世界一雷が多い場所 マラカイボ湖【年260夜・1分間に28回の「カタトゥンボの雷」】なぜ毎晩雷が鳴るのか、世界の雷ホットスポットTOP10と日本一の金沢を比較

カリブ海周辺の地図にマラカイボ湖の位置を円で示し、稲妻を重ねたイメージ 気象

「世界一雷が多い場所はどこ?」——答えは南米ベネズエラのマラカイボ湖、正確にはその南西部にカタトゥンボ川が流れ込むあたりです。NASAの衛星観測では1年間に1平方キロメートルあたり約233回の雷が発生し、年間およそ260夜、1晩に最大10時間、1分間に最大28回の稲妻が走ります。ギネス世界記録にも「雷の集中度が世界一の場所」として登録されています。

この記事では、「カタトゥンボの雷」と呼ばれるこの現象の中身、なぜ毎晩のように雷が鳴るのか、NASAの衛星がとらえた世界の雷ホットスポットランキング、そして日本一雷が多い石川県・金沢との比較を気象予報士が解説します。

のぶやん
のぶやん

日本一雷が多い金沢の雷日数は年45.1日。マラカイボ湖は「日数」ではなく「夜数」で数えて年260夜前後、しかも1晩に何千回も光ります。数百年前の船乗りはこの光を灯台代わりにしていたため「マラカイボの灯台」とも呼ばれます。

マラカイボ湖とカタトゥンボの雷とは

項目内容
場所ベネズエラ北西部 マラカイボ湖南西部(カタトゥンボ川河口付近)
湖の大きさ面積約13,200km²(琵琶湖の約20倍)。南米最大の湖で、北はベネズエラ湾を通じてカリブ海につながる
雷の密度年間約233回/km²(NASA LIS衛星、1998〜2013年の解析)で世界1位
発生する夜年間およそ140〜260夜(年によって変動)
1晩の継続時間最大約10時間、日没後の夜間に集中
頻度1時間に数千回、1分間に最大28回
見える距離最大400km先からも光が見えるとされ「マラカイボの灯台」と呼ばれる
特徴雷鳴がほとんど聞こえないほど遠くから見えるため「音のない雷」とも
カタトゥンボの雷の基本データ

【ツール】世界193か国の気候指標を切り替えて順位を確認

下のツールでは、年平均気温・年較差・最高/最低気温の記録・降水量・降雪量・雲量・日照時間・湿度・風速・紫外線を年間・月別に切り替えて、国連加盟193か国の順位と偏差値を確認できます(ベネズエラを黄色で強調表示)。

なぜマラカイボ湖では毎晩雷が鳴るのか

① 三方を山に囲まれた「雷の鍋」

マラカイボ湖はアンデス山脈の支脈(メリダ山脈・ペリハ山脈)に南・東・西の三方を囲まれ、北側だけがカリブ海に開いています。日中にカリブ海から入った湿った暖かい空気が湖の南端で行き止まりになり、山に沿って一気に持ち上げられます。

② 昼と夜の風の切り替わり

夜になると山から冷たい空気が吹き下りてきて(山風)、湖面に残る暖かく湿った空気の下にもぐり込みます。暖かい空気は強制的に押し上げられ、高さ十数kmの積乱雲へ成長します。この「夜の山風×昼の海風のなごり」が毎晩繰り返されるため、日没後の決まった時間帯に雷が始まります。

③ 湖の水温と湿地帯からの水蒸気

熱帯の湖と周囲の広大な湿地は、積乱雲の燃料となる水蒸気を一年中供給します。乾季(1〜2月)はやや減りますが、雨季の後半(9〜10月)にピークを迎えます。2010年には大干ばつで数週間にわたって雷が止まり、「灯台が消えた」と世界的なニュースになりました。

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世界の雷ホットスポット ランキング

NASAの熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載された雷センサー(LIS)の16年分のデータを解析した研究(2016年)による、雷密度の世界ランキングです。

順位場所雷密度(回/km²/年)特徴
1マラカイボ湖ベネズエラ232.5三方を山に囲まれた熱帯の湖
2カバレコンゴ民主共和国205.3キブ湖の東岸、山地
3カンペネコンゴ民主共和国176.7コンゴ盆地東部
4カセレスコロンビア172.3アンデス山脈北端の谷
5サケコンゴ民主共和国143.2キブ湖北岸
6ダガーパキスタン143.1ヒマラヤ南麓、モンスーン前の雷
7エル・タラコロンビア138.6カタトゥンボ川上流
8ングティカメルーン129.6ギニア湾岸の山地
9ブテンボコンゴ民主共和国129.5大地溝帯西縁
10ボエンデコンゴ民主共和国127.5コンゴ盆地中央
世界の雷密度ランキング(Albrecht et al., 2016, NASA TRMM/LIS 1998〜2013年)

上位10か所のうち6か所がアフリカ中部(コンゴ盆地・大地溝帯)、3か所が南米北部です。共通点は「熱帯」「湖や湿地のそば」「山に囲まれた地形」。以前は「世界一」とされていたコンゴのキフカ(年158回/km²)も同じ地域です。国単位では、雷の「日数」で比べるとインドネシアのボゴール(年間雷日数300日超の記録)やシンガポールが世界屈指で、赤道付近の熱帯は毎日のように雷雲が発生します。

日本一雷が多い場所と比べると

当サイトの雷日数ランキングでは、日本一は石川県(金沢)の年45.1日で、福井県(福井)37.4日、新潟県(新潟)34.7日、秋田県(秋田)34.3日と日本海側が続きます。雷都と呼ばれる宇都宮(栃木県)は26.5日、東京は14.5日です。

地点年間の雷雷の季節仕組み
マラカイボ湖(ベネズエラ)約260夜・約233回/km²一年中(9〜10月がピーク)熱帯の湖+三方の山+夜の山風
金沢(石川県)雷日数45.1日冬(11〜1月)が最多日本海の暖流と寒気の温度差による冬季雷
宇都宮(栃木県)雷日数26.5日夏(7〜8月)日射で暖められた内陸の空気+山からの冷気
東京雷日数14.5日都市のヒートアイランド+海風
マラカイボ湖と日本の雷どころの比較

金沢の「冬季雷」は世界的にも珍しい現象で、1発あたりのエネルギーは夏の雷の100倍以上になることがあります。回数ではマラカイボ湖に遠く及びませんが、「雷の強さ」では日本海側の冬の雷が世界トップクラスといえます。

カタトゥンボの雷を見に行くなら

  • 時期:雨季の後半、9〜11月が最も頻度が高い。乾季の1〜2月は少なめ。
  • 場所:湖南岸の水上集落オロガ(Ologa)や、コングレソ・デ・コロンビア(Congo Mirador)へのボートツアーが定番。
  • 時間帯:日没後2〜3時間から明け方まで。月のない夜が最も見やすい。
  • 注意:ベネズエラは治安・政情の面で外務省の危険情報が出ています。渡航前に必ず最新情報を確認してください。

193か国ランキングで見るベネズエラの気候|雷の材料は「暑さ×湿気」

雷は暖かく湿った空気が材料です。ベネズエラ(首都カラカス)の気温・湿度・雲量・降水量を193か国のランキングで確認し、日本と比べます。

年平均気温の高さ(首都):ベネズエラは93位

順位年平均気温偏差値
1位スーダン30.4℃64.9
2位ジブチ30.2℃64.6
3位ニジェール29.5℃63.6
4位オマーン29.1℃63.0
5位チャド28.9℃62.7
6位アラブ首長国連邦28.7℃62.4
7位南スーダン28.4℃62.0
8位ハイチ28.3℃61.8
9位タイ28.2℃61.7
10位マリ28.1℃61.6
93位ベネズエラ22.1℃52.8
133位日本16.2℃44.3
年平均気温の高さ(首都)ランキング(193か国、平年値)

ベネズエラは93位(22.1℃、偏差値52.8)。日本は133位(16.2℃)。1位はスーダン(30.4℃)、最下位はモンゴル(0.9℃)、193か国の平均は20.2℃です。カラカスは標高900mのため首都としては涼しめ。マラカイボ湖周辺の低地は年平均28℃前後です。詳しくは年平均気温が高い国ランキングをご覧ください。

平均湿度の高さ(首都):ベネズエラは30位

順位平均湿度偏差値
1位サモア87.8%63.9
2位ブルネイ87.6%63.7
3位コートジボワール86.6%62.9
4位リベリア86.4%62.8
5位サントメ・プリンシペ86.1%62.5
6位パラオ86.1%62.5
7位コモロ86.0%62.5
8位ガボン85.9%62.4
9位フィジー84.7%61.4
10位ミクロネシア連邦84.7%61.4
30位ベネズエラ81.5%58.9
107位日本72.5%51.7
平均湿度の高さ(首都)ランキング(193か国、平年値)

ベネズエラは30位(81.5%、偏差値58.9)。日本は107位(72.5%)。1位はサモア(87.8%)、最下位はサウジアラビア(27.1%)、193か国の平均は70.4%です。詳しくは世界の湿度ランキングいちばん湿度が高い国はどこ?月別・年間で比をご覧ください。

平均雲量の多さ:ベネズエラは21位

順位平均雲量偏差値
1位マレーシア90.7%69.8
2位ブルネイ90.4%69.7
3位パラオ87.4%67.9
4位シンガポール86.8%67.5
5位ガボン86.7%67.5
6位ミクロネシア連邦86.6%67.4
7位コロンビア85.5%66.8
8位カメルーン85.3%66.6
9位サントメ・プリンシペ84.6%66.2
10位エクアドル82.7%65.1
21位ベネズエラ76.4%61.4
92位日本60.3%51.8
平均雲量の多さランキング(193か国、平年値)

ベネズエラは21位(76.4%、偏差値61.4)。日本は92位(60.3%)。1位はマレーシア(90.7%)、最下位はエジプト(18.4%)、193か国の平均は57.2%です。詳しくは世界の曇りが多い国ランキングいちばん曇る国はどこ?平均雲量で月をご覧ください。

年間降水量の多さ(国土平均):ベネズエラは30位

順位年間降水量偏差値
1位コロンビア3,240mm75.9
2位サントメ・プリンシペ3,200mm75.4
3位パプアニューギニア3,142mm74.7
4位ソロモン諸島3,028mm73.2
5位パナマ2,928mm72.0
6位コスタリカ2,926mm71.9
7位サモア2,880mm71.4
8位マレーシア2,875mm71.3
9位ブルネイ2,722mm69.4
10位インドネシア2,702mm69.1
30位ベネズエラ2,044mm60.9
47位日本1,668mm56.2
年間降水量の多さ(国土平均)ランキング(179か国、FAO AQUASTAT)

ベネズエラは30位(2,044mm、偏差値60.9)。日本は47位(1,668mm)。1位はコロンビア(3,240mm)、最下位はエジプト(18mm)、179か国の平均は1,175mmです。詳しくは世界の年間降水量ランキングいちばん雨が多い国・少ない国はどこ?をご覧ください。

よくある質問

Q. 日本で雷が多いのはどこ?

年間の雷日数は金沢(石川県)の45.1日が日本一で、冬季雷が半分以上を占めます。夏の雷は宇都宮(栃木県)などの内陸が上位です。雷日数ランキング雷が多い県はなぜ石川と栃木なのかをご覧ください。

Q. 雷が世界で最も少ない場所は?

南極や北極圏、砂漠地帯(サハラ・アタカマ)はほとんど雷がありません。積乱雲の材料になる水蒸気と上昇気流がないためです。

Q. マラカイボ湖の雷は音がしない?

数十km離れた場所から見ると雷鳴が届かず、光だけが見えるため「音のない雷」と呼ばれます。近づけば普通の雷と同じように轟音がします。

Q. 雷の数は温暖化で増える?

気温が1℃上がると雷の発生が約12%増えるという研究(米国)があります。水蒸気が増えて積乱雲が発達しやすくなるためです。

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まとめ
  • 世界一雷が多い場所はベネズエラのマラカイボ湖南西部。年間約233回/km²、約260夜、1分間に最大28回。
  • 理由は「熱帯の湖と湿地の水蒸気×三方を囲む山×夜の山風」が毎晩積乱雲を作るため。
  • 世界の雷ホットスポット上位10のうち6つがアフリカ中部、3つが南米北部。
  • 日本一の金沢は雷日数45.1日。回数では及ばないが冬季雷の強さは世界トップクラス。

出典:Albrecht, R. I. et al. (2016) “Where are the lightning hotspots on Earth?” Bulletin of the American Meteorological Society、NASA Earth Observatory、ギネス世界記録、気象庁 雷日数平年値(1991〜2020年)。

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