想定されています。太田川デルタの中区・南区・西区の低い土地は浸水想定区域で、到達まで数時間の余裕があります。
Q. 広島市で最近あった大きな地震は?
2001年3月の芸予地震(M6.7)で、市内は震度5強〜6弱を観測しました。同じタイプの地震は30年以内に40%程度の確率で起こるとされています。
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- 差の理由は地盤(台地・丘陵か、低地・埋立地か)と活断層までの距離。確率は「区役所付近のメッシュ」の値なので自宅はJ-SHISで確認
- 確率が低い区も安全ではない。耐震・家具固定・液状化と津波のハザードマップ・地震保険の4点で備える
出典:防災科学技術研究所 J-SHIS 地震ハザードステーション(2024年版、今後30年以内に震度6弱以上/6強以上の揺れに見舞われる確率、平均ケース、区役所・市役所付近の250mメッシュ)、地震調査研究推進本部の長期評価、気象庁 震度データベース(1919年〜)、国土地理院 地形分類。偏差値は当サイトが全国1,894市区町村の分布から算出。
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