「名古屋市で地震に強い区・弱い区はどこ?」——防災科学技術研究所のJ-SHIS(地震ハザードステーション、2024年版)が公表している「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」を、名古屋市16区の区役所付近の250mメッシュ値で比べると、最も高い南区の76.7%から最も低い守山区の27.3%まで、同じ市内で2.8倍の差があります。
この記事では名古屋市16区の確率を一覧にし、南区・中川区・港区など西部・南部の低地が70%を超える一方で守山区・瑞穂区・千種区が30%前後にとどまる理由(濃尾平野の沖積低地と熱田台地・東部丘陵の地盤の違い)、名古屋市で想定される南海トラフ地震、区の数字の読み方を気象予報士がまとめます。

名古屋の地盤は「東高西低」。東部の丘陵・台地は硬く、西部・南部は木曽三川と庄内川が運んだ軟らかい沖積層で、海抜ゼロメートル地帯も広がります。南海トラフ地震では西部低地の揺れが長く大きくなると想定され、確率の差にそのまま表れています。
名古屋市16区 今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率ランキング
確率が高い順に並べています。「全国偏差値」は当サイトが集計した全国1,894市区町村(政令市は区単位)の30年確率(6弱以上)の分布に対する偏差値(平均28.1%)です。
| 順位 | 区 | 6弱以上 | 6強以上 | 全国偏差値 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 南区 | 76.7% | 46.9% | 69.1 |
| 2 | 天白区 | 74.2% | 40.6% | 68.1 |
| 3 | 中川区 | 72.3% | 35.5% | 67.4 |
| 4 | 熱田区 | 70.8% | 32.8% | 66.8 |
| 5 | 中村区 | 70.7% | 32.5% | 66.7 |
| 6 | 港区 | 70% | 31.2% | 66.5 |
| 7 | 北区 | 67.4% | 27.3% | 65.5 |
| 8 | 西区 | 53.1% | 13.4% | 59.8 |
| 9 | 中区 | 47.5% | 9.9% | 57.6 |
| 10 | 東区 | 44.3% | 8.3% | 56.4 |
| 11 | 昭和区 | 44.2% | 8% | 56.3 |
| 12 | 緑区 | 42.3% | 6.3% | 55.6 |
| 13 | 名東区 | 38.4% | 5.6% | 54.1 |
| 14 | 千種区 | 37.7% | 5.3% | 53.8 |
| 15 | 瑞穂区 | 35.5% | 4.6% | 52.9 |
| 16 | 守山区 | 27.3% | 2.7% | 49.7 |
名古屋市16区の平均は54.5%で、愛知県の県庁所在地メッシュ値48%(都道府県ランキングでは58位)、全国の市区町村平均28.1%と比べると市の平均は県の代表値を上回り、全国平均のほぼ2倍です。上位の南区・天白区・中川区・熱田区・中村区・港区・北区と、下位の千種区・瑞穂区・守山区では、同じ市でも「別の街」といえるほど数字が違います。
【ツール】都道府県の地震指標を切り替えて順位を確認
下のツールでは、30年以内に震度6弱以上となる確率・有感地震の回数・表層地盤増幅率・震度6弱以上を観測した市区町村数・地震保険料・台風接近数を切り替えて、47都道府県の順位と偏差値を確認できます(愛知県を黄色で強調表示)。
なぜ区によって確率がこれほど違うのか
西部・南部の沖積低地は高い。南区76.7%・中川区72.3%・中村区70.7%・港区70.0%・北区67.4%は、濃尾平野の南東端にあたり、庄内川や木曽三川が運んだ軟らかい沖積層の上にあります。港区・中川区・南区の一部は海抜ゼロメートル地帯で、1959年の伊勢湾台風で高潮の大被害を受けた地域と重なります。地盤が軟らかいため表層地盤増幅率が大きく、南海トラフ地震では長周期の揺れが長く続くと想定されています。
東部の丘陵・台地は低い。守山区27.3%・瑞穂区35.5%・千種区37.7%・名東区38.4%は、東部丘陵や熱田台地とその周辺の硬い地盤の上にあり、市内では最も低いグループです。全国偏差値でみると守山区はほぼ平均、千種区・名東区も平均をやや上回る程度です。
中心部は台地の上で中位。中区47.5%・東区44.3%・昭和区44.2%は熱田台地の上にあり、西部低地より20ポイント以上低い値です。栄・名古屋城周辺が台地の上に築かれたのは、地盤の良さも理由の一つでした。
天白区・熱田区は「区役所の場所」に注意。天白区74.2%・熱田区70.8%は丘陵や台地を含む区ですが、区役所付近のメッシュが天白川・堀川沿いの低地にあたるため高い値になっています。同じ区でも丘の上と川沿いでは確率が大きく違う典型例です。
停電・断水に備えるなら
台風や地震で最初に困るのは電気と水です。気象庁の警報が出てから買いに走っても店頭にはありません。平時にそろえておくものを3つだけ挙げると、ポータブル電源・水と非常食・非常持ち出しセットです。
名古屋市で想定される地震
南海トラフ巨大地震:30年以内の発生確率は70〜80%。愛知県の被害想定では名古屋市の西部・南部低地で震度6強〜7、東部でも震度6弱程度とされ、港区・南区などの沿岸低地には最大3m級の津波と高潮並みの浸水が想定されています。1944年の昭和東南海地震(M7.9)では名古屋市内で軍需工場の倒壊など大きな被害が出ました。
周辺の活断層:市の東側には猿投-高浜断層帯、西側には養老-桑名-四日市断層帯(M8程度)があり、1891年の濃尾地震(M8.0・日本最大の内陸地震)では名古屋でも家屋の倒壊が多数発生しました。活断層の30年確率はいずれも低いものの、発生すれば直下型の強い揺れになります。
液状化:西部低地・臨海埋立地は液状化の危険度が高く、名古屋市の液状化ハザードマップでも港区・中川区・中村区西部の多くが「危険度が高い」区分です。液状化しやすい地域の見分け方もあわせてご覧ください。
名古屋市全体の地震リスク(データベースより)
| 指標 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 年平均有感地震回数 | 8.5回 | 1919年以降の気象庁震度データベース(役所付近の観測点) |
| 総観測回数 | 1,093回 | 同上 |
| 過去最大震度 | 5弱 | 市役所付近の観測点の値 |
| 30年確率(6弱以上) | 37.7% | 市役所付近メッシュ |
| 30年確率(5強以上) | 72.7% | 同上 |
| 表層地盤増幅率 | 1.06 | 1.6以上で「揺れやすい」とされる |
| 役所付近の地形分類 | 丘陵 | 国土地理院 地形分類 |
名古屋市は年平均の有感地震回数は多くありませんが、30年確率は全国上位で、都道府県ランキングでも愛知県は上位に入ります。西部低地の区では表層地盤増幅率が市役所付近より大きい地点が多く、各区の詳しい値はJ-SHISの地図で住所検索して確認してください。
区の確率をどう読むか——3つの注意点
- 「区役所付近の250mメッシュ」の値です。同じ区でも台地の上と川沿いの低地では確率が大きく変わります。自宅の値はJ-SHISの地図で住所検索して確認してください。
- 確率は「揺れる確率」であって「被害を受ける確率」ではありません。被害は建物の耐震性・家具固定・液状化しやすい地盤かどうかで決まります。
- 低い区も安全ではありません。「30年以内に○%」の意味の記事で解説しているように、確率が低く見える地域でも直下型地震は起こりえます。
備えのチェックリスト
- 自宅の建築年を確認(1981年6月以降=新耐震、2000年6月以降=現行基準)
- 市のハザードマップで揺れやすさ・液状化・津波の3つを重ねて確認(ハザードマップの見方)
- 家具固定・寝室の安全確保・備蓄(最低3日分、できれば1週間分)
- 火災保険と地震保険の加入状況を確認(愛知県は等地2等地(イ構造・保険金額1,000万円あたり年11,600円))
都道府県で見る愛知の地震リスク|確率・地盤・回数・観測市町村数
名古屋市の区ごとの比較に加えて、愛知県全体が47都道府県の中でどの位置にあるかを確認します。区の表は見出しをクリックすると並べ替えられます。
30年以内に震度6弱以上となる確率の高さ:愛知は12位
| 順位 | 都道府県 | 30年以内に震度6弱以上の確率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 高知県 | 77.7% | 69.9 |
| 2位 | 徳島県 | 77.5% | 69.8 |
| 3位 | 香川県 | 73.6% | 68.2 |
| 4位 | 和歌山県 | 73.1% | 68.0 |
| 5位 | 静岡県 | 72.8% | 67.9 |
| 6位 | 千葉県 | 71.2% | 67.3 |
| 7位 | 埼玉県 | 62.4% | 63.7 |
| 8位 | 岐阜県 | 61.9% | 63.5 |
| 9位 | 大分県 | 57.4% | 61.6 |
| 10位 | 三重県 | 48.9% | 58.2 |
| 12位 | 愛知県 | 48.0% | 57.8 |
愛知県は12位(48.0%、偏差値57.8)。1位は高知県(77.7%)、47位は北海道(2.3%)、全国平均は28.8%です。比較:静岡5位・三重10位・岐阜8位・東京13位。詳しくは今後30年以内に震度6弱以上の地震が起きる確率ランキングをご覧ください。
表層地盤増幅率の大きさ(県内平均):愛知は19位
| 順位 | 都道府県 | 表層地盤増幅率 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 石川県 | 1.60倍 | 68.6 |
| 2位 | 千葉県 | 1.55倍 | 65.2 |
| 3位 | 茨城県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 4位 | 埼玉県 | 1.54倍 | 64.5 |
| 5位 | 新潟県 | 1.53倍 | 63.8 |
| 6位 | 山口県 | 1.51倍 | 62.4 |
| 7位 | 香川県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 8位 | 佐賀県 | 1.50倍 | 61.8 |
| 9位 | 富山県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 10位 | 福井県 | 1.45倍 | 58.4 |
| 19位 | 愛知県 | 1.37倍 | 52.9 |
愛知県は19位(1.37倍、偏差値52.9)。1位は石川県(1.60倍)、47位は長野県(0.97倍)、全国平均は1.33倍です。比較:静岡26位・三重27位・岐阜35位・東京23位。詳しくは揺れやすい地盤ランキングをご覧ください。
有感地震の年間回数の多さ:愛知は35位
| 順位 | 都道府県 | 有感地震の年間回数 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 長野県 | 650回 | 107.1 |
| 2位 | 東京都 | 286回 | 71.4 |
| 3位 | 茨城県 | 182回 | 61.2 |
| 4位 | 北海道 | 153回 | 58.3 |
| 5位 | 福島県 | 139回 | 57.0 |
| 6位 | 岩手県 | 132回 | 56.3 |
| 7位 | 宮城県 | 118回 | 54.9 |
| 8位 | 鹿児島県 | 114回 | 54.5 |
| 9位 | 栃木県 | 114回 | 54.5 |
| 10位 | 千葉県 | 95回 | 52.6 |
| 35位 | 愛知県 | 18回 | 45.0 |
愛知県は35位(18回、偏差値45.0)。1位は長野県(650回)、47位は佐賀県(8回)、全国平均は68回です。比較:静岡12位・三重32位・岐阜26位・東京2位。詳しくは地震が多い都道府県・市町村ランキングをご覧ください。
震度6弱以上を観測した市区町村数の多さ:愛知は37位
| 順位 | 都道府県 | 震度6弱以上を観測した市区町村数 | 偏差値 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 福島県 | 34 | 85.9 |
| 2位 | 茨城県 | 30 | 81.0 |
| 3位 | 宮城県 | 27 | 77.3 |
| 4位 | 熊本県 | 23 | 72.3 |
| 5位 | 北海道 | 16 | 63.7 |
| 6位 | 新潟県 | 11 | 57.5 |
| 7位 | 岩手県 | 10 | 56.3 |
| 8位 | 栃木県 | 10 | 56.3 |
| 9位 | 鳥取県 | 10 | 56.3 |
| 10位 | 石川県 | 7 | 52.6 |
| 37位 | 愛知県 | 0 | 44.0 |
愛知県は37位(0、偏差値44.0)。1位は福島県(34)、47位は沖縄県(0)、全国平均は5です。比較:静岡11位・三重27位・岐阜36位・東京12位。詳しくは震度6強以上を観測した市町村一覧をご覧ください。
愛知県内の市区町村で見る地震リスク|確率・地盤・回数トップ10
愛知県の54市区町村について、当サイトの地震リスクデータベースから「30年以内に震度6弱以上となる確率」「表層地盤増幅率」「年平均の有感地震回数」の上位10を並べました。市区町村名をクリックすると詳細ページ(過去の最大震度・年代別回数・地形分類)が開きます。
30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が高い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 30年確率(6弱以上) |
|---|---|---|
| 1 | 西尾市 | 79.7% |
| 2 | 蒲郡市 | 77.6% |
| 3 | 半田市 | 74.8% |
| 4 | 豊橋市 | 74.0% |
| 5 | 美浜町 | 73.8% |
| 6 | 豊川市 | 72.7% |
| 7 | 蟹江町 | 72.5% |
| 8 | 飛島村 | 71.8% |
| 9 | 北名古屋市 | 71.6% |
| 10 | 大治町 | 71.5% |
地盤が揺れやすい(表層地盤増幅率が大きい)市区町村
| 順位 | 市区町村 | 表層地盤増幅率 |
|---|---|---|
| 1 | 稲沢市 | 2.31倍 |
| 2 | 北名古屋市 | 2.25倍 |
| 3 | 豊山町 | 2.20倍 |
| 4 | 岩倉市 | 2.18倍 |
| 5 | あま市 | 2.16倍 |
| 6 | 西尾市 | 2.15倍 |
| 7 | 大治町 | 2.14倍 |
| 8 | 蟹江町 | 2.13倍 |
| 9 | 清須市 | 2.12倍 |
| 10 | 津島市 | 2.09倍 |
有感地震の回数が多い市区町村
| 順位 | 市区町村 | 年平均有感地震回数 |
|---|---|---|
| 1 | 豊田市 | 17.0回 |
| 2 | 新城市 | 15.5回 |
| 3 | 西尾市 | 11.7回 |
| 4 | 一宮市 | 11.6回 |
| 5 | みよし市 | 10.9回 |
| 6 | 高浜市 | 10.8回 |
| 7 | 愛西市 | 10.1回 |
| 8 | 清須市 | 9.8回 |
| 9 | 東郷町 | 9.7回 |
| 10 | 豊橋市 | 9.7回 |
水害・台風の備えは保険の見直しから
地震保険は火災保険とセットでしか入れません。風水害・雪害は火災保険の補償範囲なので、ハザードマップで自宅のリスクを確認したら、補償内容が合っているか一度確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 名古屋市で最も安全な区は?
東部丘陵の守山区・名東区・千種区・瑞穂区は地盤が硬く確率も市内で最も低いグループです。西部・南部の低地(港・中川・中村・南)と比べて20〜50ポイントの差があります。
Q. 海抜ゼロメートル地帯はどこ?
港区・中川区・南区・熱田区の一部で、南海トラフ地震では地盤沈下と津波・高潮の複合被害が懸念されています。1959年の伊勢湾台風で大きな被害を受けた地域と重なります。
Q. 名古屋で最大震度はいくつ想定?
愛知県の被害想定では南海トラフ地震(過去最大クラス)で名古屋市西部・南部が震度7、東部でも震度6弱〜6強です。
Q. 愛知県の他の市は?
豊橋・岡崎・豊田など県内54市町村の確率と地盤は愛知県の地震リスク一覧で確認できます。
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出典:気象庁 震度データベース(1919年1月〜)、防災科学技術研究所 J-SHIS 地震ハザードステーション(2024年版、役所付近の250mメッシュ値)区別の確率は防災科学技術研究所 J-SHIS 地震ハザードステーション(2024年版・平均ケース・全地震)の各区役所付近250mメッシュ値です。地形・断層の解説は国土地理院 地形分類、地震調査研究推進本部の長期評価によります。。当サイトは独自の地震予測を行っていません。偏差値・順位は当サイトの地震リスクデータベース(1,756市区町村)から集計しています。
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