「熊本市で地震に強い区・弱い区はどこ?」——防災科学技術研究所のJ-SHIS(地震ハザードステーション、2024年版)が公表している「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」を、熊本市5区の区役所付近の250mメッシュ値で比べると、最も高い南区の37.9%から最も低い北区の3.9%まで、同じ市内で9.7倍の差があります。
この記事では熊本市5区の確率を一覧にし、区によって数字が違う理由(地盤と活断層の位置)、熊本市で想定される地震、熊本県全体の中での位置づけ、そして区の数字の読み方を気象予報士がまとめます。

2016年に震度7を2回経験した熊本ですが、J-SHISの30年確率は南区37.9%・西区30.0%に対して、北区は3.9%と10倍の差があります。2016年に動いた布田川断層帯の確率が下がった一方、日奈久断層帯(八代海区間など)が残っているため、その断層に近い南部の低地の区が高くなっています。
熊本市5区 今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率ランキング
確率が高い順に並べています。「全国偏差値」は当サイトが集計した全国1,894市区町村(政令市は区単位)の30年確率(6弱以上)の分布に対する偏差値(平均28.1%)です。
| 順位 | 区 | 6弱以上 | 6強以上 | 全国偏差値 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 南区 | 37.9% | 10% | 53.9 |
| 2 | 西区 | 30% | 7.6% | 50.7 |
| 3 | 東区 | 16.6% | 3.1% | 45.5 |
| 4 | 中央区 | 11.3% | 1.8% | 43.4 |
| 5 | 北区 | 3.9% | 0.4% | 40.5 |
熊本市5区の平均は19.9%。熊本県の代表値(県庁所在地付近のメッシュ)は18.2%で都道府県ランキングでは22位、全国の市区町村平均は28.1%です。平均より高い南区・西区と、低い東区・中央区・北区では、同じ市でも数字の意味が変わります。
【ツール】都道府県の地震指標を切り替えて順位を確認
下のツールでは、30年以内に震度6弱以上となる確率・有感地震の回数・表層地盤増幅率・震度6弱以上を観測した市区町村数・地震保険料を切り替えて、47都道府県の順位と偏差値を確認できます(熊本県を強調表示)。区の表は見出しをクリックすると並べ替えられます。
なぜ区によって確率がこれほど違うのか
南部の低地の区は高い。南区37.9%・西区30%は市内の最高グループです。両区は白川・緑川がつくった沖積低地と有明海の干拓地にあり、軟らかい地盤の上です。さらに市の南を通る日奈久断層帯に近く、2016年に動かなかった区間の確率が上乗せされています。
台地の区は低い。北区3.9%・中央区11.3%・東区16.6%は阿蘇の火砕流堆積物でできた台地(託麻台地・熊本台地)の上にあり、比較的硬い地盤です。熊本城が建つ中央区の台地も同様です。ただし2016年熊本地震では東区・中央区・西区で震度6強を観測しており、台地でも「揺れなかった」わけではありません。
2016年で確率が「下がった」区がある。布田川断層帯は2016年に動いたため、地震本部はその区間の30年確率をほぼ0%に引き下げました。東区・北区の確率が低いのはこの影響が大きく、断層に近い益城町側でも同様です。一方で日奈久断層帯は動いておらず、南区・西区の確率は高いままです。
停電・断水に備えるなら
台風や地震で最初に困るのは電気と水です。気象庁の警報が出てから買いに走っても店頭にはありません。平時にそろえておくものを3つだけ挙げると、ポータブル電源・水と非常食・非常持ち出しセットです。
熊本市で想定される地震
2016年熊本地震(布田川・日奈久断層帯):4月14日(M6.5)と16日(M7.3)に益城町で震度7を2回観測し、熊本市でも東区・中央区・西区で震度6強、南区・北区で震度6弱を観測しました。熊本城の石垣崩落、阿蘇大橋の崩落、直接死50人・関連死200人超の被害となりました。
日奈久断層帯:熊本市南部から八代海へ延びる断層帯で、2016年に動かなかった八代海区間(M7.3程度、30年以内ほぼ0〜16%)と日奈久区間(M7.5程度、ほぼ0〜6%)は、国内の活断層で最も高い評価のグループです。発生すれば南区・西区で震度6強〜7が想定されています。
過去の地震:1889年の熊本地震(M6.3)では熊本市で家屋倒壊や熊本城の石垣崩落が起きています。南海トラフ巨大地震では熊本市は震度5弱〜5強程度と想定されています。
熊本市全体の地震リスク(データベースより)
| 指標 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 年平均有感地震回数 | 48回 | 1919年以降の気象庁震度データベース(役所付近の観測点) |
| 総観測回数 | 2,452回 | 同上 |
| 過去最大震度 | 6強 | 市役所付近の観測点の値。2016年熊本地震で東区・中央区・西区は震度6強 |
| 30年確率(6弱以上) | 11.3% | 市役所付近メッシュ |
| 30年確率(5強以上) | 44.2% | 同上 |
| 表層地盤増幅率 | 1.28 | 1.6以上で「揺れやすい」とされる |
| 役所付近の地形分類 | 砂礫質台地 | 国土地理院 地形分類 |
熊本市の年平均有感地震回数は48回(熊本県は都道府県で14位)、表層地盤増幅率は1.28です。30年確率は全国平均を下回りますが、地震が少ない市町村ランキングと「地震が少ない県は本当に安全か」で解説しているように、回数の少なさと揺れの大きさは別の指標です。
区の確率をどう読むか——3つの注意点
- 「区役所付近の250mメッシュ」の値です。同じ区でも台地の上と川沿いの低地では確率が大きく変わります。自宅の値はJ-SHISの地図で住所検索して確認してください。
- 確率は「揺れる確率」であって「被害を受ける確率」ではありません。被害は建物の耐震性・家具固定・液状化しやすい地盤かどうかで決まります。
- 低い区も安全ではありません。「30年以内に○%」の意味の記事で解説しているように、確率が低く見える地域でも直下型地震は起こりえます。
備えのチェックリスト
- 自宅の建築年を確認(1981年6月以降=新耐震、2000年6月以降=現行基準)
- 市のハザードマップで揺れやすさ・液状化・津波の3つを重ねて確認(ハザードマップの見方)
- 家具固定・寝室の安全確保・備蓄(最低3日分、できれば1週間分)
- 火災保険と地震保険の加入状況を確認(熊本県のイ構造・保険金額1,000万円あたりの年額は7,300円、47都道府県で45番目に高い)
都道府県で見る熊本の地震リスク|確率・地盤・回数・観測市町村数
熊本市の区ごとの比較に加えて、熊本県全体が47都道府県の中でどの位置にあるかを確認します。
30年以内に震度6弱以上となる確率の高さ:熊本は22位
| 順位 | 都道府県 | 30年以内に震度6弱以上の確率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 高知県 | 77.7% | 69.9 |
| 2位 | 徳島県 | 77.5% | 69.8 |
| 3位 | 香川県 | 73.6% | 68.2 |
| 4位 | 和歌山県 | 73.1% | 68.0 |
| 5位 | 静岡県 | 72.8% | 67.9 |
| 6位 | 千葉県 | 71.2% | 67.3 |
| 7位 | 埼玉県 | 62.4% | 63.7 |
| 8位 | 岐阜県 | 61.9% | 63.5 |
| 9位 | 大分県 | 57.4% | 61.6 |
| 10位 | 三重県 | 48.9% | 58.2 |
| 22位 | 熊本県 | 18.2% | 45.7 |
熊本県は22位(18.2%、偏差値45.7)。1位は高知県(77.7%)、全国平均は28.8%です。全47都道府県の順位は30年以内に震度6弱以上の確率ランキングで確認できます。
表層地盤増幅率の大きさ(県内平均):熊本は30位
| 順位 | 都道府県 | 表層地盤増幅率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 石川県 | 1.60倍 | 68.6 |
| 2位 | 千葉県 | 1.55倍 | 65.2 |
| 3位 | 茨城県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 4位 | 埼玉県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 5位 | 新潟県 | 1.53倍 | 63.8 |
| 6位 | 山口県 | 1.51倍 | 62.4 |
| 7位 | 香川県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 8位 | 佐賀県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 9位 | 富山県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 10位 | 福井県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 30位 | 熊本県 | 1.29倍 | 47.5 |
熊本県は30位(1.29倍、偏差値47.5)。1位は石川県(1.60倍)、全国平均は1.33倍です。全47都道府県の順位は表層地盤増幅率ランキングで確認できます。
有感地震の年間回数の多さ:熊本は14位
| 順位 | 都道府県 | 有感地震の年間回数 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 長野県 | 650回 | 107.1 |
| 2位 | 東京都 | 286回 | 71.4 |
| 3位 | 茨城県 | 182回 | 61.2 |
| 4位 | 北海道 | 153回 | 58.3 |
| 5位 | 福島県 | 139回 | 57.0 |
| 6位 | 岩手県 | 132回 | 56.3 |
| 7位 | 宮城県 | 118回 | 54.9 |
| 8位 | 鹿児島県 | 114回 | 54.5 |
| 9位 | 栃木県 | 114回 | 54.5 |
| 10位 | 千葉県 | 95回 | 52.6 |
| 14位 | 熊本県 | 75回 | 50.6 |
熊本県は14位(75回、偏差値50.6)。1位は長野県(650回)、全国平均は68回です。全47都道府県の順位は有感地震の年間回数ランキングで確認できます。
震度6弱以上を観測した市区町村数の多さ:熊本は4位
| 順位 | 都道府県 | 震度6弱以上を観測した市区町村数 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 福島県 | 34 | 85.9 |
| 2位 | 茨城県 | 30 | 81.0 |
| 3位 | 宮城県 | 27 | 77.3 |
| 4位 | 熊本県 | 23 | 72.3 |
| 5位 | 北海道 | 16 | 63.7 |
| 6位 | 新潟県 | 11 | 57.5 |
| 7位 | 岩手県 | 10 | 56.3 |
| 8位 | 栃木県 | 10 | 56.3 |
| 9位 | 鳥取県 | 10 | 56.3 |
| 10位 | 石川県 | 7 | 52.6 |
熊本県は4位(23、偏差値72.3)。1位は福島県(34)、全国平均は5です。全47都道府県の順位は震度6弱以上を観測した市区町村数ランキングで確認できます。
熊本県内の市区町村で見る地震リスク|確率・地盤・回数トップ10
熊本県の45市区町村について、当サイトの地震リスクデータベースから「30年以内に震度6弱以上となる確率」「表層地盤増幅率」「年平均の有感地震回数」の上位10を並べました。市区町村名をクリックすると詳細ページ(過去の最大震度・年代別回数・地形分類)が開きます。
30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が高い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 30年確率(6弱以上) |
|---|---|---|
| 1 | 嘉島町 | 38% |
| 2 | 玉名市 | 28.3% |
| 3 | 宇土市 | 27.6% |
| 4 | 氷川町 | 26.1% |
| 5 | 宇城市 | 25.9% |
| 6 | 長洲町 | 17.6% |
| 7 | 水俣市 | 15.1% |
| 8 | 上天草市 | 13.9% |
| 9 | 高森町 | 12.6% |
| 10 | 津奈木町 | 12.1% |
地盤が揺れやすい(表層地盤増幅率が大きい)市区町村
| 順位 | 市区町村 | 表層地盤増幅率 | 地形分類 |
|---|---|---|---|
| 1 | 嘉島町 | 2.16 | 後背湿地 |
| 2 | 玉名市 | 2.14 | 後背湿地 |
| 3 | 水俣市 | 1.98 | 三角州・海岸低地 |
| 4 | 氷川町 | 1.93 | 三角州・海岸低地 |
| 5 | 宇土市 | 1.86 | 三角州・海岸低地 |
| 6 | 宇城市 | 1.84 | 三角州・海岸低地 |
| 7 | 長洲町 | 1.82 | 干拓地 |
| 8 | 津奈木町 | 1.79 | 干拓地 |
| 9 | 天草市 | 1.75 | 三角州・海岸低地 |
| 10 | 芦北町 | 1.57 | 干拓地 |
有感地震の回数が多い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 年平均有感地震回数 | 過去最大震度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 宇城市 | 87.3回 | 7 |
| 2 | 八代市 | 62.1回 | 6強 |
| 3 | 菊池市 | 58.6回 | 6強 |
| 4 | 美里町 | 54.8回 | 6強 |
| 5 | 嘉島町 | 51.4回 | 6強 |
| 6 | 山都町 | 50.8回 | 6弱 |
| 7 | 熊本市 | 48回 | 6強 |
| 8 | 宇土市 | 47.1回 | 6強 |
| 9 | 南阿蘇村 | 45.8回 | 6強 |
| 10 | 甲佐町 | 43.5回 | 5強 |
過去に震度6弱以上を観測したことがあるのは23市区町村(天草市=6弱、上天草市=6弱、芦北町=6弱、熊本市=6強、和水町=6弱、合志市=6強、宇城市=7、氷川町=7、美里町=6強、山都町=6弱、御船町=6弱、益城町=7、嘉島町=6強、菊陽町=6弱、大津町=6強、西原村=7、宇土市=6強、玉名市=6弱、菊池市=6強、八代市=6強、南阿蘇村=6強、阿蘇市=6弱、産山村=6強)。全国の一覧は震度6強以上を観測したことがある市町村一覧をご覧ください。
水害・台風の備えは保険の見直しから
地震保険は火災保険とセットでしか入れません。風水害・雪害は火災保険の補償範囲なので、ハザードマップで自宅のリスクを確認したら、補償内容が合っているか一度確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 熊本市で最も確率が低い区は?
北区(3.9%)です。台地の硬い地盤の上にあり、2016年に動いた布田川断層帯の確率が引き下げられた影響で低くなっています。
Q. 南区・西区が高いのはなぜ?
白川・緑川の沖積低地と干拓地の軟らかい地盤にあり、さらに2016年に動かなかった日奈久断層帯(八代海区間・日奈久区間)に近いためです。
Q. 2016年に動いた断層はもう安全?
布田川断層帯の動いた区間の30年確率はほぼ0%に引き下げられました。しかし日奈久断層帯は残っており、30年以内ほぼ0〜16%と国内の活断層で最も高い評価のグループです。
Q. 熊本市で液状化した場所は?
2016年熊本地震では南区の近見・刈草地区など白川・緑川沿いの低地で液状化が起き、住宅の傾斜が多数発生しました。市の液状化ハザードマップで確認してください。
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- 確率が低い区も安全ではない。耐震・家具固定・液状化と津波のハザードマップ・地震保険の4点で備える
出典:防災科学技術研究所 J-SHIS 地震ハザードステーション(2024年版、今後30年以内に震度6弱以上/6強以上の揺れに見舞われる確率、平均ケース、区役所・市役所付近の250mメッシュ)、地震調査研究推進本部の長期評価、気象庁 震度データベース(1919年〜)、国土地理院 地形分類。偏差値は当サイトが全国1,894市区町村の分布から算出。
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