「うちの街には、年に何個くらい台風が来るの?」——台風シーズンが近づくと気になるこの疑問。実は市町村別の台風接近数を、気象庁は公表していません。
でも、あきらめるのはまだ早い。
気象庁が公表している「地方別の接近数」を75年分(1951〜2025年)まるごと集計すると、あなたの市町村の接近数がかなり正確にわかるんです。
この記事では、13地方の接近数を年代別に切り替えられるランキングツールと、都道府県を選ぶだけで「あなたの街の75年分の接近数」が出てくるツールを用意しました。
集計してみると「75年間で553個の台風が接近した地方」「実は毎年必ず台風が来る意外な地方」など、発見だらけでしたよ。

「毎年必ず台風が来る地方」、沖縄以外にもあるんです。どこだと思いますか?答えはランキングの解説で。
市町村別の接近数データが「存在しない」理由
気象庁の「接近」の定義はこうです。台風の中心が、その地域のいずれかの気象官署等から300km以内に入った場合——「その地域に接近した台風」とカウントされます。
半径300kmの円って、直径600km。東京から大阪までがすっぽり入る大きさです。
この大きな円で判定するので、同じ都道府県の中で市町村ごとに数が変わることは、ほぼありません。だから気象庁も市町村単位では公表していないんですね。
逆に言えば——あなたの市町村の接近数は「所属する地方の接近数」とほぼ同じ。つまり、地方別の75年分データを見れば、全国どの市町村でも「うちの街の台風事情」がわかるということです。
台風の接近数ランキング【75年分・年代別ツール】
それでは13地方の接近数ランキングです。年代ボタンで1950年代から2020年代まで切り替え可能。「75年合計」を押せば通算成績も見られますよ(年代別の数値は1年あたりの平均個数です)。
75年間で553個。沖縄の圧勝でした
75年合計の1位は沖縄地方の553個。年平均7.4個ですから、毎年7個以上の台風が沖縄から300km以内まで来ている計算です。最多の2004年はなんと年15個。約2週間に1個ペースで台風が来ていたことになります。
13地方の75年合計を並べると、沖縄553 → 伊豆・小笠原401 → 奄美300 → 九州南部279 → 九州北部257 → 東海248 → 四国244 → 関東甲信238 → 近畿235 → 中国213 → 東北192 → 北陸186 → 北海道119。南から北へ、きれいに数字が減っていくのがわかります。
意外な2位は「伊豆・小笠原」——東京都の島々です
2位の伊豆・小笠原(401個)は、行政区分でいえば東京都。「東京は台風が少ない」というイメージがありますが、それは本土の話。八丈島や父島などの島しょ部は、九州南部より多くの台風を受け続けてきた「隠れ台風銀座」なんです。台風は日本の南海上を通ることが多いので、南に浮かぶ島ほど接近数が増えるわけですね。
「75年間、接近ゼロの年がない」地方はどこ?
データを調べていて面白かったのがこれ。75年間、一度も「接近ゼロの年」がなかった地方は——沖縄、九州南部、伊豆・小笠原、そして中国地方の4つでした。
沖縄や九州南部は納得ですが、中国地方は意外じゃないですか?合計では213個と下位グループなのに、「多くはないけど、必ず毎年来る」という安定ぶり。瀬戸内側で「台風は他人事」と思われがちな地域ですが、データは「毎年最低1個は来ている」と示しています。逆に北海道は75年中13年が接近ゼロ。同じ日本でもここまで違うんですね。
あなたの市町村の接近数を調べる(全国1,895市区町村に対応)
都道府県→市町村の順に選ぶと、あなたの市町村の接近数(平年値・75年合計・全国順位・年代別・各年75年分のグラフ)が表示されます。鹿児島県の奄美地方や東京都の島しょ部など、同じ県内でも地方区分が変わる市町村は自動で正しい地方に振り分けます。
たとえば高知県の市町村なら「四国地方=75年で244個、年3.3個」、埼玉県の市町村なら「関東甲信=75年で238個、年3.3個」。内陸か沿岸かに関係なく、地方単位で台風はやってくることが数字でわかりますね。
【独自集計】市町村ごとの接近数ランキング(全1,916市区町村・参考値)
「同じ県内でも、うちの町と隣の市で本当に差はないの?」——その疑問に答えるため、台風の経路データ75年分と全国1,916市区町村の役場の座標を突き合わせて、市町村ごとの接近数を独自に計算してみました。台風の中心が役場から300km以内を通った台風の数を、1個ずつ数えた結果です(方法の詳細は後述の「集計方法」参照)。
気象庁の公式統計(気象官署基準・地方単位)とは定義が異なる参考値ですが、市町村単位の数字はおそらくここでしか見られません。検索窓にあなたの市町村名を入れてみてください。
1位は石垣市の303個。トップ10は先島諸島が独占
独自集計の全国1位は沖縄県石垣市の303個(年平均4.0個)。2位竹富町302個、3位多良間村289個、4位宮古島市286個と、トップ10はすべて沖縄県、しかも上位は宮古・八重山の先島諸島が独占しました。台風の主要ルートである「フィリピン東方→東シナ海」の通り道に最も近いのがこの島々なんです。
逆に全国最下位は北海道の猿払村・稚内市の21個(年平均0.3個)。1位の石垣市とは約14倍の差がつきました。日本は「年4個の街」と「3年に1個の街」が同居する、実に多様な台風列島だということがわかります。
県内格差が一番大きいのは北海道だった
そして前章の疑問「同じ県内で差はあるのか?」の答えがこちら。ほとんどの県では隣り合う市町村の差は数%以内でしたが、南北・東西に長い道県でははっきり差が出ました。
- 北海道:最多は松前町の69個、最少は稚内市の21個で約3.3倍。同じ道内でも道南は台風圏、道北は「3年に1個」の別世界です。
- 鹿児島県:最多は徳之島の伊仙町273個、最少は県北部の出水市196個で約1.4倍。奄美の島々が本土側を大きく上回ります。
- 東京都:最多は青ヶ島村の212個、最少は清瀬市の156個。島しょ部と多摩地域で約1.4倍の差でした。
つまり「同一県内はほぼ同じ」という原則は本州の標準的な広さの県ではそのとおりですが、北海道・鹿児島・東京・沖縄のような「長い」県では市町村レベルの差が現実に存在する——これが独自計算でわかった結論です。

公式の統計と定義が違うので、あくまで「参考値」として楽しんでくださいね。それでも市町村単位の比較ができるのはこの集計ならではですよ。
考察:年代別データからわかった4つのこと
① 接近数は「1960年代と2010年代」の双子のピーク
ツールの年代ボタンを順に押していくと、多くの地方で1960年代と2010年代が2つの山になっているのがわかります。たとえば沖縄は1960年代81個→1980年代67個→2010年代83個。九州南部・奄美・四国なども2010年代が75年間で最多クラスでした。「最近台風が増えた」と感じるのは気のせいではありませんが、60年前にも同じくらい多い時代があった——単純な右肩上がりではないんです。
② 1980年代は「台風の少ない時代」だった
逆にほとんどの地方で谷になっているのが1980年代。九州南部28個、九州北部24個と、2010年代の6割程度しかありません。台風の発生・接近には数十年周期の変動があり、太平洋の海面水温パターンなどの影響が指摘されています。「最近少ないから大丈夫」がいかに危険か、この谷と山の繰り返しが物語っています。
③ 2004年は全国的に「歴史的な当たり年」
年別グラフを見ると、13地方のうち9つの地方で「観測史上最多」を記録したのが2004年。沖縄15個、東海10個、四国・九州・近畿・北陸も9個と軒並み記録づくめでした。この年は全国への接近19個・上陸10個といずれも歴代1位。台風が「多い年」はどの地方にも一斉に多い、ということもデータから見えてきます。
④ 市町村で差がつくのは「接近数」ではなく「備え」
ここまで見てきたとおり、接近数は市町村単位ではほとんど差がつきません。同じ県内なら台風は「平等に」やってきます。差がつくのは、洪水・土砂災害・高潮といった地形リスクと備えの方です。自分の街の接近数(=年3個前後は必ず来る)を知ったら、次はハザードマップで「来たときに何が起きる街なのか」を確認するのがおすすめですよ。
この記事の集計方法(データの出典と手順)
この記事のランキングと数値は、すべて次の方法で集計しています。再現できるように手順を公開しますね。
- 元データの取得:気象庁「台風の接近数」ページで公表されている13地方(沖縄/奄美/九州南部/九州北部/四国/中国/近畿/東海/北陸/関東甲信/伊豆諸島・小笠原諸島/東北/北海道)それぞれの年別接近数データ(CSV)を、1951年から2025年まで75年分すべて取得しました。
- 75年合計の算出:各地方の年別接近数(年間値)を75年分単純合計しました。
- 年代別の算出:年別の値を1950年代(1951〜59年)から2020年代(2020〜25年)まで年代ごとに合計し、その年代の年数で割って「1年あたりの平均接近数」を出しました。年数が違う年代(50年代は9年、20年代は6年)も公平に比べられるようにするためです。
- 平年値:気象庁が公表している1991〜2020年の30年平均をそのまま使用しています。
- 市町村の値の求め方:気象庁の「接近」は台風の中心が気象官署等から300km以内に入ったかで判定されるため、同じ地方の中で市町村ごとに値は変わりません。そこで、市区町村(全国1,895・Geoloniaのオープンデータを利用)を選ぶと所属する地方の値を表示する方式にしました。鹿児島県の奄美地方12市町村と東京都の島しょ部9町村は、本土側と地方が異なるため市町村単位で自動的に正しい地方(奄美/伊豆・小笠原)へ振り分けています。
- 【独自集計】市町村ごとのランキング:気象庁の台風経路データ「ベストトラック」(1951〜2025年・全1,954個の台風の6時間ごとの中心位置)を取得し、台風の強度(熱帯低気圧を除く)だった期間の経路を約40km間隔で補間。全国1,916市区町村の役場の座標(オープンデータ)それぞれについて、中心が300km以内を通過した台風の数を1個ずつカウントしました。公式統計(気象官署基準)とは定義が異なる当ブログ独自の参考値です。
注意点もまとめておきます。①接近が2か月にまたがる場合があるため、月別の合計と年間値が一致しない年があります(この記事は年間値を採用)。②2025年など近年の値には速報値が含まれ、後日変更される場合があります。③地方の区分は気象庁が天気予報等で用いる「地域名」に従っています(山口県は九州北部地方に含む、など)。
よくある質問
Q. 市町村別の台風接近数はどこで見られますか?
気象庁は市町村別の接近数を公表していません。接近は気象官署等から300km以内という広い範囲で判定されるため、同一都道府県内ではほぼ同じ値になります。この記事のツールで都道府県・市町村を選べば所属地方の値がわかるほか、台風経路データから独自計算した市町村ごとのランキング(参考値・全1,916市区町村)も本文中に掲載しています。
Q. 台風の接近数が日本一多い地域は?
沖縄地方です。75年間(1951〜2025年)の合計で553個、年平均7.4個(平年値7.7個)と全国最多。2位は東京都の島しょ部にあたる伊豆・小笠原の401個です。
Q. 「接近」と「上陸」はどう違いますか?
接近は台風の中心が気象官署等から300km以内に入った場合、上陸は中心が北海道・本州・四国・九州の海岸線に達した場合です。上陸数のランキングは別記事で47都道府県・市町村別に集計しています。
Q. 台風の接近が最も多かった年は?
全国では2004年・1966年・1960年の19個が最多です。2004年は13地方中9地方で観測史上最多を記録しました。
台風の「上陸数」ランキングは別記事で
この記事は「接近数(何個来るか)」の集計でした。台風がどこに上陸するのか——鹿児島県45回・室戸市10回など、47都道府県と上陸地点(市町村)別の上陸数ランキングは、偏差値つきで別記事にまとめています。
👉 【偏差値つき】台風の上陸数が多い都道府県・市町村ランキング|気象庁75年データで独自集計
まとめ:あなたの街にも台風は「毎年」来る
今回の内容についてまとめました。
- 市町村別の接近数は公式データが存在しない。300km判定のため同一県内はほぼ同値で、所属地方の値がそのまま目安になる
- 75年合計1位は沖縄の553個(年平均7.4個)。2位は意外にも東京都の島しょ部・伊豆・小笠原の401個
- 「毎年必ず台風が来る」地方は沖縄・九州南部・伊豆・小笠原・中国の4つ。瀬戸内側の中国地方が入るのは意外な発見
- 接近数は1960年代と2010年代の双子のピークがあり、単純な増加傾向ではない。ただし1980年代のような「少ない時代」を基準に安心するのは危険
- 市町村で差がつくのは接近数ではなく地形リスクと備え。ハザードマップの確認とセットでどうぞ
出典・参考資料
統計期間:1951年〜2025年の75年間。年代別の数値は気象庁の年別データから当ブログが独自集計したものです(接近は2か月にまたがる場合があるため、月別合計と年間値が一致しない年があります)。


